巻頭言

記憶にとどめおくこと

和田光征
WADA KOHSEI

2004年12月26日、スマトラ沖地震により津波が発生しました。2004年は大変化の年と年初に言い続けていた私にとって、あまりにも恐怖の年納めでした。犠牲者が何名に、というニュースが流れる度に、その何倍の数字になるのだろうと、なんともやり切れない思いでいっぱいでした。
事実、2005年1月中旬にさしかかり、国連人道問題調整事務所は同地震による死者と行方不明者の数が18万人を超えたことを明らかにしました。それも地上の楽園として愛され、北欧の人たちを中心にヨーロッパの人たちにとって人気の避寒地であり、故に旅行者の犠牲者が多い結果となりました。
マグニチュード9・0、最大高さ40メートルの巨大津波は海抜わずかの真珠の如き美しい島々にとってひとたまりもありません。地震や津波という情報が全くない無防備な島々や地域にとって全く何が起こったのかわからない程の出来事であったと思います。
私は地学に興味があると以前話したことがありますが、なぜスマトラなのだろうかと地図を凝視しました。マントルの対流による海溝はスンダ海溝としてありますが、その深さは太平洋プレートから見ると小規模です。しかし、大スンダ列島のスマトラの北限で巨大地震は発生しました。そのことが原因で巨大津波となったのです。
日本海溝のエネルギーの蓄積そして放出は70年から100年と言われ、それは歴史で証明されていますが、今回の地震はもっと長い時間を要してのエネルギーの蓄積によるものと想定できそうです。
津波にまつわる民話なども島々の中に残されている筈ですが報道されるニュースを見る限りにおいてほとんどありません。祖先によって津波の恐怖について語り継がれたものがないということは、人間の記憶にない程、遠い昔にも経験し得なかったことだったのではないでしょうか。故に犠牲者が多くなったように思います。
私は地図を見ながら不思議に思います。専門的に見れば不思議なことではなく当たり前のことでしょうが…。例えば、チリ地震が巨大津波となってなぜ日本の三陸地方を襲ったのか。到達する途中にハワイ諸島があるのに被害はほとんど出ておらず、それよりも西北25度方向へ津波はハイスピードで向かっています。それが不思議でした。対流するマントルのエネルギーを放出する幼年期の火山島として有名なハワイ諸島の並び方にも関心があります。西北25度方向へ流れるように並んでいます。そのことはまさに地球の傾き、そしてマントルの流れと関係しているのです。同時にマントルが沈み込む海溝はどうしても地球の自転によって西側へのエネルギーの方が大きいのではないか。チリ、そしてアメリカ、その落ち込みの大きさがアンデス山脈、ロッキー山脈を造り出していて、エネルギーの蓄積は日本海溝やマリアナ海溝よりも巨大ではないのか、そんなことを思いながらスマトラ沖地震による津波がスリランカやインドに大きな被害をもたらしていることの共通点を見てしまったのでした。
偏西風の蛇行によって世界的に異常気象が続いています。2005年2月以降、落ち着いて欲しいと、今、祈念してやみません。

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