HOME > レビュー > ビクタースタジオがセレクト!エンジニアが唸るこの1枚 −「11/paris match」

ビクタースタジオがセレクト!エンジニアが唸るこの1枚 −「11/paris match」

2015/12/24
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

11/paris match

WAV/FLAC 96kHz/24bit
http://hd-music.info/album.cgi/8417


今回のセレクトは、以前にもこのコーナーで取り上げた、ハイセンスでポップなユニット「paris match」のオリジナル最新アルバム、「11/paris match」だ。今作も、レコーディングからミックス、マスタリングの全てが96kHzベースで作業が行われている。

前回にもお伝えしたが、基本となるレコーディングとミックスはメンバー兼サウンドメーカーの杉山氏所有のスタジオで、ブラスやアコースティックベース等の録音はビクタースタジオの302stで行われている。生楽器は響きや音響空間を生かしてチューブマイクやビンテージ機材が豊富に選べるビクタースタジオで録音し、時間の必要なベーシックや微細な調整が必要なミックスでは耳馴染んだプライベートスペースで録音…と、ポイントごとに非常に効率的且つ効果的にスタジオを使いこなしているのだ。

1曲目の「Theme of 11」では、「11(イレブン)」つながりでかつての伝説深夜番組パロディー風のコーラスを入れる杉山さんのユーモアのセンスに“ニヤッ"とさせられたかと思うと、2曲目ではお待ちかねの「paris matchサウンド」の核である絹のような透き通ったミズノマリさんのボーカルに包み込まれたり…とまあ聴きどころ・伝えどころは満載だが、とにかく、いつもの「鉄板」の仕上がりだ。「いつも通り」と言い換えてしまうと“手なり"的で簡単なように感じてしまうかもしれないが、高いサウンドクオリティーで作品創りをキープするのは、実はとても難しい。常に前作や既作とは変えていかなければいけないとか、毎回何か新いアプローチをしなければいけないとか、いわれのない強迫観念的なものに圧迫され、本来のスタイルや基準となる枠を逸脱して「やり過ぎ」たり「行き過ぎ」たりしてしまうケースが多々見受けられる。

しかしこのプロジェクトでは、アーティストとレコーディングエンジニア、そしてマスタリングエンジニアが強固な信頼関係で繋がっているが故、それぞれの持ち分で最高のパフォーマンスを発揮し、良い意味でお互いの枠やスタイルをきっちりとキープ出来ているのだ。まさにこれこそが「プロフェッショナル」同士の仕事による究極の完成度なのである。

音が出た瞬間の「待ってました!」感に更に磨きの掛かった、これぞ絶対の間違いのない一作だ。




谷田 茂 氏
ビクタースタジオ所属レコーディングエンジニア。
バークリー音楽院出身の音楽理論もベースに持つ逆輸入型。英語と関西弁ペラペラ。J-POPからキャリアをスタートし、今ではオリコントップ10の常連。ポップス系では無二の存在。加えて、その仕上がり高さから、様々なプロジェクトやアーティスト、プロデューサーからも指名を受け、これまでに幅広いジャンルで数多くの作品を手掛ける。
更に、国内のみならずアメリカ・イギリス・オーストラリア等の海外からのダイレクトなオファーもあり、その語学力を生かしワールドワイドなスタンスでも活動。自らは「阪神タイガースをこよなく愛し、音楽で世界を渡り歩き、東京に魂を売り飛ばしたレコーディングエンジニア」と豪語。

サウンドやレコーディングテクニックだけでなく、携わるプロジェクトでの信頼関係にも重みを置き、チームワーク重視での作品作りを指標。

趣味は、カメラ、楽器演奏(トランペット、ギター、ピアノ)、草野球、麻雀と多彩。座右の銘を“人生、明るく、楽しく、のびのびと"とする、ビクタースタジオ内トップの売れっ子エンジニア。


<谷田氏からのコメント>
paris matchの制作に携わって、早14年になります。現在まで10枚以上のアルバムに参加させて頂きました。このプロジェクトはまさに私のライフワークと言っても過言ではありません。最高のミュージシャンによる演奏と秀逸なアレンジに透き通る歌声でポップかつオシャレな音を奏でるparis matchの存在は、業界でも唯一無二。

音へのアプローチも当時からほとんど変わっていません。「立体的な音」を目指す事だけ。これがなかなか難しい!永遠のテーマですね。録られている音のまま、楽器、歌がそれぞれ分離よく聴かせる為にEQもコンプレッサーも最低限しか使いません。楽曲、音の素材が良ければ、ほとんど弄らなくていいんです。paris matchがある意味「期待を裏切らない」作品を生み出し続けているのも一番にやはり、楽曲の良さ、歌の透明感、アレンジの格好良さにあると思います。それぞれの良いところを「つなぎ合わせる」のが私の仕事です。今回もそんな「普遍的にカッコいいサウンド」をぜひご堪能頂ければと思います。


この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: