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「WWDC20」発表から考察

macOSとiOSはどう進化・融合していく?アップルの“さじ加減“に注目

公開日 2020/06/26 12:34 山本 敦
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Safariはさらに安全・安心なブラウザに進化する

2003年に発表されたアップル純正のブラウザ「Safari」も、macOS Big Surで大胆に生まれ変わる。まず基本的な進化ポイントとして、ブラウジングの高速化と消費電力効率の向上がある。またスタートページのパーソナライゼーション機能、テキスト翻訳エンジンの組み込みなど興味深い新機能も盛りだくさんだが、本稿ではプライバシー機能の強化について注目してみたい。

Cookieをはじめとするトラッキングテクノロジーは、ユーザーがインターネットを利用する際の利便性を向上する技術として普及してきたが、近年では過度なトラッキングがほころびになってプライバシー侵害を引き起こし、セキュリティリスクの要因にもなることが指摘されている。

Safariのプライバシー保護機能の特徴を語るフェデリギ氏

アップルでは数年前、独自に開発した「インテリジェント・トラッキング防止機能」を発表し、Safariに組み込んだ。macOS Big Surでは、新しいプライバシーレポート機能をSafariに搭載する。訪問したウェブサイト全体を対象に、閲覧保護の状況を可視化するツールだ。

ユーザーはこのプライバシーレポートを確認することで、頻繁に訪れるウェブサイトに、どういう形でトラッキングテクノロジーが組み込まれ、自身のデータがどのように利用されるのか、目で見て確認できるようになる。認識した上でなお、そのサイトのコンテンツやサービスを利用するか判断させることで、インターネットセキュリティの自己管理意識を広く根付かせようというアップルの意図が伝わってくる。ウェブサイトやインターネットサービスの開発者が、改めてセキュリティリスクに関心を向けるきっかけにもなるだろう。

Safariのプライバシーレポートを使うと、そのWebサイトで利用されているトラッキング情報が表示される

Safariの機能拡張サービスも、次期macOSでは一段と強化される。デベロッパーはアップルが提供するWebExtentsion APIを活用して、他のブラウザ向けに開発した機能拡張を、Safariへ容易に移植できるようになる。またMac App StoreでSafariの機能拡張ツールを目的別、カテゴリ別に分けて紹介するページも充実させる。Safari向けに揃う機能拡張ツールについては、ユーザーがこれを使用するサイトとタイミングなど、アクセスを許可する条件を細かく指定できる仕様も盛り込まれる。

デベロッパーはWebExtension APIを活用してSafari向けの機能拡張を開発し、App Storeから配信できるプラットフォームが整う

フェデリギ氏は基調講演の壇上で「カスタマイズ性に富むだけでなく、ほかのブラウザと比べてとても安全」であることをSafariの特徴として挙げながら、他社製ブラウザに対する優位性を繰り返しアピールしていた。

アップルが他社との違いをつくりだせる、融合と描き分けの“さじ加減”

アップルはWWDCの基調講演で、今後Mac向けに、ARMアーキテクチャをベースにした独自のSoC「Apple Silicon」を開発することを発表した。

ティム・クックCEOがApple Siliconの開発を発表した

開発者向けに提供する統合開発環境開発の「Xcode 12」には、現在のMac製品に搭載されているインテルのSoCと、将来のApple Siliconの開発環境をシームレスにつなぐ新しいワークフレーム「Universal 2」が用意される。また年末の出荷を予定するApple Silicon搭載Macで、インテルプロセッサー向けに開発されたアプリを動かせるようにするトランスレーター「Rosetta 2」も揃える。複数年をかけて徐々にメインSoCを移行するあいだ、ユーザーが安心してMacを選択できる環境が整っているというわけだ。

iPad向けアプリをmacOSに移植する開発ツール「Mac Catalyst」も本格的に機能し始めている。macOS Big Surには、基調講演でデモが行われたメッセージやマップのほか、アップルの9つのネイティブアプリがプリセットされる。

Mac Catalystのテクノロジーによって開発された9つのアプリがmacOS Big Surにプリインストールされる

外部デベロッパーが開発したアプリもiPadからmacOS対応へ、Mac Catalystを使って続々と移植を進めている

筆者はiPad Proの「GoodNotes」で、Apple Pencilを使って下書きをした原稿をMacでファイルに起こしている。iCloudアカウントでひも付けた状態で、それぞれのデバイスがネットワークに接続されていれば、iPadから手書きの原稿ファイルをAirDropなどを使って転送する手間もなく、ファイルの内容がいつも自動的に最新の状態に保てる。iOSとmacOSで共通のアプリが使えるようになると、特にビジネス系のユーティリティアプリは利便性が高まりそうだ。

このように、デベロッパーがiOSとmacOSの垣根を越え、柔軟にアプリやサービスを開発できる環境が整備されるわけだが、そこには各ハードウェアの特徴を活かしたユーザーインターフェースや独自機能の作り込みについて、柔軟に対応できる余地が残されるのだろうか。

例えばMacの場合は、アプリのウインドウをリサイズできたり、キーボードショートカットが使えるメリットがある。Apple Pencilによるペン入力に対応することがiPadならではの魅力だ。ユーザーインターフェースなど共通の優位性を作り出せる部分は上手に融合させながら、切り出し、育む。反対にデバイスの特色を巧みに描き分けながら、それぞれの強みを際立たせる。

アップルの “さじ加減” は、macOS Big Surを含む、WWDC20で発表された新OSをこれから評価する際、最も注目すべきポイントになると考えている。

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