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ニコンのカジュアルな実力派「Z fc」、Z初のマクロ「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」特別レビュー

公開日 2021/11/05 06:30 山田久美夫
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■優れた描写性能と高速AFを両立。手ブレ補正の効きも抜群


そして、さらに感心するのが、その優れた描写力が近距離だけでなく、どの距離域でも変わらずに楽しめる点である。マクロレンズにありがちな、AFの遅さを感じることもほとんどない。これは本レンズが採用しているAF駆動方式「マルチフォーカス方式」による効果が大きい。

「マルチフォーカス方式」は、複数のAF用駆動ユニットを連携させ、撮影距離に応じて最適な描写になるようにレンズを駆動する方式。そのため、どの距離域でも、高い描写性能と高速AFが実現できているのだ。


ただ、描写性能を最重視したこともあり、全長約140mm、最大径約85mmとサイズは大柄だ。一方、重さは約630gと見た目に反して軽いため、持ち歩きはそこまで苦にならないだろう。試用時は「Z 7II」と組み合わせたが、装着時のバランスもよく、安心して撮影に臨むことができた。

また、本レンズは手ブレ補正(VR)機構を内蔵しており、約4.5段分の手ブレ補正効果を実現している。そのため、微細なブレが大幅に軽減されるだけでなく、フレーミングの揺れも少なく、とても安心感がある。ボディ内手ブレ補正機構を内蔵しない「Z fc」との組み合わせでもその絶大な効果を実感できた。Zシリーズユーザーなら、ぜひ体験してほしい1本である。


フラグシップ機「Z 9」の発表により、システムとしての全容がより明らかになり、さらに魅力的になったニコン Z マウントシステム。今回試用した「Z fc」と「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」は、一見すると異なるベクトルの製品のようにも見えるが、カメラやレンズのさらなる可能性の追求という意味では、同じ方向性を向いた製品だ。

デジタルカメラはすでに完成の域に達しており、多くの方にとっては、新製品が登場しても進化があまり感じられないくらい飽和した状況になりつつある。だが、「Z fc」や「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」、そして「Z 9」を見ると、まだまだ、この先にさまざまな可能性や広がりのある分野であることを実感させられる。いずれも従来の基準であった、数値やスペックとは異なる、感性的な性能や魅力を高めることを目指し、それを実現しているからだ。

カメラやレンズは、たんなる実用品や一部のプロ、ハイアマチュアだけのものではなく、より多くの人の感性や表現力を育み、人生を豊かにするものである。「Z fc」や「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」は、それを体現した製品といえるだろう。そして、もちろん、そんな小難しいことを考えなくても、実際に触って体感すれば、写真がもっと楽しくなること請け合いの、きわめて魅力的な製品だ。


筆者注:「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」の作例は、すべて絞り開放で撮影している。だが撮影データを見ていただくと「あれ?」と思う人もいるだろう。一般のレンズは撮影距離により、実際の絞り値が変化しており、近距離になるほど暗くなるが、絞り値は遠距離時のものが表示される。一方、本レンズは実際の撮影時の実効絞り値が表示される。そのため、マクロ域だけでなく近距離での開放撮影時も、F2.8より暗い数値がカメラに表示される。最初は慣れないが真面目に実効値を表示した結果といえるだろう。

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