編集長インタビュー

日本ビクター(株)
AV&マルチメディアカンパニー
国内営業本部長

石田卓雄 氏
Takuo Ishida

 

営業体制を変革し
オンリーワン商品で
シェア10%を目指す



独自の高画質技術DETや高音質のDDスピーカー、ウッドコーンスピーカーが市場で高い評価を獲得するビクター。付加価値提案がクローズアップされる中、他社との差別化を図る、これらオンリーワン技術を搭載した商品は、さらに注目される存在だ。アテネオリンピックという追い風も重なり、AV市場の大いなる飛躍が期待される2004年、ビクターの営業戦略を、1月1日に営業本部長に就任した石田卓雄氏に聞く。

インタビュー ● 新保欣二

就任の挨拶周りの中で
ビクターへの期待を再認識

――営業本部長に就任されて2ヵ月が過ぎました。振り返られていかがでしょうか。

石田 昨年末に前任の斉藤本部長が突然亡くなりました後を受けて、今年の1月1日から本部長に任命されました。事業部や本社を経験した後に、営業副本部長を経て営業本部長になるのが通常のパターンですが、今回は第一線の営業からいきなり本部長をやれということになりました。大変なことになったと思っていますが、引き受けた以上はしっかりやっていきたいと思います。 1月、2月は全国の法人さんに挨拶回りをさせていただきました。その時に多くの法人さんから、以前のビクターは世の中に先駆けた新しい商品提案や、互換性を大切にした商品作りで非常に売りやすい商品をいっぱい提案してくれた。ビクターらしい商品をどんどん提案してもらえれば、もっと真剣に売るよという話を聞かされて、ビクターに対する流通さんからの期待を改めて認識しました。

――間もなく2003年度が終ろうとしていますが、見通しはいかがでしょうか。

石田 2003年度の国内売上げは、前年を若干下回る結果に終りそうです。一昨年の上半期はサッカーのワールドカップがありました。当社はそのオフィシャルパートナーとして第1四半期は非常に盛り上がりました。これに対して2003年度の上半期は相当苦しみました。 第2四半期以降は液晶テレビやデジタルAV商品が出てきましたので、業界並みの伸びを実現できました。年末年始でもデジタルAV商品が順調で、ほぼ前年並みをキープしましたが、第1四半期のマイナスをカバーすることはできませんでした。

――商品別に見るといかがでしょうか。

石田 減収になった理由のひとつに、液晶などのFPDやDVDの発売タイミングが若干遅れてしまったことがあります。繁忙期の前に数量的にきちんと導入できていれば、業界平均以上の売上げをあげることができたのではないかと思っています。 もうひとつはわれわれの主要商品のひとつであるDVCの落ち込みが、全体の足を引っ張ってしまったことです。販売台数は伸びていますが、予想以上に単価ダウンが進みました。当社はノンメガ、1メガのところではしっかりシェアをとっていますが、市場全体の約5割を占める2メガピクセル以上のタイプを提案できませんでした。今後の大きな課題として、この部分の強化に取り組んでいきます。

――前年よりも伸びた商品カテゴリーは何でしょうか。

石田 オーディオが大変好調でした。業界全体は95〜96%と前年を割り込みましたが、当社はラジカセやミニコンポでトップシェアを取ることができ、売上げにも貢献しました。この分野から撤退されていくメーカーさんもありますが、当社は今後もここでしっかり売上げを稼いでいきたいと考えています。

市場で高い評価を受ける
オンリーワン技術の商品

――薄型テレビやDVDレコーダーではビクターらしい商品が揃ってきましたので、これからに期待できますね。

石田 ビクターの映像機器の特長は高画質・高音質です。デジタルAV機器の中で、高画質を実現するための核になる新しい技術がいくつか出てきました。例えば、テレビではDETに対して大変高い評価をいただいていて、これを搭載した26V型の液晶テレビLX―26LC4は、インチクラスの中ではトップシェアです。ディスプレイはこれから期待できる商品になってきました。 もうひとつはDVDレコーダーです。DVDレコーダーは録画機ですから、何といっても画質の高さが求められます。その時にビクターがVHSの開発メーカーとして永年にわたって蓄積してきた録画技術が活きています。 その中のひとつが、長時間モードで録画した時の画質です。最近の映画では、2時間以上のものも珍しくなくなってきました。それを録った時の画質劣化が非常に少ないということで、流通さんからは非常に高い評価をいただいています。それをどうやってお客様に知らしめていくかが課題です。

――DVDレコーダーでは、マルチフォーマットに対応していることも好評ですね。

石田 お客様にフォーマットの選択肢が広がっていいという話はありません。パソコンと違って家庭用の製品では、本来、フォーマットはひとつであるべきです。いろんな規格が乱立してユーザーを困らせてはいけません。もしそれができないのであれば、マルチでやっていくしかないということで、当社ではマルチを採用しています。

