トップインタビュー

セイコーエプソン(株)
取締役 映像機器事業部 事業部長

内田健治 氏

使い勝手と価格でブレイク
ホームプロジェクター
市場の拡大を推進

液晶プロジェクターの先駆者として、高い技術力を誇るエプソン。同社はビジネスプロジェクター市場で、8年連続トップシェアを誇っている。そのエプソンが昨年からホームプロジェクター市場の開拓にのりだしてきた。PC用のプリンターを一般家庭に普及させた同社は、ホームプロジェクター市場にどのような戦略で臨もうとしているのか。新たにこの6月に同社・取締役に就いた内田健治氏に話を聞いた。

インタビュー ● 音元出版社長 和田光征

プロジェクターの市場を
一般層にまで拡大できる
時期にきていると思います

ビデオ用として発売された
液晶プロジェクター第一号機

―― まず最初にエプソンのプロジェクターの歴史をお聞かせください。

内田 当社がプロジェクターに関わるきっかけになったのは、高温ポリ液晶デバイスを開発したことでした。私は直接このデバイスの開発にタッチしていませんがこれは目的とする商品があってパネルを開発したというよりも、まず最初にデバイスができて、その後にこれをどのような用途に使おうかということを考えたようです。液晶をどこに使うかについてのさまざまなアイディアが考え出され、ビデオカメラのビューワもその中のひとつでしたが、そこで出てきたアイデアの中のひとつが液晶プロジェクターでした。

―― それはいつごろのことですか。

内田 ビデオ用の液晶プロジェクターの第一号機を発表したのは1989年でしたが、ほとんど売れませんでした。月に数十台から百台程度の販売台数で、事業としては失敗でした。

当時は、ビデオプロジェクターの市場といいますか、ユーザー数そのものが非常に少なかったということがその理由でした。しかも、その非常に狭い市場の中で、大型の三管式プロジェクターががっちりと市場を作り上げていて、液晶プロジェクターの入る余地がありませんでした。

―― ビデオ用プロジェクターの世界で、エプソンは後発メーカーだと思われている方が多いようですが、ビデオ用からプロジェクターに取り組まれたということですね。

内田 そのとおりです。その後しばらく雌伏の時がありました。その間、様々な角度から市場調査をした結果、ビデオ用ではなくパソコン用のプロジェクターであれば、ある程度のユーザーがいそうだということがわかってきました。

そこで、1994年に、小型で軽量のデータ用液晶3板式プロジェクター「ELP―3000」をデータプロジェクターとして世界で初めて発売しました。その後、間もなくWindows95が登場し、パワーポイントを利用してパソコンでプレゼンテーションをすることが流行り始めてくる時期と、たまたまタイミングがあったということもあって、今度はうまくいきました。

―― ビデオ用に発売した1号機の時とは逆に、今度は環境が追い風になったということですね。

内田 そうです。94年の年末にスタートして以来、企業内におけるPCの普及やPCを活用したプレゼンテーションの増加などを背景に、年率40%くらいの勢いで成長してきました。高輝度化やモバイル化が急速に進んだことも、データプロジェクターの成長を後押ししました。

性能面では、ELP―3000の解像度はVGA程度、明るさも250ルーメンでした。今の製品からみるとずいぶん暗く思われるかもしれませんが、当時としては非常に明るいものでした。その後、画質を高めるためのさまざまな技術開発を進めてきた結果、解像度はVGAからSVGAへ、さらにXGAへと向上してきました。また、光学系の技術開発が進んだことによって、明るさも1号機の250ルーメンから、450ルーメンに、さらに、1000ルーメンを超えて3000ルーメン、5000ルーメンへと高まってきました。

今後、データ用のプロジェクターの小型化や高輝度化、低価格化が進み、その市場は、まだまだ伸びていくことが見込まれています。ただ、価格がどんどん下がっていきますので、金額面ではそれほど大きな伸びを期待できなくなっていきます。

―― そこで家庭用のプロジェクターに参入されたということですね。

内田 DVDの普及や地上波を含めたハイビジョン放送の登場などによって、これから、家庭に届けられる映像がすべてデジタル化されていきます。オーディオも同様にデジタル化されていきます。そういうコンテンツ環境の変化からみて、今後、ホームシアター市場が成長し、ホームプロジェクターの需要が伸びていくことが予測されます。そこで、昨年からホーム用の市場にも力を入れていこうという戦略をスタートさせました。

