トップインタビュー

潟Pーズデンキ
代表取締役社長

加藤修一 氏
Shuuichi katou

 

お客様が
どう考えるかということが
常に発想の原点です



家電流通の激戦が続く中、好業績を続けるケーズデンキ。その安定した高成長を支える効率的な経営システムとユニークな経営哲学が注目を集めている。また、同社では千葉県浦安市に巨大店舗をオープンし、つい先日は中部地区に本拠を置くギガスとの事業統合を発表した。同社の安定高成長を支えてきたものは何か、また、今後の事業戦略は何かについて、同社社長の加藤修一氏に聞いた。

必死になって新製品を
追いかけていないと
売り場が陳腐化してしまいます

メーカーと流通の関係は
戦いではなく役割分担です
お互いの協力が大切です

大欲は無欲に通じるのと同じで
欲張らないことが
一番うまくいくと思っています

ケーズデンキの基本は
お客様の立場で考えること

―― ケーズデンキはユニークな経営哲学を持っていると言われています。最初にその経営哲学から伺わせてください。

加藤 ケーズデンキの基本は、お客様の側から見て物事を考えようということです。私も若い頃に販売のテクニックを一生懸命勉強しましたが、ずいぶん以前に忘れることにしました。時代に合わなくなってきたからです。ところが、その頃勉強したようなことをいまだに一生懸命やっている人が沢山います。
たとえばポイントもそうです。最初から安い価格で売ればいいところを、お客様のお金をお店に預金してもらうという複雑なやり方をしています。1%くらいならたいしたことはありませんが、20%になると10万円の商品を買って2万円を貯金していくのですかということです。これは店がお客様を繋ぎとめたいという話で、お客様のためではありません。
荒利を多くとれる商品を重点的に売ろうとか、メーカーさんから安く仕入れようということもよく言われますが、これらもお客様の要望に従っているわけではなくて店の都合です。
ケーズデンキの考え方はそうではありません。お客様をできるだけフリーにしておいて、店の魅力や社員の魅力でお客様に選んでいただこうとしています。
販売店の役割は、お客様とメーカーさんの間を取り持つことです。できるだけお客様の要望を代弁して、メーカーさんからいい商品を手に入れて素直にお客様に渡すようにしています。その時に儲けが少ないとしても、能率を上げて売上げが多くなれば自然に利益が増えます。

―― お客様の利益を高めることが、販売店の利益を高めるということですね。

加藤 われわれが過去習ってきたことでは、荒利が取れる商品を売ることは正しいことでした。でもお客様が欲しいものがあるのに、別の商品を売った方が儲かるからそちらを売るということは間違っています。過去勉強したことのほとんどは客騙しのテクニックでしたが、そういう時代は終わったと思います。
バブル以降の日本の消費者は成熟してきました。本当に欲しいものは買いますが、欲しくなければ安くても買いません。お客様が望まれていることは、同じ物であれば安く買いたいということで、安物を買いたいということではありません。売り手側が昔と同じ価値判断でやっていては儲からない時に、それにさらに磨きをかけようと力んでみてもますます違う方向にいってしまいます。
ケーズデンキではすべてのお客様に買っていただこうとは思っていません。5人に一人買っていただければ十分です。ケーズデンキのスタンスを気に入ったお客様に買ってもらえばいいということでのんびりやっています。私はいつも頑張らない方がうまくいくと言っていますが、とにかく無理をしないという考え方です。無理なことはどっちみち無理だからです。

大切なことは経営哲学に
合わせた社員の管理方法

―― 流通業に求められていることに、素直に応えていこうということですね。

加藤 流通業としてその役割は何かを考えて、それを極めようとしています。メーカーさんはいいものを作る。お客様は欲しい商品を買います。それをなるべくずれないようにしていくのが流通業です。こう考えると、仕事の仕方が非常に素直になっていきます。
世の中には優れているといわれている会社はいくつもありますが、それらは全部特徴が違います。家電量販業界でもヤマダさんはどこまでも価格が安そうに思えることを一生懸命やっています。多くの家電量販店では安さの表現に力を入れすぎていますが、大きな買い物をする時に、お客様自身が様々な店の価格を比べます。実際に比べればその店の価格が本当に高いのか安いのかは分かることです。
値段は合わせましょうと言われれば同じ値段になってしまいます。それよりもお客様の感情を害したら、もう2度とそのお店では買っていただけません。お客様に親切にしてケーズデンキを気に入っていただく。それによって、ずっと自分たちのお店で買っていただけるようにしていこうというのが方針です。