――オーディオでもオンリーワン技術を搭載した商品が好調です。

石田 DDスピーカーに続き、最近では、ウッドコーンスピーカーが大変高い評価をいただいています。ミニコンなどのセットステレオの分野では、価格競争が大変厳しくなっていますが、ウッドコーンスピーカーを搭載したEX―A1は標準価格で9万円もしますが、商品としての魅力をお客様に評価していただき大変好調な動きをしています。 もうひとつは、SX―L9です。これには私も驚きました。お店に出向いていろいろ提案させていただいた時に、これは世界のハイエンドスピーカーに伍して戦える音だという評価を専門店さんからいただきました。1本60万円ですから決して大量に売れる商品ではありませんが、この価格帯の商品としては際立った動きをさせていただいています。

――ハイビジョンカムコーダー、DET搭載液晶テレビ、SX―L9などクオリティーにこだわった商品が増えてきていますね。

石田 ビクターの規模では総合家電メーカーと同じやり方では戦えません。中堅企業として、技術的に独自性のあるオンリーワン商品を提案し、それをお客様から支持していだたくことが当社の存在価値になります。お客様がビクターを買って、本当に良かったと思っていただける満足度をどんどんあげていきたいと考えています。

高付加価値商品を
高付加価値営業で売る

――2004年度から新たな中期計画「躍進21」がスタートします。国内営業にとっての課題は何でしょうか。

石田 商品面ではオンリーワン技術が入ったものが出てきました。そこで営業としては、これを使って市場でビクターの存在感を示していかなければいけません。市場で存在感を出すためには、少なくとも10%以上のシェアが必要です。 これを実現するには様々な改革を必要とし、スリムで効率のいい営業体制を作らなければならない。私たちの基本はお客様第一です。お客様第一を考えた物作りとはオンリーワン商品です。それを作り続けること、そしてそれをきちんと伝えられる高付加価値営業に繋げて提案していくことが営業には求められます。 市場シェア10%以上という目標は、お客様にとってなくてはならないメーカーになることです。お客様に選んでいただけないメーカーになってしまったら、当社の存在価値はありません。
マーケットはハイスピードでしかも大きく変化しています。それに柔軟に対応して、成長軌道に乗り遅れないようにしていくことが必要です。物作りだけでなく、営業面でもスピード、タイミング、クオリティがキーワードになりますので、全員一丸となってこれに取り組んでいかなければいけません。 そのためには、お客様からも、流通からも、それからあらゆるわれわれの関係の方たちからも信頼を得られるような営業活動や物作りの体制をきちんと作ることが使命だと思っています。
新中期計画の中では国内の民生事業に対して大きな飛躍が期待されています。市場シェア10%以上を確保するために、われわれは営業としての改革を常態化して前に進んでいかなければいけません。 ビクターの目指していることは「お客様に最高の感動と満足を提供したい」ということです。これをバックボーンにしてオンリーワン戦略を徹底することによって、エンターテインメントソリューション企業としての成長を目指していきたいと思っています。

――新中期計画の目標を達成するには、ディスプレイとビデオレコーダーをいかに売り抜いていくかが課題になりますね。

石田 ビクターでは5つの事業ドメインを設定して事業を展開していますが、その中で高精細ディスプレイ、デジタルHDストレージ、ネットワークAVシステムの3つがわれわれ国内営業が関わる領域になります。「躍進21」計画の中での最大の重点事業は高精細ディスプレイと光ディスクです。 そこでの営業の基本は今まで培ってきたビクターらしさをどう継続して、提案していくかということです。かつてのビクターの営業は商品知識が豊富で、しかもお店を非常に大切にしてくれるということで、販売店さんから高い評価をいただいていました。もう一度、初心に戻って、営業活動をしていかなければいけません。 そのためには商品をしっかり知り、訪問活動もきちんとしないといけません。基本を忠実に実行することが、ビクターらしさの再現になると思います。シンプルで流通さんから認められる営業でありたいと考えています。

市場でNo.1の売りを作る
営業体制を構築していく

――そのための具体的な施策として、どのようなことを計画されていますか。

石田 ディスプレイとDVDレコーダー、DVCを重点販売商品にして、拡販作戦を徹底してやっていきます。そのための実行目標として、売り切ることに徹する、新しい習慣を作る、商品を語る、この3つを04年度の営業現場での方針として掲げました。 売り切ることに徹するとは、DETなどビクターのオンリーワン技術が入った商品を、いかにして営業がヒット商品に繋げていくかです。営業が市場でナンバーワンの売りを作っていくことが大切です。そのための販売網をきちんと再構築していきたいと考えています。 2つ目の新しい習慣を作るとは、営業の構造改革をしていくこと。ひとつはわれわれの営業マンが流通さんに何をお伝えするかです。今まではカタログを使った商品説明が中心になっていました。これを経営提言までできるような提案と情報を持った訪問活動ができるようにしていきたいと思っています。また、ITなどを活用した営業活動の効率化も図っていきます。ただ、営業はアナログ的な要素の高い仕事ですので、その部分は十分大切にしていきます。

