巻頭言

大西さん

和田光征
WADA KOHSEI

1980年頃、シスコンを中核としたオーディオが需要一巡から厳しい状況におかれ俄かに不況感が漂ってきた。「業界の建設的発展」をポリシーとする私は胸を痛めていたが、各メーカートップも同様にニューマーケットの創造を模索していた。
私はあることに気がついた。いわゆるシスコン市場を強力に押し上げていた団塊世代が購買ゾーンである16〜24才から卒業していて、そのことが市場低迷の最大理由であることに…。このままいけばピーク時に2000万人いた購買ゾーン人口が数年後最低時で1600万人まで減少するのである。まさに重大時である。
このことを打開するためには全く新しい市場を創造する以外にない。団塊世代に続く新人類と呼ばれる層をいかに取り込むかが最大のポイントであった。私が業界に提言した「4つの提言」はそれ故にセンセーショナルであった。つまり、新しい市場を創造するためのコアとなる思想が根底に流されていたのである。
@ニューマニア宣言 Aオーディオ着こなし論 Bデザイン革命 Cビジュアル三原則(クリエイト、リピート、ライブラリー)
新人類達をニューマニアとくくることによって、ターゲットユーザーを明確化し、彼らが求めるものは何なのかを追求した。当時、パイオニアさんのパソコンを使用させていただいての16〜24才に対する7000名のアンケート調査は、この層が求めるものを浮き彫りにした。
90%以上が6畳間であり、持ち物調査で50%を超えたものを6畳間の平面図に描き込んでみた。ベッド、机、カラーボックス、本棚、テレビで満杯でオーディオを置くスペースがない。彼らにとって音楽を楽しむことは3度の食事ほどのウエイトがあったが、図体の大きいシスコンは敬遠されていたのである。
つまりいい音で、省スペースでハイデザインの素敵なオーディオシステムを求めていたのである。私は「4つの提言」を本誌で訴え、新しいシステムステレオの重要性、テープオーディオの活性化、AV時代の予感を訴え続けたのである。そして、このことを現実のものにするためにはビッグメーカーを結集し、そこから発信することの重要性を思い、パイオニアの吉田専務、ソニーの白倉常務、松下の大西統括営業部長にお集まりいただいて議論し、それは本誌に座談会として収録され、大変な話題となった。
そして誕生したのがミニコンポであり、ウォークマンであり、テープオーディオ全盛時代である。当然、コアメーカーの市場創造は強烈であり、セカンドメーカーはじめ全てのメーカーがニューマーケットへ全力投球し、CD時代と相まってミニコンポは巨大な市場へと育っていったのである。
大西宏さんから「松下とホンダ勝利のDNA」(実業之日本社刊)の著書が贈られてきた。3社で議論した時の大西さんである。大西さんは本誌を今日もご愛読いただいており、私にとって限りなく嬉しい贈り物であった。すでに好評で重版とのこと、ぜひご一読をお薦めいたします。

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