巻頭言

カウンター商法 / 和田光征 WADA KOHSEI

 東京・赤坂に「まめた」という小料理屋があります。鍵の字になったカウンター席のみで(奥に6人程度の個室がひとつありましたが…)10組20人程のお客様に対応しています。酒は各種用意され、料理はおかみさん手製で、良いタイミングで程良い量で、美事に酒とあって小気味いいのです。カウンター内にはおかみさんと女子従業員の二人だけ。カウンター越しに料理を出したり、終わった器をさっと片付け、客と語らいながら手は洗い物をするという具合で、全く無駄がないのです。それでいてお客様は皆笑顔で、全体が素晴しい雰囲気を醸し出しています。

 出かける度にいつも感心しきりでした。小泉さんになって景気がどんどん悪くなる中で、「まめた」のカウンター商法の妙にこうした時代の商売のあるべき姿を見た思いでした。

 カウンター商法を最初から取り入れていたのがヨドバシカメラではないでしょうか。今、何かと話題を提供していますが、カメラオンリーの時代にカウンター商法を導入し、お客様を満足させていました。同店の場合、お客様の導線から商品の展示、販売員さんの配置、どれを見てもカウンター商法です。

 ひとりの販売員さんが多くのお客様の相手をし、その中から購入客に素早く対応する。そして、購入されるお客様には次々と関連商品が提案され、最後には保険までが提案されて終わります。お客様が購入する商品が売価5万円としますと、客単価はいつのまにか7万円位になり、それでもお客様は納得して購入していくのです。単にポイントばかりではないお客様満足があるのです。

 カメラの時代のことです。あるお客様がその使い方が分からず販売員さんに相談しました。すると販売員さんは大声で自分のカウンター前、そしてその周辺にいるお客様達を集め始めました。「この方からこんな質問がありました。今から説明いたしますが、共通した問題を抱えておられる方もあろうと思いますので集まっていただきました」といって、当のお客様はもとより、集まった人達にも説明し、納得させてしまいました。その場にいたカメラマニアの友人が褒め上げ、安心感を強調していたことが印象的でした。

 販売員さんの査定も、一本釣り商法ではなくどれだけのお客様を相手にして、どれだけの点数によって売上げを達成したかで決めるようです。つまり、高付加価値販売を実践して売上げを上げる販売員さんの収入は自然と良くなる仕組みです。

 今、巨艦店が目立ちますが、中身はまさにカウンター商法による高付加価値販売であることを見逃してはなりません。

 多くの販売店が行っているボックス商法、ひとりのお客様にずっと販売員さんが付くというやり方がいかに非効率であるか、肝に命ずべきではないでしょうか。

 藤沢社長の徹底したユーザーオリエンテッドには、従業員の皆さんにもDNA化しているようです。「得意淡然」そのものも感じますから、強さは増幅していくのではないでしょうか。

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