(株)日立製作所
ユビキタスプラットフォームグループマーケティング事業部
AV営業本部 本部長

橋 憲二
Kenji Takahashi

テレビがもっと楽しくなる提案で
忘れかけていた感動を呼び戻す

薄型大画面テレビに怩gDD内蔵揩ニいうひとつのカテゴリーを定着させた日立のWooo。業界初のHDD+DVDビデオカメラの発売、DVDレコーダーにおけるデザイン革命など、その背景からは、お客様の目線に立った同社の一貫した商品ポリシーが見えてくる。さらに多様化する価値観やライフスタイルに、どのような提案が投げかけられるのか。AV営業本部長・橋憲二氏に話を聞く。

―― 50V型のW50P―HR10000、42V型のW42P―HR9000が金賞受賞となりました。おめでとうございます。デジタルAV商品はサイクルの早い分野ですが、W42P―HR9000は2006SUMMERに続いての金賞受賞となりました。

 9000シリーズのスタートにあたり、かつてないデビュー戦略を展開し、「Woooで録画」という特長を前面に打ち出しました。結果、HDD内蔵という使い勝手の面で大変満足をいただくと同時に、改めて、「簡単」というキーワードの重要性を再認識しました。HDD内蔵テレビを、ひとつのカテゴリーとして確立できたと思います。

―― テレビの新しい使い方を日立が開拓されたわけですね。

 そう言っていただけるとうれしいですね。最初はいろいろありました。特に、テレビデオを例に出されて、HDDが壊れたらテレビもダメになってしまうといった話が、店頭でされていることも耳に入ってきました。しかしそれ以上に、簡単にタイムシフトして番組を見たいという要望がお客様の間に大変強かったということです。

次は追われる立場として、さらに気を引き締め、営業最前線の声を商品として結実させていきたいと思います。

―― 店頭では、単価ダウンが進む中で、単価を引き上げる説得力ある付加価値としてもご評価されています。しかし、営業という立場からすると、同じサイズで他社よりも高い価格のテレビを売らなければならないご苦労もあったのではないですか。

 おっしゃる通りで、250GBのレコーダーを単体で購入したら7万円から8万円はします。そのプラス分をお客様が本当にご負担していただけるのか。営業の中でも議論がありました。「3万円くらいならどうにか」という予測に対し、今度は開発側から「5万円は譲れない」と、せめぎあいもありました。幸運だったのは、価値あるものには対価を払うという市場環境が生まれていたことです。

―― 現在、HDD搭載と非搭載の割合はどれくらいですか。

 搭載が8、非搭載が2で、圧倒的にHDD搭載型が多いですね。うれしい誤算でもありましたが、反対に、売る側でHDD搭載はWoooで、非搭載は他メーカーという売り分けが反作用としてかなりはっきり出てしまいました。性能的には何ら負けていないにもかかわらず、そこで差をつけられてしまうジレンマもありましたね。

―― それだけ、HDD内蔵型のWoooというイメージ付けが強烈だったということもできますね。

 宣伝の黒木瞳さんのCMも含めて、デビュー戦略から、強烈なメッセージは出せたと思います。

―― ハイビジョン時代に相応しい高密度の画素でつくれるALISの特長も奏功していますね。

 HDDばっかりが目立ってしまったものですから、途中からPOPを変えたり、訴求の仕方を工夫して、垂直1080画素も大きく取り上げるようにしました。

垂直方向に放送される電波を間引きすることなく表現できる優れた再現性はALISのスタート時からの独自技術で、垂直1080画素は他社も追随できない特長です。規格では650本以上をハイビジョンとしていますが、その違いは、木目の細かさなど、見ていただければ納得いただけると思います。

―― 最近のマーケットの状況はどのように見ていますか。

 堅調に推移する中で、2011年のアナログ停波に向け、もっと加速していくのではないでしょうか。特に今年はご存じの通り地上デジタル放送の全国スタートということで、九州や中国・四国地区が盛り上がりを見せています。それぞれのエリアでもカバー率が拡がってきていますから、この年末は大いに期待できますね。

08年の北京五輪をひとつのターニングポイントとして、商品のバリエーションの多様化や新しい切り口からの提案商品を各社用意しているでしょう。当社も目下、商品開発にさらに力を入れているところです。

―― 日立Woooでは、プラズマのみならず、液晶テレビのW37L―HR9000が銀賞に輝きました。

 「プラズマ=Wooo」という印象は、お客様以上に販売店でかなり強いですね。IPSαパネルは、現行の液晶パネルの中では一番キレイなものであるということは認めていただいておりますので、今後、それを店頭で見ていただける機会を増やしていきたい。什器を含め、現在売り場づくりの提案を行っているところです。

―― プラズマと液晶の両方のデバイスを自社の中に持っていらっしゃる。これは、これからのテレビ事業において大きなメリットとなりますね。

 パネルもそうですが、HDD、DVDドライブ、エンジンもすべて日立グループによるものです。そこを強みとして、さらに、どのようにして市場にアピールしていけるかが課題ですね。

