トップインタビュー

(株)WOWOW
代表取締役社長

吉岡義朗
Yoshiro Yoshioka

全社一丸となって組織改革を敢行し
さらに高いブランドイメージの確立へ

「プラズマを買ったらWOWOWできれいな画像を楽しむ」といった、これまでにない強いブランドイメージを構築していきたいと語る同社社長吉岡氏。組織改善をステップアップに、営業力の強化を図りながら、質の高いコンテンツを選び、配信していく技術に磨きをかける。地上波デジタルの本格化で、同社はどんな成長を遂げようとしているのか。吉岡社長に伺った。

インタビュー ●音元出版 新保欣二

デジタルならではの
加入促進の仕組みを
様々に用意していく

お客様も有料放送に慣れ
市場は拡大傾向に

―― 最近の衛星放送ビジネス業界全体の動向をどうご覧になりますか。

吉岡 衛星放送の業界は伸びています。特にこの春のW杯では、スカイパーフェクTVのお客様が増えましたから、市場規模は膨らんでいると思います。お客様も少しづつ有料放送という環境に慣れてこられて、市場も拡大傾向にあると思います。

当社もこの2年間のBSデジタルへの投資が重かったのですが、体質を強化してきたことによって今年からは経営的には安定し、利益を出せるような体質になってきました。まだアナログのお客様は220万名ほどいらっしゃいまして、6年ほどの期間でデジタルに移ってもらう必要がありますが、この2年で約200万台というBSデジタル受信機の販売台数は決して落胆するほどの結果ではないと思います。

W杯の盛り上がりで、機器そのものは昨年の暮れから、好調に売れていますので、今後の成長には期待を持って良いのではないでしょうか。

―― アナログからデジタルへのスムーズな移行が必要なのと同時に、新規加入者も獲得していかなければなりません。

吉岡 BSデジタル受信機の普及はこれからですから、現状ですんなりと入ってもらえるような環境が整っているとは言えません。そういうなかでは、我々の営業のやり方も、従来とは違ったやり方をしなければいけません。

これまでは、ご販売店様でWOWOWのデコーダを購入していただければ、我々の顧客となったわけですが、BSデジタルになりますとそういうハードウェアがなくなりますので、機器を購入したその場で加入していただくケースが少なくなってきています。つまり、お客様はご販売店様でチューナーまたはテレビを購入されて、家に帰って使ってみてから加入するかどうか決めるケースが多くなっているんですね。

そういう環境では、新しいお客様の獲得の方法も含めて、我々の加入者獲得の手法も大きく変えていかなければいけません。

ここはまだまだ工夫の余地があって、本格的に立ち上がるのはこれからだと思っています。そういう意味では、デジタルWOWOWの加入者獲得は計画通りには進んでいないのが現状です。

しかし、徐々にその差は縮まってきていまして、そろそろプラスに転じるころだろうと思っています。

これまで以上のブランド力を
身に付けていくことが重要

―― BSデジタルの契約で、一番の障害になっているのは、購入後にお客様自身が申し込まなければいけないということですか。

吉岡 障害は2つあると思います。ひとつは、ご販売店様がチャンネルの多さに戸惑われて、まずはBSデジタル対応のテレビおよびチューナーをどうやって売っていくかということに、注力し過ぎた感じがします。ですから、接客をしていても、番組の話までをお客様にお伝えすることできなかったのでしょう。立ち上がり当初は売り方も含めて、どうしたら良いのかと随分戸惑われたのではないでしょうか。

しかし最近は、お店へ行っていただくとわかりますが、ご販売店様のほとんどはBSデジタルを積極的に訴求する形で販売しています。その売り方も定着してきたので、そのなかでWOWOWを勧めてもらうという環境は以前よりも随分と良くなってきています。

それからもうひとつは、以前よりもチャンネル数が格段に増えたことが挙げられます。最近はBSに加えCSもあり、すぐにWOWOWに入っていただける確率は以前に比べて厳しくなっています。

やはり競合の環境にあるわけですから、それらに対してどう対応するべきか、これは今後の課題ですね。

―― そうした課題に対しての対策は何か行っていらっしゃいますか。

吉岡 例えば、テレビを買われるとハガキが付いていますので、WOWOWのハガキで申し込んでいただくと、自宅にテレビが据え付いた時から、15日間は無料でWOWOWのプログラムをご覧になれるというような15日間無料体験を行っています。

それから、従来ですとWOWOWに加入されていない方がWOWOWの有料のチャンネルに合わせますと、「このチャンネルは契約されていません」というメッセージしか出てこなかったのですが、最近の放送の機能を使いますと、そこでWOWOWの加入に関連する情報、電話番号などが表示されたり、WOWOWのプロモーションチャンネルにつながって、そこからすぐにご加入していただけるような仕掛けづくりもしています。

11月からはデータ放送のチャンネルを使用して、加入されていない方がいろいろな情報を、動画で楽しめる、ご覧になれる機能を盛り込んだデジタルWOWOWプロモーションチャンネルを開始し、お客様の加入意欲を膨らませていきたいですね。

一方で、WOWOWのブランドをもっと強化していきたいと考えています。テレビを買ったらWOWOWに加入してハイビジョン放送を楽しむ。プラズマを買ったらWOWOWできれいな画像を楽しむといった、これまでにない強いブランドイメージを構築していきたいと思っています。

