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TA-DA3200ES

SONY
TA-DA3200ES

¥95,000(税抜)

発売:2006年11月21日
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“広帯域アナログパワーアンプ”を搭載したAVアンプ

ビジュアルグランプリ2007 ≪銅賞≫受賞モデル

ビジュアルグランプリ2007 ≪ホームシアター大賞≫受賞モデル

ビジュアルグランプリ2007 SUMMER ≪AVアンプ(普及タイプ/15万円未満)部門≫受賞モデル

【SPEC】●実用最大出力:フロント150W+150W、センター150W、サラウンド150W+150W、サラウンドバック150W+150W ●定格出力(20Hz〜20kHz、8Ω):フロント120W+120W、センター120W、サラウンド120W+120W、サラウンドバック120W+120W ●高調波歪率(2ch.STEREO時):フロント0.09%以下(4/8Ω負荷)120W+120W(20Hz〜20kHz) ●周波数特性:10Hz〜100kHz ±3dB(8Ω) ●SN比:LINE 96dB(サラウンド、EQ全てOFF) ●入力端子:音声LR×9、PHONO×1、ビデオ×5、S映像×4、コンポーネント映像×3、HDMI×2、デジタル光×5、デジタル同軸×3、マルチチャンネル×1 ●出力端子:音声LR×2、REC OUT×2、PRE OUT×1(7.1ch)、映像モニター×1、S映像×1、S映像モニター×1、コンポーネント映像×1、デジタル光×1、HDMI×1 ●消費電力:480W ●外形寸法:430W×175H×430Dmm ●質量:約15.5kg

※原則として製品発表時のデータを掲載していますので、内容・価格は変更されている場合があります。また、この製品データベースには生産・販売を休止したモデルの情報も含まれています。

テストレポート

今年になってからAVアンプの話題が寂しい状況が続いていたが、そんな不満を吹き飛ばすような強力なアンプが、この秋ソニーから登場する。

外見からわかる通り、TA-DA9100ESやTA-DA7000ESの流れを汲むESシリーズの7チャンネルアンプだが、大きな違いはパワーアンプ回路がアナログアンプで作られていることである。普通に考えれば、上位機種で高い評価を得たデジタルアンプを投入するというシナリオを期待するが、なぜそうしなかったのだろうか。

上位2機種はソニー独自のデジタルアンプ「S-MasterPRO」のメリットを最大限に活かした名機だが、本機の価格帯で同じことを実現するには、まだデジタルアンプ作りのコストがこなれていない。そこで、豊富なノウハウの蓄積があり、コスト面でも有利なアナログアンプ方式を、本機については採用したということらしい。

しかし、従来方式のアナログアンプをそのまま流用することはあえて避けている。それどころか、デジタルアンプの音を追い込む過程で得た様々なノウハウを導入して基本性能を見直し、新しいアナログアンプを作り上げてしまったのである。設計者の言葉を借りれば「デジタルアンプを作った耳が設計したアナログアンプ」だという。

言い換えれば、デジタルアンプの良さをもつアナログアンプの開発に挑戦したということだ。この目標設定が意味することは、実は非常に大きい。

デジタルアンプの良さと一言で片付けてしまったが、実はいろいろな要素がある。筆者自身もデジタルアンプを愛用しているのでよくわかるのだが、特に低域のレスポンスが速いことと、空間の見通しがいいことが大きなメリットである。それをアナログ方式のアンプでどうやって実現するのだろうか。新しいアナログアンプ作りに、どんな視点を加えればいいのだろうか。

アプローチとして、大きく次の二つが実行された。まず、出力素子の発熱に由来する熱遅延歪みに着目し、位相の乱れを抑える方向で工夫を凝らすこと。具体的には負帰還をかける帯域を広げたり、負帰還量そのものを減らすことによって、高域で発生しやすい位相のずれを抑えることに成功した。ソニーは、この新設計の回路を広帯域パワーアンプと呼んでいる。

もう一つのアプローチは電源の強化と、きめの細かい制振である。このクラスとしては常識はずれに大きい電源トランスを積む本機は、ヒートシンクのサイズにも余裕がある。ヒートシンクと前段アンプ基板の間に専用のステーを配して共振を制御するなど、上位機種で採り入れたノウハウも活きているし、底板にリブを追加してシャーシ剛性を上げるなどの工夫もうかがえる。一つ一つの対策は地味なものだが、アナログアンプ時代に培った知恵と、デジタルアンプの開発を通じて得たノウハウが巧みに混ざり合っているところが実に興味深い。

機能面では、音場補正システム「DCAC(Digital Cinema Auto Calibration)」の採用、2入力1出力のHDMI端子の搭載などが注目すべき点である。DCACはモード変更ごとに測定しなおす必要がなくなり、使い勝手が改善されている。また、リモコンの「A direct」ボタンを押すとプロセッサー処理をパスするアナログ入力に優先的に切り替わるなど、使い勝手の面でも音質最優先の配慮がうかがわれる。

試作機の音を聴いた瞬間に感じたことは、デジタルアンプで体験した「低音の速さ」である。立ち上がりが速いということは音色が正確に表現できるということでもあり、音が空気中に放たれる瞬間の大きなエネルギーの存在を漏らさず聴き取れることを意味する。楽器を弾く人ならすぐわかると思うが、音の立ち上がりが狙い通りに出るかどうかは非常に重要な要素であり、演奏のテンポ感やリズムの鮮度を大きく左右する。TA-DA9100ESをはじめとするソニーのデジタルアンプはそこを確実に押さえていることに感服したが、本機の音には同じ爽快感があり、空間の見通しの良さも群を抜いている。その点だけでも、価格を大きく上回る価値を見出すことができる。

(山之内正/「AVレビュー(2006年9月号)」より転載)