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ビクタースタジオがセレクト!エンジニアが唸るこの1枚 −「Watching from Above VOL.1/KOKIA」

2016/04/22
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Watching from Above VOL.1/KOKIA
WAV/FLAC 192kHz/24bit ¥2,160(アルバム)/¥540(単曲)
http://hd-music.info/album.cgi/9874


今回のセレクトは、「Watching from Above VOL.1/KOKIA」。「ボーダーレスな歌声」と称される変幻自在なその表現力で、国内は勿論、ヨーロッパやアジア圏を中心とした海外でも絶大な支持を得ているKOKIAさん。本作の担当エンジニアは、ビクタースタジオ・401スタジオの主として誰もが周知の国民的バンドを支え続けているビクタースタジオのチーフエンジニア、中山佳敬(よしのり)。「魂の歌声」や「神の声」と絶賛されワールドワイドに活躍するKOKIAさんと、満を持して登場したビクタースタジオのエースとのコラボが実現した自信作だ。

ビクタースタジオ自らが作品の企画・制作に参画する「Do・Live(ド・ライブ)」の第三弾として、2016年4月20日に「VICTOR STUDIO HD-Music.」より独占配信された本作は、レコーディングからミックスダウン、マスタリングまでの工程を192kHz/24bit以上のフォーマット(レコーディング、ミックスダウンは32bit)で一貫した作業が行われたハイレベルなハイレゾ作品。以前にもお伝えしたが、現状はまだまだ192kHzやDSDのレコーディング環境が未整備。今回も事前の詳細な打ち合わせと演奏の編成により、オール192kHzが実現できたのだ。

レコーディングは、ビクタースタジオの301スタジオ。現在8つあるビクタースタジオの中で一番大きく、世界的にも最大級の規模を誇るスタジオだ。大編成楽器を同時に鳴らした時でも自然に飽和せず音が混じり合うようなナチュラル・アンビエンスで定評あるその空間を、独創性豊かなマイクアレンジで、ほぼ“一発"でプレイされた緊張感溢れる演奏を余すことなく収録している。

曲を聴いた途端、心奪われる歌声とその多彩な表現力に圧倒されるのは言うまでもないが、加えて、録音時の雰囲気や空気感、その場の息遣いまでもが聴こえ感じられる仕上がりになっているのが何と言っても圧巻。ボーカルや各楽器の音色にこだわり、バランスづくりに尽力するだけに留まらずに、その楽曲の持つ方向性をレコーディング時の音場とともにあくまでも自然にサウンドメイクしているのだ。演奏している「様(さま)」が目の前に浮かんでくる、まさにゾクゾクとしてしまう至極の仕上がりだ。

変幻自在でボーダーレスとも称される歌声とシンプルで心に残るメッセージ、JAZZを軸にしながら様々なエッセンスを盛り込んだ多彩なアレンジ、そして演奏は勿論、空気感や雰囲気までを収めたサウンドメイク、ハイレゾだからこそ感じ取れる魅力の詰まった逸品だ。




中山佳敬 氏
ビクタースタジオ所属のレコーディングエンジニア。現在はビクタースタジオのチーフエンジニアとして従事。

1992年ビクタースタジオに入社後、ロック、ポップス系のアーティストを中心に数多くのセッションに参加。2006年よりサザンオールスターズを担当、以降はビクタースタジオの「顔」である401スタジオの主としてサウンドメイクをサポートし続け、その合間に最上階から若手エンジニアの仕事っぷりを監督・指導している。

スタジオワークのスタイルは、アーティストやプロデューサーと共に創り上げる“クリエイト”派。アイデアの多彩さと許容量の広いその人間性から多方面より絶大な支持を得る。柔らかいその物腰とは裏腹に、過激で個性的なサウンドメイクも引き出しの一つ。

元「ローリング族」(?)で、今でもマニュアル車にこだわる無類の車好き。壊した車、乗った車は数知れないが、「ロータス・ヨーロッパS」のオーナーだったことは大きな自慢とチョットの後悔。

最近の趣味は息子たちとのFly Fishingと愛犬の散歩。新し物好きで、常にニューリリースのマイク・エフェクターをリサーチ&トライ。子供の頃からの夢だったレコーディング・エンジニアを、今でもブレることなく純粋に貫き通す、ビクタースタジオの“エース”エンジニア。

<中山氏からのコメント>
このお話を頂いた時、私自身もハイレゾ、それも192kHzでレコーディングできる環境というのはなかなかないのでKOKIAさんはまさにうってつけのアーティストだと思い楽しみにしていました。そして今回、初めてKOKIAさんとレコーディングさせていただきましたが、彼女のその素晴らしい声と音楽の表現力に驚かされました。私が普段から心がけている”クリアで抜けのいい音”と、今回のJAZZアレンジのカバーコンセプトもうまくハマったと思います

レコーディング自体もとてもスムーズかつアットホームに進み、その雰囲気までうまくパッケージできたと思います。ミックスではレコーディング時の空気感を損ねることなく、なるべく細かくまとめることを避け、楽曲の素晴らしさ、そして録っていた時の”想い”をそのままカタチに残せるよう心掛けました。ぜひ「Do・live」で歌の表現力と生演奏のニュアンスをお楽しみください。


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