―― そのためには販売員の質の高さが大切になってきますね。

加藤 社員の質はいいに越したことはありませんが、一番大切なことは管理方法です。徹底的な業績主義にすると、社員は無理をしてでも業績を上げようとします。
私は売上げが目標に届いたかどうかを気にしたことがありません。昔から月末に売上を追いかけたこともありません。会社が毎日毎日強い方向に向かっていれば良いと思っています。

―― 目先の業績にこだわると、お客様の利益とは違う動きが出てくるということですね。

加藤 ケーズデンキでも成果主義を採り入れていますが、数字が悪いからといって叱られたり給料が下がるようなことはありません。ノルマや業績に対する様々な圧力が本部からあれば、お客様に対してそれが態度に出てしまいます。荒利を取れと言われれば、良くないと思っても荒利のとれる商品を薦めます。
業界では荒利がとれるものを薦めることはいいことのように言われていますが、私はお客様の要望に合ったものをお薦めすることが正しいことだと思っています。
お客様の中にはいいものを買いたい人もいますし、たまたまお金の都合で安いものを買いたい方もいらっしゃいます。そのためにいろいろな種類の商品を置いています。もし薦めたいものだけを売るのであれば、種類は少なくていいわけです。もちろん商売ですからお客様が荒利の高い商品を選んでくれたらいいなということはあります。しかし、無理矢理それを売ろうということではありません。

―― 加藤さんの話を聞くとほっとしますね。

加藤 私はこれが当たり前だと思っていますが、ほとんどの会社は違うやり方をされています。業績が悪くなると荒利を取らなければいけないということで、メーカーさんに対してさらに安くして欲しいという話を持ちかけます。ところがメーカーさんが安くする商品は余っている商品です。足りなくてあちらこちらの店から何とか回して欲しいと言われている商品を安くして持ってくるわけがありません。そうすると売り場は売れ残りの商品ばかりになってしまって、ますますその店は売れなくなってしまいます。
この業界で努力するとか頑張るということは、私から見るとほとんどあさっての方を向いているということになります。ですから、私は頑張らないと言っているわけです。

売り場を新鮮に保つために
新製品をできるだけ早く導入

―― お客様から支持していただくためには、魅力ある商品構成も重要です。ケーズデンキでは「新製品が安い」というキャッチフレーズでそこをアピールされていますね。

加藤 このキャッチフレーズは私が考えました。新製品が安いという意味は、いいものを安く売っていますという意味です。ただ単に安いというだけでは、安物を売っているというふうにもとられてしまいます。ただ、いいものをと言うとあまりにもつまらないので、新製品が安いという表現にしました。

―― 新製品を表に出すことによって、商品に対する考え方がまるで変わってきますからね。

加藤 ほとんどの会社では商品部ができるだけ安く仕入れようとしていますが、これでは値段が決まるまではせっかくの新製品が入りません。
ケーズデンキでは逆に新製品の導入をできるだけ早くしようと心がけています。そのためにメーカーさんには発売の何ヵ月も前に契約発注して、常に約束どおり引き取っています。
家電業界は商品の変化が早いですから、必死になって新製品を追いかけていないとあっという間に売り場が陳腐化してしまいます。古い商品で条件が出るものを探して仕入れてくることに夢中になっているようでは、会社が駄目になってしまいます。

―― 新製品の売れ筋をいかにして掴まえるかが重要ですね。

加藤 それは商品部がやっている仕事ですから私は良く分かりませんが、ケーズデンキでは常にメーカーさんとの約束を守ってきました。それがうまく回ってきているように思います。メーカーさんとしては安心して商品を作ることができますので、値段も決まっていないような早い段階でケーズデンキの商品部に情報が入ってきていると思います。

―― 契約で納品したはずの商品が売れ残ったということで返品されることは、メーカーさんにとって頭の痛い問題ですからね。

加藤 これについてはメーカーさんはもっと毅然とした態度で商売すべきだと思います。次の商品を入れたいばかりに、契約で買い取ってもらっている商品を残ったから持って帰れといわれて言いなりになっています。こんなことを繰り返していてはいけません。
ケーズデンキでは、もし仕入れを間違ったら安くしてでも自分で処分しなさいと言っています。

メーカーさんと流通の関係は
戦いではなく役割分担

―― 私は販売店があまり横暴なことをすると、メーカーが売ってくれないということも起こってくるということを本誌に書いたことがあります。最近はメーカーが流通を選ぶという動きが出てきていますね。