今、エプソンのホーム用プロジェクターのラインナップは3機種ですが、ホームシアター用のアスペクト比を16対9と定義すると、ELP―TW100Hの1機種のみです。ハイビジョン放送が家庭の中で一般的になっていくということを考えると、ホーム用では、16対9のアスペクト比で、しかもお買い求めやすい価格の商品を出していきたいと思っています。

低価格化と使い勝手の向上で
市場を拡大するEMP―S1

―― そのような市場環境の中で、エプソンではどのような事業戦略で臨まれているのでしょうか。

内田 ビジネス分野ではプロジェクターの普及が進んでいますが、普及率はまだそれほど高くありません。プロジェクターそのものを知らない企業がまだあること、安くなってきたとはいえ、まだまだ価格が高かったことが原因だと思います。

2002年のプロジェクター市場の規模は、全世界で170〜180万台でした。これは事務系の機器としては非常に少ない数です。プロジェクターは一度使うと非常に便利な製品ですので、もっと使われていいはずです。

そこで、価格を安くして、使い勝手を高めることによって、ビジネス用のプロジェクター市場をさらに広げていこうということで、先日、14万8000円という低価格を実現したEMP―S1を発売しました。

―― 今までの価格ではカバーできなかった需要層を拡大していこうということですね。

内田 たとえば、今、文部科学省が進めているIT教育推進プロジェクト「ミレニアムプロジェクト」では、2005年度までに全国の50万教室にプロジェクターが導入されることになっていますが、導入ペースは決して速いとはいえません。

一般企業でも、プロジェクターの価格が下がっていくことによって、会社に一台から一つの部に一台、さらに一課に一台へと広がっていくでしょう。また、地域イベントやカルチャー教室などでも、プロジェクターを使えばもっと楽しく、わかりやすい説明が可能になります。買い求めやすく、しかも使い勝手のいいビジネスプロジェクターが出てくることによって、今はポテンシャルでしかないこれらの市場を、顕在化させていくことができます。

―― 低価格でありながら、性能やデザイン面でも妥協していませんね。

内田 そのとおりです。安かろう、悪かろうではいけません。EMP―S1では、低価格を実現しているだけではなく、性能や使い勝手、デザイン面でも高いレベルを実現しています。たとえば、明るさでは、98年に発売したELP―5500(84万8000円)が650ANSIルーメンでしたが、EMP―S1では、1200ANSIルーメンを実現しています。ファンノイズも33dBと、ビジネス用プロジェクターとしては静かです。また、短焦点レンズの搭載や多彩なインターフェースなど、使いやすさの面でも徹底しています。

デザイン面でも従来の当社の製品が踏襲してきた箱型から離れて、コンシューマー向けの商品としても選んでいただけるようなスタイリッシュなものを新たに採用しました。

―― プロジェクター市場の拡大という大きな役割を担って登場したEMP―S1は、非常に好調なようですね。

内田 おかげさまで量販店さんから非常に強い引き合いをいただいています。ある販売データでは製品を発売する前にもかかわらず、予約の台数だけで週間売上のトップになりました。そして発売と同時にさらにドライブがかかって、他の製品を圧倒しています。

EMP―S1では、発売記念キャンペーンとして、限定3000台でスクリーンをセットして本体と同じ価格というキャンペーンを実施しましたが、これが特に人気を集めています。ある量販店様では80本を即日完売されたほどです。

また、今までプロジェクターにあまり興味を持っていらっしゃらなかった量販店様でも、プロジェクターを扱っていただけるようにもなりました。EMP―S1を発売したことによって量販店におけるプロジェクターの裾野が広がってきたことを実感しています。

液晶パネルと駆動回路を
統合的に開発できることは
エプソンの大きな強みです

ELP―30が開拓した
ファミリー層のマーケット

―― ホーム用プロジェクター市場の動向についてはいかがでしょうか。

内田 ビジネス市場に比べて、ホームの市場はさらに遅れています。今はまだマニア層から先進的なユーザーへと市場が広がりつつある段階で、一般層への普及はこれからという段階です。

