巻頭言


ユーザーの育成  WADA KOHSEI


「A&Vフェスタ2004」が横浜のみなとみらいで今年も9月22日から25日まで開催される。会場へのみなとみらい線の乗り入れで便利になり、恵まれた状況から期待も高まっている。今年は待望の入場料が無料化されたこともあり、入場者の層も拡がりをみせるのではないだろうか。大いに楽しみである。
私はこの欄で入場料の無料化を訴えてきた。前身のオーディオフェアははじめから入場無料だったし、そうした中で全盛を極めたのだが入場料をとるようになった。その理由のひとつに「子供達がうるさい」といった不遜のものがあって、子供達まで入場料の網をかぶせてしまった。その頃の子供達は今、30代でオーディオビジュアルの中心層を形成している。
入場料+食事代+交通費で当時の私の調査でも相当の負担だったようだ。オーディオフェアに行きたくても行けない状況を業界が創り出し、極論すればフェア無用論へと発展していったと思う。そして協会はいつしかボーダレス時代にも関わらずムラ社会へと変質し、完全なる閉塞状態へ陥り、催しそのものが2002年に中止となった。その後2003年に「A&Vフェスタ」として再スタートし、成功裡に終った訳である。
さて、無料化について考えたい。一部に財政面や収益面で不利になったという全く見識の無い見方もあるようだが、「インターナショナルオーディオショウ」「ハイエンドショー東京」「真空管オーディオフェア」はじめ身近な催しも全て無料で成功している。
さらに入場料収入の800万円余りを経費部分との相殺で見れば収入は殆ど無いのではないか。デザイン、印刷、発送、入場料徴収あるいはチェックのためのゲート、アルバイト及び警備諸々の人件費、入場料を取るが故に発生するコストを考えれば、逆にコストが浮くことになる。収入だけで判断するマネジメントなど存在しないし、ここ数年の経営環境からみてもあり得ないことである。
入場料の真の無料化とは何なのか。
私達はその意味についてしっかりと把握し、10年たっても普遍のコンセプトにしなければならない。
東京モーターショウにも今年以降、高校生以下の入場料を無料にするとの発表が日本自動車工業会会長からあった。その最大の理由は少子化への対応と「ユーザーの育成」であると述べている。
それに比べ「A&Vフェスタ」がなぜ全て無料なのかといぶかる関係者もいるかも知れないが、次元が全く違う。協会主催はいったん中止しなければならないところまでいったのであり、企業で言えば倒産したのと同様なのである。今、大切なのは多くの人達を会場に集めること。集まった人達にA&Vをしっかり見て、聞いて、触れていただくことである。何よりもわが業界をしっかり認識してもらう形でユーザーを育成していくことが第一義であり、入場料無料化の意義である。
ユーザーあっての業界である。子供達には大いなる夢を、大人達には夢と安らぎと郷愁を、そんな世代を超えた人達が参集して盛り上がることこそ重要である。
そういった意味で「ユーザーの育成」をコンセプトにして全力投球しなければならないし、絶えず10年のスパンで計画し実践しなければならない。
入場料無料を生かすも殺すもその運用にかかっていることを断言したい。

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