加藤 メーカーさんと流通との関係は、戦いではなく役割分担です。お互いに協力して意味のない無駄を省くことが大切です。ところが、お前のところは損しろ、その分自分のところが儲けるということをやっているようではいけません。
以前の家電量販業界はみんな小さくて、売上げが百億円あれば結構大きかったという時代でしたから、それでも良かったかもしれません。でも、今は一千億でも小さくて一兆円を目指しています。その時に売上げの規模が百分の一の時と同じような発想をしていてはいけません。
家電流通が上位の会社に寡占化していくことは避けられないと思います。その時に残る会社は、メーカーさんからもお客様からも支持される会社でないといけません。力があることをいいことに乱暴を働くと周りはいい迷惑ですし、業界そのものがおかしくなってしまいます。

―― 協賛金などを計算するとメーカーが赤字になっているというケースもあるようですからね。

加藤 私はそれはメーカーさんの上層部の人が悪いと言っています。上が目先の数字に目くじらを立てるから、現場では良くないことはわかっていても買ってもらわなければいけないのでそういうことが起こるわけです。もう少しおおらかに一年とか二年のスパンでの数字を考えてやっていけば、もっと違ったことになっていると思います。上層部の人はもっと戦略的な仕事をしなければいけないのに、戦闘レベルの仕事をしてしまっているためにメーカーさんは苦しくなるわけです。

―― ただ、圧倒的に強いところに対しては、メーカーは商品を出さざるを得ないという面もありますね。

加藤 だからそこに対する対抗馬として名乗りを挙げないと、メーカーさんも困ると思います。その時に対抗馬が同じ体質の会社ではどっちみち同じだということになってしまいます。メーカーさんから見て、こういう会社があって欲しいということをやっているのがケーズデンキかもしれません。
メーカーさんはトップの店についていかざるを得ませんので、内心では快く思っていなくても商品を出荷していることもあります。でもそういう販売店の力が落ちてきたら、さっとひいてしまいます。いつの間にか自然に規模が大きくなるのはいいと思いますが、無理をして大きくなると心配で仕方がありません。

―― メーカーでは流通と安心できるお付き合いしていきたいという願望があります。

加藤 メーカーさんは流通に強く言われて安く商品を卸してしまうケースが見受けられるようですが、それは不公平です。仕入れた商品が売れ残った場合でも、ケーズデンキは自己責任で処理しています。メーカーさんが将来ケーズデンキに育って欲しいと思っていただけるのであれば、もう少し鮮明に応援していただければと思います。
メーカーさんではケーズと取引した方が儲かるので、ケーズデンキに力を入れるという陰の力が働く可能性はありますが。

―― 長い目で見ると、メーカーさんや消費者に喜ばれるところがうまくいくということですね。

加藤 お客様に喜ばれるようになると商売は簡単です。お客様がたくさん集まってきますので、自然に生産性が上がります。そうすると荒利が低くても儲かります。サービスもそうです。今はサービスが良くて価格は安くなければいけない時代です。その時にサービスを良くするためには荒利が必要だという発想は間違っています。
たとえば専用商品はお客様の要望でやっているわけではありません。いい商品を作るのはメーカーさんの仕事です。もし、本当にお客様にとってこうでなければいけないということがあれば、メーカーさんにアドバイスして通常商品をそうしてもらうべきです。メーカーさんも少ないシェアに対して二度手間の商品を作ってはいけないと思います。メーカーも流通も自分の役割を磨くべきだと思います。

戦略的な経営センスが
FC加盟の条件

―― ケーズデンキでは、フランチャイズ(FC)の成長性が非常に高いですね。

加藤 以前はメーカーさんが地域別に販売会社を持ってきめ細かく商売していました。ところが今は全国の販売会社を統一して、全国一販社の時代になってきました。そうなると仕入窓口も全国に対して一箇所でいいということになります。
しかし小売業はエリアごとに分かれている方がローコスト化します。ケーズデンキの社員が北海道に行って商売をしたのでは、給料は関東の給料だし住居も提供しないと誰も行きません。ところが北海道の人がそこで電気屋をやりたいということであれば、給料は北海道の水準ですし住居の心配もありません。
ただ経営ノウハウや仕入規模は企業によって大きな差があります。ですから、その部分はケーズデンキが全部やるので、FCの皆さんはご自分のエリアでその人の実力に応じた規模で販売をやったらどうですかということが、ケーズデンキのFCに対する考え方です。
ケーズデンキは10年で10倍、30年で1000倍の規模に成長してきました。FCの皆さんはその真似をするのですから、もっと早くできるかもしれません。遅くても10年で10倍やってくださいといつも言っています。