エプソンブランドはプリンターやPCなどの情報機器ではある程度浸透していますが、AVの市場でほとんど知られていません。そこで、ホームプロジェクター市場に参入するにあたって、まずエプソンのビデオプロジェクターの実力を認知していただこうということで、マニア層を対象とした上位機で徹底的に高画質を追求したELP―TW100Hを昨年発売しました。今年からは、これに加えて一般層への市場拡大に取り組んでいきます。

―― 一般層へのホームプロジェクター市場の拡大という意味では、昨年20万円を切ったELP―30を発売されましたが、これを買われているお客様はどういう層の方でしょうか。

内田 ELP―30のユーザー層の特長は、ファミリー層が圧倒的に多いということです。マニア層向けのELP―TW100Hのユーザーは、専用ルームで一人でじっくり見られているケースが大半ですが、これとはまったく異なります。また、年齢層でも、ELP―TW100Hでは40代から50代が中心ですが、ELP―30では、30代〜40代にかけての層と、50代以上の層の2つの山ができています。

―― ELP―30を投入したことによって、新しい客層を開拓できたということですね。

内田 今現在の市場は、マニア層や先進ユーザー層が中心を構成しています。プロジェクターを欲しい人が買っている段階なので、値段は多少高くてもかまわないという考え方をとられているメーカーが多いように思います。しかし、私の見方は違います。ホーム用でも、買い求めやすい価格で使い勝手のいいものであれば、プロジェクターの市場を一般層にまで拡大できる時期にきているように思います。

さきほど話が出たEMP―S1はビジネス用に企画した製品ですが、販売店ではAVコーナーにも置かれています。これは予想外の展開でした。当社では、ELP―30をホーム用、S―1をビジネス用と棲み分けを図ったつもりでした。ところが、お客様の方では同じプロジェクターという捉え方をされていて、ホームシアター用に購入される方もたくさんいらっしゃいます。

これはわれわれにとって、うれしい誤算でした。そして、このような動きを見ると、買いやすい価格の商品を出せば、市場を一気に拡大できる可能性があるという確信を持ちました。使い勝手がよく、価格も安いホームプロジェクターが各社から発売されて、市場が一気に拡がっていくとうれしいですね。

―― エプソンはプロジェクター用の液晶パネルを自社で作られています。これは戦略的な商品展開を図っていく上で、非常に大きな強みですね。

内田 液晶プロジェクターでは、液晶パネルとそれを駆動するための技術の両方が必要です。自社の液晶パネルに最適な駆動技術と自社の駆動技術に最適な液晶パネルを統合的に開発できますので、液晶パネルを他社から購入して、それに合わせて駆動技術を開発する場合に比べて、性能面でも、開発時間の面でも非常に有利です。

また、さきほどお話しましたように、当社には、他社に先駆けて液晶プロジェクターに取り組んできましたので高画質化技術の蓄積があることも大きな強みになっています。

ホームプロジェクター市場の
拡大に向けた強力な商品を
今準備しているところです

商品の価格と使い勝手に
市場拡大の突破口がある

―― 国内のホームプロジェクターの販売規模をどの程度と見られていますか。

内田 調査機関によって見方にばらつきはありますが、今年は5・5万台とか6万台と言われています。しかし、ポテンシャルとしてはそんなレベルではありません。展開の仕方次第ではもっともっと拡大させることができます。

たとえば、インクジェットプリンターの市場規模は、年間500〜600万台あります。それと同じというわけにはいかないでしょうが、潜在的には相当大きいものがあるとみています。当社の中期計画では、自分たちの商品によって市場を広げていくという戦略で作っています。

昨年出したELP―30では「スペシャルに観よう」をコンセプトにしています。これは、たまにバーベキューセットを楽しむように、スペシャルな時に、スペシャルな大画面を楽しんでいただきたいということです。

これと似ているものにビデオムービーがあります。運動会や旅行などといった特別なイベントで使うもので、毎日使うものではありません。価格も決して安くはありませんが、それでも、多くの家庭にあります。プロジェクターもそういうふうに裾野を広げていける商品だと思います。

―― プロジェクターを一般層に普及させていくための課題を、どのようにお考えでしょうか。

内田 ひとつは価格です。一般層にまで浸透させていくためには、当社の製品を含めてまだまだ高すぎます。プロジェクター単体で10万円前後。スクリーンやオーディオとのセットでも20万以下で買えるようにならないと、一般層への普及は進んでいかないと思います。

