巻頭言


ウッちゃんとソウちゃん  WADA KOHSEI


ウッちゃんとソウちゃんについて書きます。やさしいウッちゃんはマイナス思考で何でも悪い方に、うまくいかない方に考えて、時々めそめそとしています。強いソウちゃんは逆にプラス思考で積極的で明るく、時にノー天気なところもあったりします。
例えばグラスの中にジュースが3分の1あるとします。ウッちゃんは3分の1しかないと言って嘆くのですが、ソウちゃんは「まだ3分の1もあるぞ」と言って喜々としています。
ウッちゃんとソウちゃんの二人旅、いったい何が起こるのでしょうか。読者の皆さんもぜひ物語を作ってみて下さい。
このあたりで種明かしをしますと、ウッちゃんの出生地は鬱の世界で、ソウちゃんの出生地は躁の世界です。暗と明、陰と陽、消極と積極、マイナスとプラス…。
人々はあの人は暗い人だとか、明るい人だとか言ったりします。或いはそんな評価をしたり判定をしたりして、いつしか分類してしまって、日常を何気なく流していってしまいます。そんな時、殆どの人は自分をソウちゃんだと思っています。
そして自分のことを「あいつはウッちゃんだ」と思われていることには全く無頓着です。
人生、生きていく上で、これはこれで大切ですし、神様はそういう風に人間を創ってあるのでしょう?
私がウッちゃんとソウちゃんの存在を具体的に発見したのは14年前でした。その時は入院していました。病院の深夜は不思議なところで、自分の病の正体がどっちへ行くのか定かでない時は、この世にいたり、あの世へ行ったり、そんなことばかり考えてしまうのです。なぜそう考えてしまうんだろう。私はそんなことを考察していく中で、ウッちゃんとソウちゃんを発見したのでした。
ウッちゃんがどんどん悲観の闇の渦へと、それもシクシク泣いたり、重く暗い表情を浮かべ、急降下していきます。ソウちゃんはそんなウッちゃんを笑顔で、それも「あいつはしょうがないな」と明るい顔をしながら見ています。そして「ハイッそこまで」と言って、ソウちゃんの背中を掴んで、引き上げます。「ハイッそこまで」の達観ソウちゃんがいないと終わりです。
私の発見は私にとって重大なことでした。すべての人間の中にウッちゃんとソウちゃんがいるという認識、最後はソウちゃんがウッちゃんを抱擁しながら導いていくことが何よりも大切であるし恚ュい揩ニいうことなのだと分かったのでした。
心の中にウツとソウと二つあるのであって、ウツだけがあるのでもなく、ソウのみがあるのではなく、それは一体であり、相対であるのです。その心のコントロールができるか、できないか、そのことによって人生はとんでもなく変わっていきます。
私は末期癌の人々との会話で「ウッちゃんとソウちゃん物語」をしました。結局はあの世へと旅立って行かれましたが、ソウちゃんがウッちゃんをやさしく包み込みながらの旅立ちであるならば、それは素晴しいことであり、幸せなことだと思います。
あなたの中にいるウッちゃんとソウちゃん、今から見つめ、語り合って下さい。
心が大きく広がっていきます。

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