巻頭言

プロパガンダ/和田光征

和田光征
WADA KOHSEI


3つの提言「ピュアオーディオルネッサンス宣言」「スーパークオリティ宣言」「2WAYシアター宣言」への反響が大きく、力強く業界人の中へひろがっている。喜ばしいことである。

私はこの仕事をはじめて40年になろうとしているが、若い頃から市場創造のための提言、宣言を誌面から訴えてきた。最初の大きな提言は「シェル付カートリッジ宣言」であった。また1971年にはカセットオーディオの市場創造を訴えた「テープ元年」を宣言し、ハード、メディアメーカーによるシンポジウムを定例化した。ディーラーズシステムコンポを提案し、そのことがシスコン市場の形成へと発展した。さらに1980年には「四つの提言」を展開し、ミニコンポ誕生へ寄与、そしてハイコンポを生み出し…という具合である。提言、宣言を重ねてきたのは、小社のポリシー「建設的な業界の発展に寄与する」を入社以来最高の思想と思い実践してきたからである。

真骨頂は、“業界”の中にユーザーを取り込んだことである。業界といえばメーカー、流通が常識だった。そんな風潮に私は異を唱え、「三位一体論」を主張し「まずユーザーありき」を訴え、“業界”をユーザー、メーカー、ディーラーと認識して実践した。

私にとって、何はともあれ「ユーザーありき」がベースなのである。従って、メーカーもディーラーもユーザーに信託されて存在していると考えていたし、そのことは永遠に不変であり真理であると思っている。だから業界がユーザーを無視しておごったり、不遜になったり、儲けにばかり走ったり、覇権主義に陥ったりすることに対して批判精神が頭をもたげてくるのである。

業界はいつも市場創造し、生き生きしていなければならない。未来から今日を見るという先見性を力強く有していなければならない。それこそがユーザーから信頼を得ることにつながり、異業種からも羨まれる存在になるということである。

こうした提言、宣言も、それを流布するメディアを有していなければ“力”にならない。私どもが発行するコンシューマー向け専門誌は、市場創造のプロパガンダとしてそれぞれが重要な役割を果たし、現在も堅調に推移している。

「季刊オーディオアクセサリー」誌はピュアオーディオ一筋で、ただただその楽しさ、素晴らしさを訴えてきた。本誌を愛読されるマニアが多いのも当然である。「アナログ」誌で驚くことは、富裕層の読者が素晴らしく多いことである。中央、地方の名士が多く名を連ねるごとに部数が伸びており、サントリー、コシナはじめ異業種からのコラボも盛んである。団塊世代は着実に「季刊オーディオアクセサリー」誌、「アナログ」誌に帰ってきているのである。

新たな市場を創造する存在として認知されていることは、喜ばしいことである。「AVレビュー」誌、「ホームシアターファイル」誌、ポータルサイト「ファイル・ウェブ」ともども業界発展に寄与し、新しい市場を徹底して創造していきたいと思っている。中でも「ファイル・ウェブ」は、9月で月間1億4000万ヒット、1000万PVのステージへ昇華したことは提言、宣言の認知度をさらに高める材料となる。ご期待頂ければ幸いである。


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