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PRメーカー試聴室に近付く予想以上の効果

柱状拡散アイテム「アンク」「シルヴァン」、評論家が自宅試聴室の音質改善実証レポート

公開日 2023/12/24 07:00 土方久明
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今回は土方久明氏が、日本音響エンジニアリングが手掛ける柱状拡散アイテムである「アンク」と「シルヴァン」を16畳の自宅の試聴室に設置する。どこに設置すると、どんな効果を発揮するのか? 注目の実証レポートをお届け。

今回は日本音響エンジニアリングのルームチューニングアイテム「アンク」と「シルヴァン」を土方久明氏の自宅試聴室に設置する

ハイブリッド仕様やコーナータイプなど4種類を用意してどこまで改善できるか


7月のある日のこと。原稿を書いていたパソコンにAudio Accessory編集長から届いたメールが表示された。そこには「自宅で日本音響エンジニアリングのルームチューニングアイテムをレビューしてくれませんか?」と書かれている。日本の建築音響カンパニーとして半世紀の歴史を誇る同社、オーディオファイルにとっては「ANKH(アンク)」や「SYLVAN(シルヴァン)」などが有名で、本誌でも都度取り上げられている。僕の周りのメーカーやオーディオ友達にも利用者は多く、音質改善効果は重々承知していたが、音に慣れ親しんだ自宅試聴なら効果もわかりやすいだろう。

数日後、アイテムを満載したトヨタハイエースが自宅に到着した。今回試すのは、コーナータイプの「ハイブリッド・アンク-II」、フラットタイプの「ハイブリッド・アンク-I」と「アンク-I」、「シルヴァン」の4種類だ。

1Fの試聴室は長方形の16畳。台所が隣接しており、エアボリューム的には24畳である。まずは普段使っているグラスウールを中心とした音響調整材を外した素の部屋の状態で試聴する。ポップスのリファレンス曲としている、ホセ・ジェイムズのハイレゾファイル 『ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス』(44.1kHz/24bit)では、高〜中音域がボヤけてバックミュージック、ヴォーカルともディテールがまったく出ない。低域も飽和しており、女性ジャズヴォーカル、サマラ・ジョイ『Can't Get Out Of This Mood』はベースが不明瞭で音量的にも痩せているし、音色も汚い。

実は、音楽をかける前の段階で会話の声がかなり反響し、手を叩くとフラッターエコーがしている。シンプルで美しい部屋にありがちな響きだが、ここまで酷い状態でどこまで改善できるのだろうか。

左右2つのコーナーへの設置だけでもディテールが浮かび上がる


ということで、まずは拡散に加えて吸音効果を持つコーナータイプのハイブリッド型「ハイブリッド・アンク-II」を前方左右のコーナーに設置した。一聴してブーミーだった低域がスッキリとした。ローエンドも伸びて聴こえることに感心したが、予想以上だったのは、低域にマスキングされていた高音域から中音域の音のディテールが浮かび上がってきたことだ。

部屋の前方左右のコーナー拡散と吸音効果を両立させたコーナー・アンク「Hybrid ANK-II」を設置

わずかコーナー2つで、ここまでの差が出るのか。グラスウールを利用したチューニングで時折感じた高音域が若干減衰して聴こえてしまうこともないのは感心した。「これは喜ぶ人が多いはずだ」と試聴後のメモに書いてある。

前方中央にフラットタイプで拡散と吸音効果を両立させた「Hybrid ANK-I」を設置

次に前方中央にフラットタイプで拡散と吸音効果を両立させた「ハイブリッド・アンク-I」を設置した。センター定位するホセ・ジェイムスとサマラ・ジョイの音像が出る。左右のスピーカーの間に聴こえるバックミュージックのディテールもはっきりしてきた。つまり音数が違うのだ。この状態でスピーカーの後ろ側に回って取材陣と会話したのだが、自分の声でさえ明瞭に聴こえて音色も良い。これは効果があるはずだ。


フラットタイプの「ANK-I」もセンターの左右に追加
さらにフラットタイプの「ハイブリッド・アンク-I」をセンターの左右に追加したのだが、分解能はさらに向上し、音が伸び伸びとする。ヴォーカルの声にハリが出てアーティストとの距離感が近くなった。良いなと思ったのは、ルームチューニングアイテムの使用時に時折感じる音色のクセが無くなったことだ。

試聴のハイライトとなった「シルヴァン」、音場の立体感が大きく向上


最後は「シルヴァン」を左右の壁の一次反射に近い位置に置いたが、これが試聴のハイライト。音場の立体感が大きく向上し、ヴォーカルの微妙な左右のズレさえ表現している。アーティストが自分だけのために歌ってくれる距離感の近い音。しかも音場の奥行きもある。

「SYLVAN」を左右の壁の一次反射に近い位置に設置

結論からいえば、事前の予想を超えた音質改善効果をもたらした。イメージとしてはアイテムを付け足していくごとに、部屋が音の良いメーカーの試聴室に近づいてくる。また製品のビルドクォリティの高さにも感心した。技術的な部分をもっと描きたかったが紙幅が足りないのが残念。僕の部屋だったら特注のホワイトカラーでも良いかも。大満足の効果を得られたことを皆さんにご報告したい。

(提供:日本音響エンジニアリング株式会社)

本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です

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