――3つ目の商品を語るというのはどういうことでしょうか。

石田 自分の言葉で情熱を持って商品を語って欲しいということです。カタログに載っている技術的な説明だけではなくて、お客様にこういう使い方をしていただいたらこういう良さがあるんですよ、といったことを自分の言葉に置き換えてお店に伝え、それをお店からお客様に伝えていただくという作業をしていただけるようにならないといけません。
店頭での営業力を高めるためには、売り場の中にビクターの分身を一人でも多く作っていかなければいけません。そのために、勉強会や販促をしっかり提案していきます。当社では、流通さん向けに怎fジタルアドバイザースクール揩ニいう勉強会を続けています。これをもっと進化させて、流通の販売員の方たちにもビクターの商品を語っていただけるようにしていきたいと考えています。

ビッグイベントを活用した
強力な販促策を展開

――販促面での計画をお聞かせください。

石田 ビクターでは毎年東京ビデオフェスティバルを開催しています。これが年々盛況になってきていますので、これを販促に繋げていきたいと思っています。 また、今年は様々なビッグスポーツイベントがありますので、これを最大限活用していきます。6月12日からは、「UEFA EURO 2004TM」がポルトガルで開催されます。当社はこのオフィシャルパートナーになっていますので、WOWOWとのタイアップやインターネットを活用したキャンペーン、流通の店頭イベントなど、様々なキャンペーンを強力に展開していきます。今年の最大のイベントは何といってもアテネオリンピックです。一大イベントですので、これを絡めた販促も強力に展開していきます。

――アテネオリンピックでは、時差の関係でいったん録画しておいて、後から見ることが多くなると思います。そこでは長時間録画でも高画質というビクターのDVDレコーダーの特長が活きてきますね。

石田 そういうことをお客様にきちんと伝えていくことが、営業のオンリーワン技術の訴求方法です。DVDレコーダーで長時間録画時の画質に差があるということは、ほとんど知られていません。デジタルだから差はないと思われている方が大半です。 ビクターの商品の良さはお買い求めいただいたお客様には理解していただいていますが、お買い求めいただく前に理解していただけるようにならないといけません。ビクターのDVDレコーダーなら、2時間を超す長時間録画モードでも美しい映像で録画できることを、語り続けていかなければいけません。そういうことの積み重ねで、一味違った売りをとっていけるように思います。

企画提案型で信頼される
営業活動を目指していく

――今年の市場をどのように見通されていますか。

石田 今年はワールドスポーツイベントが上半期に集中します。それぞれの流通チャネルにあわせたキャンペーンやイベントの企画提案をきちんとしていくことによって、このタイミングを逃さずにしっかりと売り抜いていきたいと考えています。 今年は8月に大きなピークがくることは間違いありませんが、地上波テレビ放送のデジタル化という大きな流れがありますので、オリンピックが終ってもテレビ需要はさらに伸びていくと思います。ですから、ディスプレイとDVDレコーダーのビジネスをしっかりと捕らえた商売をしていきたいと考えています。

――家電流通チャネルに大きな変化が起きています。今後のチャネル政策をお聞かせください。

石田 メーカー論理だけでは通用しませんから、主張をすべきことは主張しながら、変化には絶対に対応していきます。ただ、その時に考えておかなければいけないことは、将来に対する成長性も見極めておかなければいけないということです。 また、流通には様々な種類があります。全国をカバーするメガ量販、特定の地域を細かくサポートする地域量販、狭い範囲のお客様を深耕できる一般地域店では、それぞれの役割が異なります。三者がうまく棲み分けていくことが、お客様にとって望ましいことではないかと思います。

――最後に販売店さんへのメッセージがありましたらどうぞ。

石田 ビクターでは付加価値の高いオンリーワン商品を作っていくとともに、企画提案型で経営サポートまでできるような営業活動を目指していきます。お客様やお店から信頼される営業になっていきたいと考えています。是非、サポートをよろしくお願いいたします。

 

◆PROFILE◆

Takuo Ishida

1945年12月16日生まれ。神奈川県出身。1970年3月日本ビクター鞄社。84年9月藤沢営業所長、91年10月神奈川ビクター渇c業部長、92年4月営業本部神奈川支店営業部長、95年4月オーディオ事業本部オーディオ事業部営業部次長、97年4月AV&マルチメディア事業本部国内営業本部東北支店長、99年4月AV&マルチメディア事業本部国内営業本部東京支店営業部長、01年4月AV&&マルチメディアカンパニー国内営業本部南関東統括部長、02年4月AV&マルチメディアカンパニー国内営業本部東京統括部長、04年1月理事、AV&マルチメディアカンパニー国内営業本部長、現在に至る。