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逆位相でピークノイズを打ち消す「T.F.A.T」が鍵

新技術で三度飛躍! Unique Melodyのハイブリッド型カスタム「MAVERICK III」レビュー

公開日 2019/11/22 17:00 編集部:成藤 正宣
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同時に、奥行きの表現にも驚かされる。普段ならもっと主張するはずの帯域が聴きやすくなったからか、音場には何か支えがとれたような開放感がある。楽曲の各パートが適度なスペースを空けて配置され、自然と聴き分けも捗る。MAVERICK IIもパートごとの分離や見通しにたいへん優れていたが、MAVERICK IIIでは各パートが浮き上がっているようだ。これこそが、T.F.A.Tの効果なのだと筆者は捉えている

T.F.A.Tドライバーを動作しないように加工した専用デモ機をお借りして、T.F.A.Tの有無を比較した。

今回、T.F.A.Tドライバーのみ動作を止めた特注のMAVERICK IIIデモ機も借りることができたので、自分のMAVERICK IIIと平行して聴いてみた。デモ機の高音はとても鮮烈で、遠慮なく耳に刺さり、雑に言ってしまえばよく聴くタイプのBAドライバーの音だ。加えて、奥行きと立体感もすこし弱まって聴こえる。

一方で、T.F.A.Tはその効果の出し方がポイントと宮永氏は語る。効いていないと上述のような音になるが、逆に効かせすぎてもつまらない音になるという。ベストな状態で効果を発揮させるため、「T.F.A.Tのチューニングだけで半日も費やした」というから、やはりMAVERICK IIIの開発において重要な核であることがうかがえる。

実際T.F.A.Tのオン/オフを比較してしまうと、その差は思った以上。特に、ピンポイントに耳障りな成分を抑えることで、空間表現の印象までも変わるというのは、目からウロコの体験だった。

MAVERICK IIIで聴いた試聴曲の中から、いくつか個別の感想を上げてみよう。上原ひろみの最新アルバムから表題曲「スペクトラム」を再生すると、圧倒的なスピードで打楽器のように鍵盤を連打する序盤のフレーズは歯切れよく、中盤の旋律は滑らかに描き分ける。

一流ドラマーとパーカッショニストが中心となったバンド・Ghost-noteの「Ewe(ay-way)」では、コンガやベルの繊細なリズミカルさがきちんと表現されるとともに、続く複雑なドラムワークも1音1音がはっきりと独立し、スナッピーをきかせたスネアドラム、空気感たっぷりのバスドラムのヌケも心地いい。

ソニーのウォークマン「MW-WM1A」や、Astell&KernのDAP「A&ultima SP2000」と組み合わせて試聴

また、細部までくっきりと聴き分けられる解像感と音の立ち上がりの早さと、ボワ付きやこもりが気にならない適度な音の厚み、2つの要素が高い水準で両立していることから、個人的には疾走感のあるメタルとも取り合わせが良いと思う。

筆者のお気に入りバンドのひとつ、Falconerの「Mindtraveller」では、民族調の節回しで朗々と歌い上げる男性ボーカルのクリーンさも、大きく歪ませたリズムギターのキレと重さも、どちらもスポイルされることなく両立されている。キレや解像感が勝ちすぎれば低音が物足りず、低音の主張が強すぎれば演奏のディテールやスピード感が埋もれてしまう。そういう微妙なバランスもしっかり取れているのだ。

どの楽曲を聴いていても、ボリュームを上げるほどに弦楽器の微細な震えや低音楽器を揺らす空気の表現が一層耳に心地よく響く。その上で、耳に刺さる高音成分は一向にあらわれず、開放的な音場から音圧も感じさせにくい。試聴の最中ふと気がつくとボリュームが普段の数値より何段も上に設定されており、耳の健康を考えて慌てて下げる、ということが度々起きた。カスタムIEMならではのフィット感、遮音性も含め、とてつもない没入感を生む機種だと思う次第だ。

ちなみに宮永氏は、MAVERICK III のチューニングではエラ・メイ、ダフト・パンク、TOTOといったアーティストの楽曲を流し、とにかく音像のつかみやすさに焦点を当てて作業したという。MAVERICK IIIの特徴を掴みやすい曲も、そういった「音像がしっかりした楽曲、ドラムの録音が良い楽曲」を聴くのがオススメとのことだ。試聴することがあれば、ぜひ試してみて欲しい。

今回、宮永氏はMAVERICK IIIの特徴を掴みやすいジャンルや、試聴環境などについても答えてくれた



Unique Melodyの新技術を効果的に取り入れ、5年に渡って支持されてきたサウンドを一段と高みへ押し上げたMAVERICK III。なお、これまでMAVERICKシリーズはユニバーサルモデル、カスタムモデルの順で開発/発表されているが、MAVERICK IIIではカスタム/ユニバーサルとそれぞれ別の要素を盛り込むため、同時開発が行われている。しかしユニバーサルモデルの製作が難航したことで、カスタムモデルのMAVERICK IIIだけが先に発表されたという訳だ。

MAVERICK IIIのユニバーサルモデルにあたる「MAVERICK Ti」のプロトタイプ。ユニバーサルだからこそ実現可能な3Dプリントのチタニウム筐体で開発中だ

そのユニバーサルモデル「MAVERICK Ti」は、「秋のヘッドフォン祭 2019」にて初披露。T.F.A.Tの搭載や基本仕様はカスタムモデルに準拠するが、3Dプリントによるチタニウム筐体を採用した点がユニバーサルモデル独自の特徴である。プロトタイプを試聴すると、中高域に独特のきらびやかさが乗っており、カスタムIEMとはまた違った魅力を感じた。

宮永氏は、「短期間に更新するのではなく、2年という長めの期間を置いたからこそ、前のモデルの音を客観的に振りかえることができたのかもしれません」とも語っていた。リスナーを納得させるだけの音質向上を果たすまで、じっくりと腰を据えて開発する姿勢もまた、このシリーズが高いクオリティを維持している秘訣だろう。


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