二点目は少し大げさな言い方になるかもしれませんが、日本ではホームシアター文化がまだできていないということです。テレビはほとんどの世帯に普及していますが、プロジェクターはテレビの延長線上にある商品ではありません。テレビは日常のものですが、プロジェクターは非日常のものです。たとえば、子供の運動会を撮ったビデオをテレビに映しても、大きな感動を得ることはあまりないのではないでしょうか。でも部屋を暗くして、大画面のスクリーンにプロジェクターで投影するとしたら、その過程ですでにワクワクするでしょう。

ホームシアターでもそうです。大画面のスクリーンと5・1chサラウンド音声から得られる感動は、実際に体験していただかないとその良さはわかりません。プロジェクターや5・1chサラウンド音声を体験していない方がほとんどです。一人でも多くの人にその存在と楽しさを知らしめていくかが重要です。

三点目は、設置や接続、調整の面倒さをどうするかです。プロジェクターを天井から吊るそうとすると工事が必要になりますが、費用の問題も含めて抵抗があります。また、使わない時は押入れにしまっておいて、見たい時に引っ張り出すという方法もありますが、そのたびにケーブルをつないだり、調整したりというのも大変です。

これら3つの問題を同時進行的に解決できないと、ホームプロジェクター市場の急速な拡大は難しいと思います。

そこで、当社ではこれらの問題の解決に取り組んでいます。まず価格面では、16:9のアスペクト比をもったホームシアター専用のプロジェクターとしてできるだけ求めやすい価格の実現に取り組んでいます。また、導入の障壁になる設置を簡単にするような技術開発も進めています。

プロジェクターの楽しさを
広く認知させていきたい

―― ホームシアター文化を根付かせるという意味で、プロジェクターの認知度の向上についても精力的に取り組まれていますね。

内田 ホームシアター文化を日本に定着させるためには、プロジェクターという商品があることを知っていただき、実際に体験していただくことが必要です。ところが、一般層の間ではその存在を知らない方がほとんどです。この問題を解決するために、プロジェクターとしては、多分初めてではないかと思われますが、テレビコマーシャルを流したり、各地の集客力のあるスポットでのイベントを展開するなど、積極的にアピール活動を行っています。しかしこれは我々だけの力ではできませんし、時間もかかります。雑誌などマスコミの力も借りながら、プロジェクターのある生活の楽しさ、新しい生活の提案をしていこうと思っています。

―― 店頭でも、一人でも多くのお客様にプロジェクターを体験していただけるような訴求方法を工夫されていますね。

内田 店頭でプロジェクターを訴求する上で一番難しいことは、どうやって映像を見ていただくかということです。プラズマやテレビは店頭に並べておけば見てもらえますが、フロントプロジェクターの場合は明るいところで映しても本当の美しさはわかっていただけません。かといって、暗いところで映すためには専用のスペースが必要になります。これをどうするかということが当面の最大の課題です。

当社でも一般層を対象にしたELP―30では簡易暗室キットをご用意して、一人でも多くの方に、まずプロジェクターの存在を知っていただくための展示方法をとっていますが、マニア向けのELP―TW100Hでは、やはり暗い部屋で見ていただくことが必要です。この問題については、販売店様のご協力とご理解をいただきながら、売り場の中でより快適に見ていただけるスペース作りを行っていきたいと思っています。

―― ユーザー層がマニア層から一般層へと広がっていくと、商品作りに対する考え方も変わっていきますね。

内田 マニアを対象にした高級機とエントリーゾーンを対象とした普及機の商品では自ずと性能や機能で求められるものが違います。

マニアを対象にした上位機では、画質の良さが最優先されます。当社でも、これがエプソンの最高技術だといえるものを展開していきます。マニア層のユーザーは、映像に対する知識が豊富で、自分で好みの画質に追い込んで使われています。ですから、できるだけ画質を細かく調整できるような機能を持たせておかないと、この層では満足していただけません。

これに対して、一般層が使われるエントリーゾーンの製品では、手頃な価格でできるだけ使いやすいことが重要です。そのためには、できるだけ簡単な操作で最適に近い画質がワンタッチで出てくる。そういうものにしないと一般層には広がっていきません。テレビでも冷蔵庫でも洗濯機でもそうですが、普及率の高い商品で、いちいち取扱説明書を読まなければいけないような商品はありません。それぞれのユーザーが求めるものを最大限訴求していきたいと思っています。

