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PRサブスク時代に満を持して送り出された本格派

映画がもっと観たくなる映像美、BenQ「HT4550i」はいまこそ注目の“本命”プロジェクターだ

公開日 2023/07/07 06:30 大橋伸太郎
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今度は、パナソニック「DMR-ZR1」をHDMI接続してみよう。定番ディスクの『8K 空撮夜景SKYWALK』。エントリー層をまごつかせない配慮だろう、映像モードはHDR10+固定となる。特筆すべきは、カラーブレイクがよく抑圧されていること。皆無ではないが、映像の中の明るさの差の大きい部分にも字幕周辺にも出ない。最新製品らしく、映像の情報量が多く精細感も豊か。ビルの灯火等、3,200ANSIルーメンの余裕で輝くばかりだが、暗部に黒浮きと若干の色付きがみられる。レンズシステムもコンパクトにまとめたせいか周辺部の解像力が物足りず、オンフォーカスの近景は鮮鋭感と切れ味があるものの、背景に行くに従って精細感が減退して甘い画になる。画質オタク向き実写撮影のこのソフトは本機にそぐわなかったのかもしれない。映画ソフトになるとHT4550iは一転して水を得たような映像をみせてくれた。

「VGP2023 SUMMER」で各社ディスプレイ(テレビ、プロジェクター)の画質判定の課題ソフトを務めた『ノースマン』。9世紀の北ヨーロッパが舞台のヴァイキングの男の運命劇。映像モードはHDRかフィルムメーカーモードになるが、本作では両モードの差が少ない。やや黒浮きがするので、HDRをベースに輝度を50→47に下げると映像が落ち着き、製作者の狙った「リアルなヴァイキング映画」の不穏で荒々しい雰囲気がみなぎる。主人公が魔剣を手にするシーンは、方式を問わずディスプレイの難所。最新の有機ELテレビでもRGBの合わせ込みがうまくいかず、闇と月明かりの境界に色むらが発生する場合が多いが、本機は皆無である。視覚上の妨害要素がないので、心行くまでダークファンタジーにひたることができる。

映画やドラマなどのコンテンツ全般で高い再現性を発揮、世界観に没入させてくれる

4K化された『天国と地獄』。SDRなので映像モードのしばりがなく、フィルムメーカーモードのほか「シネマ」「明るいシネマ」などが選択できる。切り替えるとガンマと色温度、バランスが変わっていくが、いずれもよくできている。シネマは力強く切れがあるが、モノクロ映像のコントラストにやや強調感がある。フィルムメーカー・モードの柔らかく穏やかなフィルムトーンは長時間視聴で快適だが、やや大人し過ぎる。黒澤明サスペンス現代劇のダイナミックな迫力を求めて、シネマをベースに輝度45、コントラスト40、シャープネス8に調整すると良好なバランスを得た。

■「いまだから、こんどこそ、ホームシアター」に答えきったスマートプロジェクター



HT4550iは、プリセットのモード任せで快適な視聴ができるが、映像パラメーターが豊富で、調整次第で打てば響く、入りやすく奥の深いプロジェクターだ。

『ハウス・オブ・グッチ』(イタリア盤4K UHD BD)は、HDRとフィルムメーカーモードの二択となり、後者でまったく不足はないが、一癖二癖の人間模様が綾なす現代の悲喜劇をカラフルに綴った本作にしては今一つストイック。詳細設定に入り、「ローカルコントラストエンハンサー」を「オフ」から「低」に切り替えると、俳優のクローズアップの明暗差が豊かになり、舞台だての華やかさが生まれる。

「ピクチャモード」は入力信号により選べるメニューが異なる。また「詳細色設定」の項目も、HDRかどうかで調整できる項目が変化する

色々と調整してみて、結局HDRモードをベースに好結果が得られた。レディ・ガガ演じる主人公パトリツィアが身につけるイタリアンジュエリーが最初はメッキ臭い光り物だったのが、グッチ家に食い込んでいくにつれ凄味のある輝きに変わっていく野望の象徴的な描写が、HDRモードでしっかり伝わるからである。

リモコンはプロジェクター、Android TVドングル用に2つ付属する。それぞれボタンで呼び出せる機能は異なるが、いずれも本体メニューから操作できるので、使いやすい方を手元に置けばいい

HT4550iは色域の広さも特徴。この映画の場合、ストーリー上の転回点のシーンで色彩が存在感を発揮すると、映画の味わいが深く楽しくなる。マウリツィオがインベストコープのイラク人の投資家にボルドーレッドのモカシンをプレゼントするシーンや、ファッションショーのシーンがそれだ。「Cinema Master」の「カラーエンハンサー」を「4」にして色の鮮鋭度を上げてやると、色彩が目覚めて事件の証人のようにものをいう。世界を震撼させたグッチ事件のクライマックスに立ち会っている錯覚。

BenQプロジェクター独自の「CinemaMaster」は本機にも搭載されている

色温度の調整は従来モデルよりもさらに細かく設定可能になった

最後に、ようやく4K UHD BD発売となった『インディ・ジョーンズ/レイダース 失われたアーク《聖櫃》』は、HDR10かフィルムメーカーモードの二択。前者は1980年代のフィルム映画らしく力強いコントラストのパワフルな映像だが、HT4550iはパワーがあり余り、コントラストの明暗差がつき過ぎてギラギラしている。詳細設定をチェックすると「ローカルコントラストエンハンサー」が「高」という設定なのでこれを「オフ」に。それでも明るいのでコントラストをやや下げたが、明室あるいは半暗の視聴環境ならベストマッチングである。

一方のフィルムメーカーモードは、デフォルトでコントラストのバランスがよく、フィルムグレインの粒子がきめ細かく滑らかで、メジャー作品らしい堂々としたルックの映像が楽しめ、初公開時のロードショー館へタイムスリップしていける。
◇ ◇ ◇

デジタル撮影の配信用新作からフィルムシューティングの旧作まで映画全般に強い。そして暗室、半暗、明室と環境に強い。画質モードがよく練られていてプロジェクター任せで良好なバランスが得られ、コンパクトで設置性能に優れていることが決め手。HT4550iはBenQがサブスク時代に満を持して送り出す「いまだから、こんどこそ、ホームシアター」に答えきったスマートプロジェクターである。しかし、使いこなす楽しみにも答える懐の深い製品であることも知っておきたい。




(提供:ベンキュージャパン株式会社)

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