―― 強くなったテレビのWoooを軸に、レコーダーやビデオカメラも強力になってきました。特に、DVDビデオカメラは御社が開拓されてきましたが、ここに来て完全に花開きましたね。

 一気に花開いたという感じですね。「商品化するには早過ぎる」「録画時間が短い」など様々な批判を浴びながら、5年間、改良を加えてきた結果、こうして花を開かせることができ、大変うれしく思います。

銀賞をいただいたハイブリッドカムWooo DZ―HS303は、問題解決型の商品と言えます。大半の方が、HDDにするか、DVDにするか迷われているときに、「長時間録れるHDDと、アーカイブできるDVD、両方ついていたら迷わずに済むのに」という声に答えたものです。この単純明快さが、発売以来、現在も大ヒットを続けている要因だと思います。

HDD内蔵テレビの場合もそうですが、接続の煩わしさもなくワンボタンで録画やダビングができる簡単さは、非常に大切なんですね。かんたん=シンプル=安いというかつての図式は崩れ、いまではそれを付加価値として対価をいただけるようになりました。現在、怺ネ単揩セールスポイントとしてアピールをしていないメーカーはありませんが、これからはもっとシビアに、かんたんの中身が問われてくると思います。

―― Woooを展開されて以来、商品の提案のされ方が、お客様の使い勝手や要望をものすごく重視しているように思われます。

 かつては、マーケットから遠いメーカーだと言われたころもありました。現在は、とにかくお客様の目線に立って、マーケティング調査もきめ細かに行っていますし、お店に商品を紹介するラウンダーや店頭応援者とも、コンタクトをとる機会が増えてきています。いい方向にあると思いますね。

彼らとしても、自分たちも開発に関わった商品だということで、頑張って売ろうという意識が強くなります。コンシューマー商品という域にとどまらず、日立トータルに対する影響も与えていて、広義の意味でのブランドのイメージアップに寄与できると自負しています。

―― DVDレコーダーではデザインが大変に高い評価を獲得しました。

 薄型テレビの登場で、オープンラックが増えてきています。周辺機器も人目に触れるようになり、こういうスタイルもこれからは評価いただけると自信を持って商品化しました。従来のように前面からだけでなく、上から見下ろしても、インジゲーター類が見やすく操作もしやすいといった工夫も凝らされています。

―― これからのデジタルAVの提案には何が必要でしょう。

 私が子供のころにあった、テレビが我が家にやって来るワクワクする感動が、ブラウン管ではなくなっていました。「ちょっと高いけれど頑張って買おう」というお客様の意思が、新しいマーケットを開いていきます。分厚いブラウン管が薄型大画面に代わり、今また同じようにワクワクする時代になってきました。何か訴えるものがないとやはりだめなんですね。

面白い話があります。初期にプラズマを購入されたお客様が、手に入れた喜びを一番感じるのは、テレビを見ていないときだったそうです。ついに買ったんだよなと、番組の映っていないテレビを見てしみじみ感慨がこみ上げてきたそうなんです。リビングルームを変える、生活を変える提案が、できているのではないかと思います。

子供部屋でテレビを見ていた子が、リビングルームで家族でテレビを見るようになったとか、親戚が頻繁に訪ねてくるようになったとか、そうした家庭の輪にも貢献できている。少なくとも冷蔵庫や洗濯機には、そうした団欒という要素はありません。テレビは一味違う家電製品だと思いますね。

―― Woooで、薄型テレビにおけるシェアと存在感をしっかりとられてきた。一方、単価ダウンという課題に対しては、どのような考えや方策をお持ちですか。

 商品の価値に対し、対価をいただける購買層もどんどん出てきています。HDD内蔵というのも、まさにそのひとつです。安くなったとぼやいているわけにはいきません。次に何を提案するのか、それは、各メーカーさんの腕の見せ所ですね。

今、薄型テレビをお買いになっている方は、必ずしも壊れたから買い替えられているわけではない。そこには、薄型テレビに対する期待感が強く働いています。生活のステージがあげられる、もっと楽しくなる、という部分がポイントになると思います。もっとテレビを楽しみましょうという訴えかけに、さらに力を入れていきたいですね。

―― 薄型大画面の臨場感という面からは、音周りもひとつの大きなテーマになってくると思います。この部分についての今後の展開はどのようにお考えですか。

 映像と音は一対ですから、スピーカー、音に対するアプローチは強力に行っています。同時に、スタイリングも重要になる。これからの時代は、いい音だからスピーカーは大きくていいということは通用しません。そこは、設計面における課題として認識しています。

―― それでは最後に、市場でのWoooに対する期待が高まる中で、販売店へのメッセージをお願いします。

 これから薄型テレビはますます普及して参ります。さらに、テレビを基点とした周辺商品の存在もますます重要になり、そこでの工夫が、テレビを中心とした世界で差を付けることにつながっていきます。多様化するお客様のライフスタイルに合わせて、今後も、プラズマをはじめとする、魅力あるWoooワールドのラインナップを、スピードアップして充実させて参りますので、ぜひ、ご協力、お力添えをよろしくお願い致します。