―― FCの方には販売をきちんとやっていただこうということですね。

加藤 駄目になっている中堅の会社はみんな仕入を一生懸命やるからです。これはメーカーさんは商品を仕入れさせるために商品部の人間をおだてて駄目にしているからです。商品部の人が偉そうになってしまったという話はいっぱい聞きます。でも商品部がそんなふうになった途端に会社はおかしくなってしまいます。私は、ケーズの商品部にはそうなって欲しくないので、いつも「威張るな、奢るな、怒るな」と言っています。
ケーズデンキのFCのオーナーになる人にはメーカーさんからおだてられる楽しみはないかもしれません。でも商売がうまくいく方がいいでしょうということです。
FCに対してケーズデンキは、どういう場所にどんな店を作れば成功できるかと店舗戦略などをみんなで理論的に共有して、誰がやっても同じような出店ができて成功できることを重点的にサポートしています。

―― FCになりたいという申し入れが多いと思いますが。

加藤 FCになりたい人はたくさんいますが、それを実行できる人でないといけません。家電販売業界はスクラップ&ビルドの時代です。FCになりたいといってくる人たちを見ると、ほとんどの店をスクラップしなければいけないところばかりです。それを良しとできるかどうか、また、それをできるだけの体力があるかどうかという問題もあります。ですからケーズでは簡単にFCにしません。
FCの中で一番成功している九州の正一電気は、それまで営業していた7店舗すべてを一気にスクラップしました。今まで商売していた全ての店を閉めてでもFCになりたいという人はなかなかいませんが、私はそれをFCになる条件にしました。戦略とはそういうことです。普通の人にはそれを実行できません。でもそうしないとうまくいきません。
ケーズデンキのFCになる前の店を閉じた人は皆さん成功されています。ケーズデンキと一緒になる前に失敗した店が、ケーズデンキになったからといってそれほど良くなりません。しかし、ケーズデンキの店舗戦略に沿って新しく作った店ではちゃんと儲かっています。ケーズデンキでは関わった相手をみんなハッピーにできています。この点ではぜひケーズデンキを認めていただきたいと思います。

買い手の立場で考えると
物事を単純化できる

―― 本店のある水戸でも全店スクラップ&ビルドを実施されましたね。

加藤 以前は水戸に7店舗ありました。今の本店を作った時に4店舗残しましたが、それらの店の売上げが毎年七掛けに落ちて、三年で三分の一の売上になってしまいました。そこで4店とも閉めました。表現の仕方にはいろいろありますが、家電量販店ではびっくりするほど違う値段で実際に売れることはほとんどありません。そうなると品揃えが多い大型店に集約した方が有利です。

―― 大型店という意味では千葉県の浦安に巨大な店を作られました。その背景はどういうことでしたか。

加藤 千葉県の浦安にものすごく大きな土地が手に入りました。ただ、周辺の人口はそれほど多くありません。通常だとそれに合わせたローコストの店を作ってしまいますが、それではせっかくの大きな土地が活きてきません。
浦安は千葉県ですが東京から川を一本隔てただけの場所です。そこで東京に住んでいる人も千葉県の人も買いに来てくれるような店にするためにどうしたらいいかということを考えました。その結果がワンフロアで日本一の大きい店にしようということでした。どこにもないような大きな店であれば川を越えてでも東京の人が来てくれるからです。
ただ東京の人にとって、千葉県の店に買いに行くということに抵抗があるかもしれません。そこでお客様の抵抗感を少しでも少なくしようということで、TOKYO BAY―SIDE新浦安という名前にしました。

―― 浦安店では製造中止になってずいぶん時間がたった商品の消耗品まで、幅広い品揃えで展開されていますね。

加藤 水戸本店を作った時に起こった現象は、変わった商品が売れるようになったことです。
大きい店は品揃えが多くないといけません。お客様が困った時に、あそこならあるだろうということを期待されているからです。それを裏切ってはいけません。来店された時に困っていたものが見つかると、来て良かった、これからもこの店に来ようということになります。

―― 加藤さんの店名の付け方やキャッチフレーズを見ると、お客様の心理を非常に大切にされていますね。

加藤 お客様がどう考えるかいうことが、常に私の発想の原点です。売り手の立場ではなく、買い手の立場で考えると物事は単純です。
売り場でもそうです。私は商品のことを知りませんので、客として売り場に行きます。それでもし買いにくければ、私が買えないのにどうしてお客様が買えるのかという話をします。私の役割は常に消費者の代弁者になることです。

