松下電器産業(株)
パナソニックマーケティング本部副本部長

平原 重信
Shigenobu Hirahara

高画質とネットワークで
新しい時代のAVワールドをリード

パナソニック「ビエラ」の最高峰、PZ600シリーズが「ビジュアルグランプリ2007特別金賞」に輝いた。市場を押し上げるフルHD化の流れは言うまでもなく、さらに、徹底したユニバーサル思想を形にした「ビエラリンク」で、使い勝手の面からも新たな提案を行い、高い評価を獲得する。ますますスピードを加速するデジタルAVの世界で、新しい時代をリードするパナソニック。マーケティング本部・平原重信副本部長に話を聞く。

―― ビエラPZ600シリーズが、ビジュアルグランプリ2007の特別金賞を受賞しました。おめでとうございます。

平原 ビエラPZ600シリーズがシリーズ全体で特別金賞を受賞できたことを大変光栄に思っています。12月1日からいよいよ地上デジタル放送のサービスエリアが全国に広がります。テレビを買い替えるのなら大画面にしようという流れの中で、地上デジタル放送の普及が50V型以上の大画面化を加速させています。ビエラの65V型も、当初のわれわれの予測をはるかに上回る台数を出荷しています。

大画面になれば、プラズマには多くのメリットがありますが、今回、特別金賞を受賞したPZ600シリーズは、50V型から103V型まで、フルハイビジョンパネルを搭載した「最高級のビエラ」として投入したものです。

―― PZ600シリーズでは103V型という巨大な画面サイズを実現したTH―103PZ600も注目を集めています。

平原 103V型のTH―103PZ600は非常に大きな話題を呼んでいます。家電製品では商品が展示されてニュースになるということはほとんどないのですが、各地の販売店さんでこの103V型が展示されると、地元の新聞社やテレビ局が取材にきてニュースになっているほどです。

大画面のラインナップが充実すればするほど、37V型や42V型が相対的に手頃なサイズに見えてきます。市場でのボリュームゾーンは37V型・42V型ですが、以前は憧れのサイズだった50V型がわれわれの予想以上に売れています。58V型や65V型、103V型といったさらに大きな画面サイズのモデルが出てきたおかげだと思います。

21世紀当初、36インチ以上の商品はほとんど市場にありませんでした。ところが最近では37V型以上の構成比が40%を超え、大画面という新しい市場が一気に出来あがってきました。

―― 今回のビジュアルグランプリでは特別金賞に輝いたPZ600シリーズ以外にも、BDレコーダーのDMR―BW200、ハイビジョンSDムービーのHDC―SD1、フルHD液晶プロジェクターのTH―AE1000など、数多くのパナソニック製品が三賞に選ばれました。

平原 当社が目指す戦略のまさに肝となる商品がすべて賞をいただきました。その方向性に間違いがなかったことを確認できたという意味からも、今回の受賞ほどうれしいものはありません。

―― 受賞商品に共通するキーワードのひとつは、いずれもスーパークオリティであることです。

平原 高画質を楽しみたいという、これからの時代の流れを象徴しているように思います。市場ではハイビジョンの波がどんどんやってきています。2ヵ月前に発表させていただいたブルーレイディスク(BD)レコーダーにも、大変大きな反響をいただき、発売と同時に鋭い立ち上がりを見せています。

ハイビジョンという括りでみれば、市場は驚異的なスピードで成長しています。プラズマは年々、倍々で伸びてきていますし、その勢いを背景に、これからBDが本格的にスタートします。概念がどんどん変わってきていて、今までになかったものがどんどん出てきています。

―― 成長が続くデジタルAV市場ですが、課題は何でしょうか。また、それに対して御社ではどのように対応されていきますか。

平原 薄型テレビの単価ダウンが非常に速いスピードで進んでいます。これに対する当社の市場の盛り上げ策は、大画面とリンクの2つです。

まず大画面化については、32V型をお買い求めになるお客様には37V型や42V型を、37V型のお客様には50V型をというように、より大きなサイズをお薦めすることで、単価を上げることができます。

当社では今年の春「ビエラリンク」を導入しました。このビエラリンクの最大の特長は、テレビを中心としたデジタルAV機器を非常に簡単に操作できるということにあります。このビエラリンクが、「ビジュアルグランプリ2007開発賞」をいただきましたが、流通の皆様方からも大変高い評価をいただいています。

現在、日本では5人に1人が65歳以上の高齢者です。2010年を過ぎると、これが4人に1人になると予測されています。その人たちにとって、操作性の良さは非常に大切なポイントです。

ビエラリンクのもうひとつの大きな特長は画質です。地上デジタル放送でハイビジョンの高画質を見ていると、レコーダーでその番組を録画したり、また、自らハイビジョンの美しい映像で撮影したりしたくなります。

ビエラリンクは、BDレコーダーやハイビジョンムービーから、ハイビジョン信号のままでビエラに送り出すことができます。ビエラリンクによって、ビエラを中心に、誰にでも簡単に、しかもハイビジョンの高画質のまま楽しんでいただくことが可能になるのです。

―― ビエラリンクはサウンドシステムとの連携も大きなセールスポイントのひとつですし、先日発表されたSDハイビジョンムービー「HDC―SD1」もビエラリンクに対応しています。

