製品批評

Vol.329
毎週水曜更新 2008年12月10日号(12/3発行)

高精度なデジタル情報読み取りのために自社開発の高剛性メカニズムを搭載

文/井上千岳プロフィール

製品名

ディスクの信号をそのまま取り出してきたような印象

製品画像

<上>アナログ出力はRCAとXLRを装備している<下>東京インターナショナルショウで展示されたオリジナルメカ

ラックスマンでは1997年にD-10、翌年にD-7を発売して以降、デジタルプレーヤーは専らユニバーサルタイプを扱ってきた。本機は実に10年ぶりとなるSACD/CDの2チャンネル専用モデルである。

SACDのドライブメカはどこからも入手できなくなっているのが現状だ。そこで国産各社はほとんど自社製の開発に踏み切った。ラックスマンも同様で、ここではオリジナル高剛性メカLxDTMが初めて搭載されている。メカニズム全体を角材シャーシによって囲うボックス構造。アルミダイキャスト製の薄型ローダーにシーリングシャッターも備え、外来ノイズからの遮音にも完璧を期した設計である。また全体の機構は、ループレスシャーシとシールドシャーシの複合構造とし、磁界の発生やデジタルノイズから回路を遮断している。

異例といってもいいほどの静寂感と、その中にぎゅっと芯の詰まった密度の高い質感が描かれるのが、ラックスマンのアンプを連想させる音調といっていい。S/Nの高さが際立ち、ディスクの信号がそっくりそのまま取り出されてきたような印象がある。特に音場のアンビエンスが明瞭に感じられるのが、S/Nの裏付けでもある。

アカペラは声の質感が引き締まって、また弾力的な厚みも備えている。そしてそこから豊富な余韻の広がってゆく様子が明らかだ。残響ばかりで質感のはっきりしない見せかけの音場感とは全く違う、次元の高い空間性がここにある。バイオリンでも同様で、弓をぎゅっと弦に押し付ける粘りの強い音色や、ピアノの厚い低音部が濁りなくそのまま出てくる。そしてピンと張り詰めたような緊張感の高い空気の中に、陰影に富んだ演奏が展開されるという再現性である。極めて求心力の高い鳴り方というべきだろう。

オーケストラは緻密なディテールを練り上げてトゥッティの爆発力にもってゆく感触で、大音量でもその基底に細部が丁寧に積み重なっている。そうした緻密さが音楽の彫りを深めているのである。

<この製品の情報は「オーディオアクセサリー」131号にも掲載されています>

スペック

●対応ディスク:2チャンネルSACD、CD ●アナログ出力:アンバランス 1系統、バランス 1系統 ●デジタル出力(※44.1KHz、CD/CDレイヤーのみ):同軸 1系統、光(TOS-LINK) 1系統 ●デジタル入力 (32, 44.1, 48, 88.2, 96KHz対応):同軸 1系統、光(TOS-LINK) 2系統 ●外形寸法:440W×153H×400Dmm(端子/ノブを含まず) ●質量:23.0kg ●問い合わせ:ラックスマン(株) TEL/045-470-6991

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