新しく入られる方に対しては、もっともっと鋭い切り口で訴えかけていく必要がありますね。

家族全員が安心して見られる
良い番組を取り揃える

―― はた目から見ると、御社にはとっても良い追い風が吹いているように感じます。プラズマテレビや大型の液晶テレビで、「大画面で映画やスポーツといった2大コンテンツを見たい」といったお客様は確実に増えているでしょう。そうすると当然、御社はメインに、その2大コンテンツを押さえていらっしゃるから、非常に良い環境でビジネスを展開されているのではないかと思います。

吉岡 基本的にはそうですね。ブランド力も含めて好位置にあることは事実ですが、110度CSデジタル放送が登場し、ブロードバンドなども急成長していますので、常にどう戦い抜いていくかを考えていく必要はありますね。

いずれにしても現在は、加入されたお客様の前に、突然100チャンネル以上が現れて、お客様としてもどうしたら良いのかわからなくなっているのが現状です。これからは、見るチャンネルも絞られてきますし、家族全員が安心して見られるようなチャンネルが選択されていくことでしょう。

―― そうですね。成長マーケットは必ず競合がいっぺんに参入してきますから。

吉岡 ですから、ラジオやテレビ欄にも番組内容を記載して、アクセスの向上を図り、他社との差を大きく広げていきたいと考えています。やっぱり良い番組をどれだけ揃えられるかが大切で、その成果は現在の当社のお客様の数に裏打ちされていると思っています。

組織改善で全社的に
さらなる新規顧客獲得を

―― 今回組織を思い切って変えられて、全体の効率化と営業の強化をされていますが、その狙いはどこにあるのでしょうか。

吉岡 これは最重要項目でした。メーカー系と量販系のご販売店様に対して、それぞれに専任を立てて、効率的かつ的確な営業をしていただきたい。それから、ケーブルテレビにおけるさらなる顧客獲得、新しい顧客獲得ルートの開拓などが挙げられます。そういう潜在的なお客様の獲得の場を広げていく必要も含めて組織の改善に取り組みました。

これまでは、営業と放送の間で、必ずしも強い絆で全体が動けていたかというと、そうは言い難い部分がありました。そこで、WOWOWのブランドイメージやWOWOWの番組をいかに効率良く効果的に認知してもらい、それで加入動機を作ってもらうために、いろいろな知恵を各部署で共有できるような体制に改善いたしました。

具体的には、インターネット、携帯電話、その他いろいろなメディアを、それぞれのお客様に向けてどう使い分けたら良いか。番組全体に対してやるのか、それぞれ番組に対してやるのか。放送ごとにやるのか、お客様の階層別に、様々な情報を提供していくべきなのかなど、いろいろな形で統合的に考えて、戦略を打ち出していきたいと考えています。

それから話題づくりも重要ですね。インターネットなども含めてやっていく必要があると思います。そういう意味では、プロモーションを中心にして全体でもっと力強く外にいろいろなことを打ち出せるようにしていきたいという大きな狙いがあります。これによって、ブランドイメージの向上や、加入の促進ができるようになれば大成功ですね。

地上波デジタル化の本格化で
値下げが進めばさらに有利に

―― 御社には他社との差別化を図るメディアとして、もの凄い発行部数を誇る番組ガイドもあります。そうしたメディアを有効に活用していくことができるのはある意味で、他社と比較して大きなアドバンテージですね。

吉岡 WOWOWのプログラムガイドは、毎月契約者だけに配るわけで、その数は当然260万部にまで及びます。そこに広告を載せたクライアントさんからも好評で、大変な宣伝効果があるといったお褒めの言葉をいただいております。

ほかのメディアに比べて、ターゲットが明確で、お客様の層が経済的に余裕があり、趣味などにお金を費やされる方が多い傾向にあります。こうしたメディアを使ったお客様とのコミュニケーション、また広告による異業種様とのコラボレーションを武器にしたブランドイメージの確立は、今後も積極的に行っていきたいと考えています。

―― 来年から地上波のデジタル放送が3大都市圏でスタートします。今までBSデジタルはハイビジョン、高画質、5・1ch、高音質、コンテンツというところが他との最大の差別化になっていました。そこに対して今度は地上波がデジタル化して、そのうちプライムタイムの半分はハイビジョンでいきましょうとかいう話になるわけです。そこでの御社の地上波との競合関係の変化というのは、どういう形で出てくるのでしょうか。

吉岡 地上波がデジタル化したからといっても、チャンネルを増やすことはないでしょう。チャンネル数は同じでハイビジョン放送が多くなるということだと思うんですね。そうなると、広告付きの放送と、広告のない映画もしくはその他のコンテンツに特化した放送という区別になるのではないでしょうか。そこでの差別化としては、最先端のものをご覧になっていただけるように今後も努力していきたいですね。2004年から2005年にかけて地上波のデジタル化が本格化すれば、機器もグッと安くなって台数も出るでしょう。そこが勝負どころとなりそうですね。

 

Yoshiro Yoshioka

1942年3月2日東京都生まれ。1964年3月東京大学工学部電子工学科卒業後、同年4月富士通株式会社に入社。1992年6月取締役オープンシステム事業本部長、1996年6月取締役コンピュータ事業本部長1997年6月常務取締役コンピュータ事業本部長、1998年10月常務取締役企画本部長、2000年6月当社取締役副社長を歴任。2001年6月株式会社WOWOW代表取締役社長に就任し、現在に至る