―― 薄型で大画面のプラズマや液晶テレビが人気を集めています。そういう意味では、大画面がより身近になっています。これは、もっと大きな画面を楽しめるプロジェクターとスクリーンにとっては追い風ですね。

内田 大型のプラズマや液晶テレビで大画面を体験すると、さらに大きな画面が欲しくなります。今、市場ではプラズマや液晶テレビがブームになりつつありますが、技術やコストの問題から、大画面化には限界があります。また、5・1チャンネルのいいオーディオシステムで、DVDを見ていると、プラズマの50インチ程度だと物足りなくなって、もっと大きな画が欲しくなりますね。

―― スクリーンを上げると、その後ろからプラズマが出てくるというような家庭がありますからね。今回のカジュアルスクリーンはテレビも当然持っている。テレビはテレビで機能していますね。

内田 私はPDPや液晶の大画面のディスプレイとスクリーンとは別物とみています。どちらかがどちらかに置き換わるというものではありません。プラズマや液晶はテレビが大きくなっただけのもので、日常的に見るものです。

これに対して、スクリーンは日常ではなく非日常的な存在です。週末にくつろいで、家族で映画を見るとか、あるいは友達と集まって見たりするものです。ですから、日常使うためのプラズマや液晶テレビと、非日常に楽しむためのプロジェクターは、家庭の中で共存するものだと思います。

ただ、短い期間に区切ってみると、予算の問題などから、先にプラズマを買ってプロジェクターは後で買うとか、今、お金がないので、まずプロジェクターを買っておこうということはあると思います、しかし長い目で見れば、家庭には両方入っていくようになるのではないでしょうか。

―― プロジェクターの価格が10万円を切るようになると、団塊ジュニアの世代を中心としたヤング層とヤングアダルト層を中心にマーケットを一気に大きく膨らませていくことができます。そのための第1波をまず今年の年末に起こし、2005年に大きく花開かせていくというサクセスロードを私は考えています。

内田 今年の年末で小ブレイク、2005年に大ブレイクさせていくという考え方は、われわれが中期計画で考えていることと同じです。実はELP―30で昨年末にその流れをスタートしたつもりでしたが、もっと大きな波を起こしていかなければいけないということですね。

当社では、中期計画を立てて商品化を進めています。昨今の状況を見ると、ホーム用プロジェクターの市場の伸びのペースは、我々が想定していたものより少し遅いように感じていました。昨今の短期的な様子をみているとホーム用は時間がかかるのかと思っていましたが、和田社長が提唱されているカジュアルスクリーンの考え方に大変勇気づけられます。

ただ、これを実現していくためには、プロジェクターメーカーだけが頑張っても駄目です。スクリーンメーカーやオーディオメーカーなどに加えて、販売店や雑誌やマスコミもその気になって一緒にやっていかないと山をつくることができません。

―― ホームシアター市場の拡大に向けた新しい商品の登場が楽しみですね。

内田 今年は家庭用プロジェクター市場の拡大に向けた強力な商品を投入します。今後、ホームシアターを本格的に広げていこうということになりますと、いつまでも4:3のビジネス用と兼用していくわけにはいきません。ホームシアター用には16:9のアスペクト比が必須です。ホーム専用のものが必要になりますので、このEMP―S1とは別に、ホーム専用の製品の開発を進めています。発売時期や価格など詳しいことはまだお話できませんが、是非ご期待ください。

 

◆PROFILE◆

Kenji Uchida

1949年1月26日生まれ。71年3月九州大学卒業。71年4月諏訪精工舎(現セイコーエプソン)入社。90年3月電子機器事業部機器設計一部長。91年2月コンピュータ事業本部 PC開発設計部長。93年10月電子機器事業部事業部長代行。95年4月電子機器事業部長。95年7月新商品プロジェクト副本部長兼電子機器事業部長。95年11月映像機器事業部VI開発設計部長。96年11月映像・デバイス応用機器事業部VD商品企画部長。01年11月映像・デバイス応用機器事業部VD開発設計部長。02年7月映像機器事業部副事業部長。03年4月映像機器事業部長。03年6月取締役映像機器事業部長。