巻頭言


ふたたび動物商法 / 和田光征 WADA KOHSEI


最早20年以上も前のこと、会合で学習院大学の田島先生がお話をされ、質疑応答の際のことですが、ある専門店の店主から「専門店経営も大変です。大変な時期の今、生き残るためにどうすれば良いのでしょうか」との質問がありました。当時はオーディオ専門店に対してNEBA店を中心とした量販店の攻勢があって、専門店も押され気味でした。

同時にオイルショック後の後遺症や変動為替への移行など、業界を取り巻く環境は厳しいものがあったのです。オーディオもシスコンが飽和期を迎え、ミニコンへのシフトが始まろうとしていたタイミングでした。しかし当時、オーディオへの消費性向は底固いものがあり、相変わらずの成長軌道を描いていました。

田島先生は「動物商法でいきなさい」と答えました。「動物商法?」と全員が怪訝な顔をしています。「動物は餌のあるところへ行く、植物商法はお客様が来訪するのをひたすら待っている。そこに生きている植物は自然環境の影響を受け易く、日照りが続けば枯れてしまう。その点動物は日照りを避けることもできるし、自ら出かけて行って食糧を手にすることもできます」。

確か、田島先生はこれ以上話されなかったと思います。要は大変だと言いながらそこに生えているような経営を改め、お客様のところへ出かけなさいと言われたのですが、その店は理解できなかったようでした。

昔話になりますが、ある専門店主から相談を受けたことがあります。「どうしても上手くいかない、どうしたものか」。その店は6名位の店員さんがいたと思いますが、コストの高い経営体質になっていました。年輩の店員さんが多く、当時の消費の中心を成すユーザー層とのギャップは否めませんでした。

私は次のことをアドバイスしました。
@ 若い人を抜擢してフェアを任せる。
A 年輩の店員さん達で訪販部隊をつくる。

@については若い人達は任せれば能力を発揮し、新しい風を起こしてくれる。ただ報告・連絡・相談はしっかりやらせる。

Aはこれからはよりユーザーの時代になるので、顧客管理の有無が重要になってくる。従って、まずやるべきことはお得意先を訪問し、点検、使いこなしなどをしながら購買に結びつけ、顧客リストの整理をしていく。それもだらだらやるのではなく、目標を設定して素早くやり遂げさせる。コミッション制も導入してやる気を起こさせるべきである。

その店主は早速実行しました。1ヵ月位して、若い店員さんが面白い売り方をするということで連絡がありました。あるお客様がアンプを探しに来ていたのですが、なかなか決まらない。そこでその店員さんは「そんなに悩んで決まらないなら、とりあえず今使っているものを使った方がいいですよ。ところでビデオの新製品が発売されましたので、ちょっと見てください」。結局、アンプより高いビデオを買っていかれたとのこと。

訪販部隊は流石に上手くいかなかったようです。植物商法が沁み込んだ人達は結局、動物商法は不向きで、その店もいつの間にか元の木阿弥で、数年後には店を閉めてしまいました。

いつの時代も動物商法しか生き残れないことを噛み締めているこの頃です。

 

ENGLISH