HOME > レビュー > 東京藝大の公演をハイレゾ立体音響で無料配信。コルグ「Live Extreme」Auro-3D配信実現の背景とその魅力に迫る

PR評論家 山之内正がレポート

東京藝大の公演をハイレゾ立体音響で無料配信。コルグ「Live Extreme」Auro-3D配信実現の背景とその魅力に迫る

公開日 2023/07/28 06:30 山之内 正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

デコードにはAuro-3Dに対応したAVアンプが必要だが、最近はミドルクラスにも対応モデルが増え、再生のハードルは以前ほど高くない。ちなみにビットパーフェクトと紹介したが、Auro-3Dはハイト成分を他のチャンネルに重畳する際に独自の方法を用いているので、厳密には原信号とデコード後の信号はビットパーフェクトでは対応しない。デコーダーで元の信号に戻すために必要なメタデータを下位ビット(最大で4ビット分)に保存するため、実質的に24ビットではなく20ビットに相当する。とはいえ、圧縮率の大きい他方式の3Dオーディオに比べると音質劣化はきわめて小さいと考えていい。Auro-3Dが音楽コンテンツの高音質再生に適していると言われる最大の理由はそこにある。

藝大生の演奏をLive Extremeが “高音質” で配信



Live ExtremeのAuro-3Dストリーミングを利用した最初の音楽コンテンツとして、東京藝術大学の「デジタルツイン」内「GEIDAI 3D Audio Lab」に、「藝大第九〜チャリティコンサート」などいくつかの作品が公開されている。このサイトは東京藝大のリアルな4つのキャンパスに次ぐ5番目のキャンパスとしてネット上に立ち上げられたもので、コンサート以外に展覧会やコミュニティなど多彩なコンテンツが公開されている。

東京藝術大学「デジタルツイン」より。Auro-3Dでの立体音響コンテンツを配信

第九は奏楽堂、その他の作品は音楽学部の千住キャンパスなどで収録されたもので、いずれも藝大の学生や大学院生が演奏、作曲、録音など、それぞれの専攻を活かして完成させた貴重な記録だ。なお、同様のウェブサイトとして同大学では「藝大ミュージックアーカイブ」も公開しており、そちらでも様々な演奏の配信を視聴することができる。

「藝大ミュージックアーカイブ」はもともとインターネットイニシアティブ(IIJ)によるハイレゾ音源のオンデマンド・ストリーミング・サービス「PrimeSeat(プライムシート)」を利用して高音質音声の配信も行っていた。「PrimeSeat」のサービスは、残念ながら今年1月に終了してしまったが、「藝大ミュージックアーカイブ」の高音質配信という意味では、「Live Extreme」がその役割を引き継いだ格好だ。

ちなみに千住キャンパスは本格的なスタジオをそなえており、コンサートの録音/編集をはじめとする音響技術の教育・研究活動の拠点として活用されている。

同スタジオを拠点に音響学の指導と研究を統括する亀川徹教授(音楽環境創造科)によると、ゼミに参加する学生の約半数が立体音響に関心を持ち、実際に3Dオーディオ作品の制作に取り組んでいるそうだ。

東京藝術大学 亀川徹教授

「これまで藝大で行われた演奏会の多くを収録してきたので、その成果を広く公開することを目指して2014年頃からステレオでの配信を始めました。その後、コロナの影響で配信を拡大するなかでLive Extremeと出会い、従来のステレオから一気にAuro-3Dを用いた3Dオーディオの配信に踏み込むことを決断しました。従来からサラウンドで収録し、奏楽堂には4Kの機材も導入していたので、高画質と立体音響を両立できるLive Extremeのシステムはメリットが大きいんです」(亀川教授)

なぜ「Auro-3D」を選んだのか? 配信実現の背景は?



3Dオーディオには複数の方式が存在するが、Auro-3Dに白羽の矢が立ったのは制作側の視点で見たときの扱いやすさが背景にあったという。

次ページAuro-3Dコンテンツを聴く。「ステレオ再生とは別格」

前へ 1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: