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DSP-Z9

YAMAHA
DSP-Z9

¥500,000(税抜)

発売:2003年12月中旬
このモデルは生産を完了しています
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すべてをやり尽くした最高峰AVアンプ

ビジュアルグランプリ2004 ≪銀賞≫受賞モデル

ビジュアルグランプリ2004 ≪AVアンプ部門トップ賞≫受賞モデル

オーディオ銘機賞2004 ≪マルチチャンネルアンプ部門≫受賞モデル

【SPEC】●定格出力:フロント 170W+170W、センター 170W、サラウンド170W+170W、サラウンドバック170W+170W、プレゼンス 50W+50W ●入力端子:アナログ音声信号×15、デジタル音声信号(光)×8、デジタル音声信号(同軸)×3、AC3-RF×1、パワーアンプ入力×7ch、コンポジット映像信号 S映像信号×8、コンポーネントビデオ×3、D-ビデオ×3 ●出力端子:アナログ音声信号SPEAKER OUT×9ch 11端子、アナログ音声信号PRE OUT×9ch、アナログ音声信号サブウーファー×2ch、アナログ音声信号REC OUT×5、アナログ音声信号ZONE2 OUT×1、デジタル音声信号(光)×3、デジタル音声信号(同軸)×1、MONITOR OUTコンポジット映像信号 S映像信号×1、MONITOR OUTコンポーネントビデオ×1、MONITOR OUT D-ビデオ×2、REC OUTコンポジット映像信号 S映像信号×3、ZONE2 OUTコンポジット映像信号 S映像信号×1 ●外形寸法:435W×211H×471Dmm ●質量:30.0kg

※原則として製品発表時のデータを掲載していますので、内容・価格は変更されている場合があります。また、この製品データベースには生産・販売を休止したモデルの情報も含まれています。

テストレポート

ピュアオーディオ用のアンプとしても使える

いうまでもなくAVアンプはステレオの音楽再生に利用する機会も多く、各社のAVアンプは音質への気配りの深さを競ってきた。本機はその思想をさらに徹底し、音の純度にとことんこだわる回路構成と装備を積む。まず、専用入力まで設けて「2chピュアダイレクトモード」を新設。すべてのデジタル回路をパスし、アナログアンプと同じ条件でパワーアンプに信号を送り込む。SACDなどマルチチャンネル入力についても、専用端子こそ設けていないが、2ch同様にデジタル回路を通らない最短経路を用意している。アンプ内部ではバランス伝送方式を採用しているので元来ノイズの影響は受けにくいのだが、ピュアダイレクトモードでは、ディスプレイやデジタル回路の動作を停止し、万全を期している。ステレオ再生時は、DSPを経由しないステレオダイレクトモードも利用できる。デジタル入力に新たにi.Link端子が追加されたことも特筆すべき点のひとつ。

アンプの基本性能を向上させる工夫も半端ではない。内部写真を見れば明らかなように、本機はDSP-AZ1とは大きく異なるシャーシ構成を採用している。中央に大型のトロイダルトランスとブロックケミコンを配し、パワーアンプブロックを左右に振り分けた対称配置を導入。肉厚の鋼材でシャーシのフレームを構成し、堅固な構造を実現した。この変更に伴って、リアパネルの端子配列も大きく変わっている。

本機のパワーアンプは、定格出力170Wのアンプを7チャンネル分搭載し、さらにプレゼンス用アンプ(定格出力50W)を2チャンネル分内蔵する。プレゼンスチャンネルは、DSP-AZ1でフロントエフェクトと呼んでいたものである。サラウンドバック用アンプも本機は2チャンネル分を用意し、7.1チャンネル再生への完全対応を果たした。さらに特筆すべきフィーチャーのひとつが、付属マイクと内蔵テスト信号を利用した独自の視聴環境最適化システム、「YPAO(Yamaha Parametric Room Acoustic Optimizer)の新搭載である。測定と設定の内容は、結線と位相の確認、スピーカーのサイズ設定、距離、周波数特性、チャンネル間レベル調整の5項目で、完全自動モードでの動作のほか、各項目を個別に手動でコントロールすることもできる。

心臓部のDSP回路は、ヤマハのYSS930を8個搭載し、処理能力を大幅に強化した。DSPの内部処理周波数のサンプリングをすべて96kHzに対応させてワイドレンジ化を実現したほか、シネマDSP処理の初期反射音データを従来の3倍に拡大。周波数の拡大と併せて、DSP-AZ1に比べて最大6倍の処理能力を身に付けることになった。音場創成技術は、演算精度とデータ量が向上するほど自然な効果が得られるもの。今回の演算パワーの増強は、シネマDSPの音質改善に大きく貢献することが期待できる。

映像プロセッシング機能は、一体型AVアンプへの搭載はきわめて異例であり、注目に値する。480iから1080iなど、映像入力信号のアップコンバージョン機能を含む多機能なデジタル映像処理回路を積み、画質調整の範囲を超えて、画質改善を目指す本格的な内容だ。解像度変換の性能を確保するために、アナログデバイセズのNSVビデオエンコーダー、TrueLife(TM)Enhancer対応のファロージャDCDiをそれぞれ導入し、ジッター補正を行うTBCまで搭載している。画質調整項目はシネマ、スタンダード、ダイナミックの各モードで輪郭強調、ノイズ除去など計5つのパラメータを用意し、調整結果はユーザーメモリーに登録することができる。

さて、肝心の音である。本機の音を3つのキーワードで表すとすると、静けさ、深さ、緻密さに集約できるだろう。力強さ、瞬発力にも明らかに余裕が生まれているが、それ以上にこの3つの言葉で表現すべき世界が広がっている。ピュアダイレクトモードでCDを聴くと、聴感S/Nの高さがこれまでのAVアンプのそれと大きく異なることに気付く。音が出る前の一瞬の静寂、緊張感のみなぎる息遣いが感じられ、弱音も一つ一つの音符にしっかり表情が乗ってくる。音楽のダイナミクスを表現するうえで、弱音をどこまで繊細に表現できるかが、大きくものをいうのである。映画の再生音は、3次元空間の広がりと深さに加えて、サウンドデザインの緻密さを実感することができた。デコード精度とアンプの基本性能をかねそなえたアンプは、これまで聴こえてこなかったいろいろな音に気付かせてくれるものだが、本機もその例外ではない。聴き手が意識しなくても、聴き慣れたソースから新鮮な発見が浮かび上がってくる。聴き込むほどに、技術者が思い描いた「理想」の音が見えてくるアンプである。

(text:山之内正)