欲張らないことが
欲張った以上の成果を生む

―― 先日ギガスとの事業統合を発表されました。家電量販業界は今後どういう展開になっていくと見ていますか。

加藤 ギガスの社長もシビアに仕事をする人ですから、スクラップ&ビルドを進めて、不良店舗のない会社になっていると思います。そういう会社であるから、将来のことを考えると、組んでいくのがいいだろうということで事業統合することにしました。
私は20年ぐらい前から今のよう時代がくるということを言ってきましたが、10年後には家電量販店は5社くらいしか残らないと見ています。そうなると、今一千億しか売っていない会社が主導権を取っている可能性は低いと思います。その時にケーズデンキはどこかに吸収してもらうのか、あるいは自分が残るのかということになりますが、私は自分が残る方向でチャレンジしています。

―― いずれは全国展開を目指していくことになると思いますが、どのような計画を持たれていますか。

加藤 10年後には全国展開を進めていると思いますが、今はどこを狙いたいということはありません。全国の三分の一近い人口を占める関東にきちんと店を埋めていくだけでも相当大変です。今は遠いところにまで出て行く気はありません。ただケーズデンキと組んでいきたいという人がいて、可能な人であればその人と組んでいきます。

―― 家電流通でカメラ系の販売店のシェアが高まってきましたが、加藤さんはカメラ系は競争相手ではないという見方をされていますね。

加藤 ヨドバシさんやビックカメラさんはデパート型の立地戦略をとっています。ターミナルに大型店舗を作って、遠くからお客様を集めるという考え方です。これに対して人が住んでいる場所のそばに駐車場付きの大きな店で営業しているわれわれのような家電量販店は、スーパー型の立地です。
お互いの商品構成も違います。スーパーは大衆的な商品を売っていますが、デパートはそこでしか買えないものを売っています。家電量販店でも大型店では品揃え的にはヨドバシさんなどとはそれほど違わなくなってきている可能性がありますが、地方の千坪の店ではそこまでの品揃えはできません。
ですからカメラ系さんは競争相手ではないという考え方でやっています。ケーズデンキは、その町に住んでいる人が便利になるための店を作っています。この点でカメラ系との棲み分けをしています。

―― 家電流通業界にはいわゆる家電系列店や大手スーパーもあります。この点についてはいかがでしょうか。

加藤 いろいろなお客様がいらっしゃいますので、系列店的な人も残っていないと困ります。大病院があっても町医者が必要なことと同じです。
これに対してGMS系は事情が違います。GMSの基本はセルフ業ですが、専門店や電気屋は接客業です。だからGMSは電気製品の販売が不得意です。かつてスーパーで電気製品が売れていた時代がありました。当時は大店法が厳しくてほとんどの電気屋が150坪ほどの店を作っていた時に、広い売場面積でしかも安く売っていたからです。
ところが今のように売場は電気屋の方が大きくなって値段も安くなってくると、スーパーで電気製品を買う人はいなくなります。
ただ、電気屋は接客業だからといって何でもかんでも接客すればいいということではありません。人は要ですが、セルフで買えるものはセルフで買えるようにして人件費を抑えることが必要です。

―― 世の中が厳しくなると、業態間や企業間の差が顕著に出てきますね。

加藤 私は世の中は景気が悪い方がいいという主義です。ケーズデンキの基本は、能率で儲けようという意識です。能率は回転率です。お客様に気に入られることで儲けるのであって、利幅をとって儲けるということではありません。
大欲は無欲に通じるというのと一緒で、欲張らないことが一番うまくいくと思っています。実際にそれでケーズデンキは伸びてきました。儲けようということで欲張ると、結果として儲からなくなってしまいます。欲張らないことによって、欲張った以上の結果が自然に出てきます。

 

◆PROFILE◆

Shuuichi katou

1946年4月7日生まれ。 69年3月東京電機大学工学部卒業。69年4月(有)加藤電機商会(ケーズデンキ前身)入社。73年9月(株)カトーデンキ(ケーズデンキ前身)代表取締役専務、82年3月同社代表取締役社長。91年7月(株)よつば電機(現(株)東北ケーズデンキ)代表取締役社長。01年4月日本電気大型店協会(NEBA)副会長。03年6月(株)デジックスケーズ代表取締役社長。