平原 ビエラリンクを使えば、HDC―SD1で撮った映像を極めて簡単に再生することができます。HDMIケーブルでビエラに繋ぎ、ムービーの電源をオンにすると、ビエラの電源も自動的にオンになり、入力もムービーに切り替わります。そして再生ボタンを押す。僅か3つのステップだけで、すぐ再生が楽しめます。

―― リンクという点からは、SDカードに対応していることも大きな訴求ポイントになりますね。

平原 HDC―SD1で録画されたSDカードをBDレコーダーのSDスロットに入れるだけで、SDカードからBDディスクに素早くダビングすることができます。さらに、BDレコーダーとビエラをビエラリンクで繋ぐことで、簡単な操作でハイビジョンのままの高画質を簡単に楽しむことができます。

SDカードとビエラリンクを組み合わせることによって、新しいハイビジョンライフを誰でも簡単に楽しめるようになりました。

―― 御社の特長でもあるユニバーサルデザイン思想をさらに推し進められていますが、そのためにはどのような手法を採用されているのでしょうか。

平原 当社ではお客様からのお問い合わせや質問に対応するためのコールセンターがあり、そことの連携を、従来よりもさらに緊密にしています。コールセンターに電話をしてこられるお客様は、皆さん困っていらっしゃいます。ですから、それを何とか解決していこうということに、今まで以上に積極的に取り組んでいます。

大坪社長が常々口にしている「モノ作り立社」とは、ただ単に製造することだけを指したものではありません。設計段階から製造段階、さらにマーケティングに至るまで、すべての段階において、お客様の声をしっかり受け止め、モノ作りに反映させていこうということです。そのためには、自分の部門だけではなく、周りの部門や生産現場、営業部門、お客様との窓口など、様々な部門との連携を緊密にしていかなければできません。

―― 組織そのものにリンクを張ることで、製品間の緊密な連携を実現されたということですね。

平原 その象徴がリモコンです。昔は商品企画会議で、リモコンひとつで喧々諤々の議論をするようなことはありませんでした。ところが最近は、ああでもない、こうでもないと激しく議論しています。

家庭内ではテレビが核になって様々な機器がリンクしてきています。それらを誰にでも簡単に使っていただくためには、それぞれの商品を企画している部門だけでなく、他の部門との、企画もリンクさせていかなければいけません。その象徴が、リモコンなのです。

―― リンクを広げることにより、ビジネスチャンスはどんどん拡大していきます。

平原 私はセールスミーティングの中で、車の販売店さんの話をよくします。当社の社員がカーナビを買いに行った時に、「お客さん、タイヤが古くなっていますね。もう溝がありません」と言われたそうです。そうすると、「この際だから、タイヤも替えておこうか」という気持ちになります。さらに「オイルも少ないけどどうしますか」と言われれば、ついでにオイルもとなる。このように、商売というのは、どんどん拡げていけるのです。

―― そういう考え方をわれわれの業界の中にも、もっと広げていかなければなりませんね。

平原 テレビの前や後には、スロットや端子などたくさんの穴があいています。それらの穴は埋められるためにあります。穴を埋めるということは、そこに商品が繋がるということ。つまり、テレビを販売するというのはスタートであり、穴の数だけ次の商売があります。

これからは、単にテレビだけという販売スタイルでは通用しなくなります。テレビを中心としていろいろなものが繋がってきます。簡単な操作で楽しみが増えてくる、画質も良くなるという世界を作っていきたいと思っています。リンクという概念を軸にどんどん商売を広げていただければ、お客様には喜んでいただけますし、ご販売店さんには儲けていただけます。そして、われわれメーカーもハッピーになります。

当社はテレビやDVDレコーダーだけでなく、BDレコーダーやムービー、デジタルカメラなど非常に幅広い分野の商品を事業化していますので、新しいAVワールドを創りだしていくことができる会社だと思っています。

―― 最後に年末商戦を含めた今後の展望をお聞かせください。

平原 われわれの業界は大変面白くなってきました。テレビが薄型になり、大型化してきました。また、VHSはDVDに一気にシフトしてきました。今までなかったような新しいものがどんどん出てきて、その市場が一気にできあがってきました。さらに、そこにハイビジョンやリンクという概念が新たに加わってきました。

テレビは家電の中で外すことができない商品です。そのテレビを核に新しい動きがどんどん進んでいます。大画面化にとってプラズマは絶好の製品です。当社ではそのプラズマテレビを中心に、ブルーレイ、ムービーなど、他社に一歩先んじた商品展開をどんどん進めています。ハイビジョンムービーが加わり、ビエラリンクもさらに進化しました。

世の中はますます上質のものを指向する傾向にあります。AVの世界でもハイビジョンシフトに加速がかかっています。こうした環境の中で、当社には非常に幅広い陣容の商品を持っているという強みがあります。これをもっともっと活かして、大画面ハイビジョンビエラとともに、高画質の映像を楽しんでいただくためのハイビジョン機器を続々と投入して参ります。パナソニックならではのハイビジョンネットワークの展開で新たな時代のAVライフをリードしていきます。ぜひ、ご期待ください。