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【特別企画】アトモスのバーチャル再生にも対応

パイオニアのミドル級AVアンプ「VSX-LX304」レビュー。精緻な音場再現と“音楽力”を備えたIMAX Enhanced対応機

公開日 2019/08/22 06:15 大橋 伸太郎
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AVアンプの今期のトピックのひとつが、「Dolby Atmos Height Virtualizer」機能の導入だが、VSX-LX304はその点でもぬかりがない。

イマーシブサウンドが画期的なのは、音場の高さ方向への拡張である。トップスピーカーがサラウンドのフォーマットの中に加わったわけだが、いかんせん、家庭の天井にスピーカーを後付けすることのハードルは高く、ハードウェア的ソリューションとして、フロントスピーカーの天面に乗せて天井に向けて設置するイネーブルドスピーカーが考案された。しかし、より簡便かつ合理的な手段で効果を得るために考案されたソフトウェアが本機搭載のDolby Atmos Height Virtualizerである。

「Dolby Atmos Height Virtualizer」を駆使すれば、ハイトスピーカーやサラウンドスピーカーなしで高さ方向を含む音場を仮想再現できる

詳細は公開されていないが、フロントL/R、あるいはセンタースピーカーのオブジェクトマッピングの工夫、位相操作と周波数特性のイコライジングで、トップスピーカーあるいはサラウンドスピーカーがなくても聴感的に音場を天地方向へ拡張するヴァーチャル再生技術だ。取材時点のテスト用ファームウェアでは未対応だったため、こちらは別の機会にお伝えすることとしたい。

一足早くテスト・ファームウェアで、IMAX Enhancedエンコードソフトを体験した

まずは、注目のIMAX Enhancedによるサラウンド再生をテスト用ファームウェアで体験してみよう(編集部注:視聴は正式ファーム提供前に実施した)。スピーカーはELAC「240 BE」シリーズで、音元出版試聴室にフロントハイトスピーカー含む7.1.2構成を設置した。

IMAXシアターの臨場感を家庭でも体験可能にすることを目指した新規格「IMAX Enhanced」に対応する

この新フォーマットについては、ファイルウェブで既報だが、ここでもう一度ざっとおさらいしておこう。IMAX Enhancedは、IMAX社が提案するホーム向けの新しい映像・音声規格だ。その目的は、IMAXシアターの興奮を家庭に届けることにある。IMAX Enhanced規格で制作されたコンテンツ(UHD BD/配信)を、IMAX Enhanced認証を受けた機器(テレビ/プロジェクター/AVアンプ/サウンドバーの4カテゴリー)で視聴することで、劇場のIMAXのような映像と音響を家庭でも楽しめるとする。

映像は4K HDRだが、IMAX上映用にIMAXカメラで撮影された「IMAXマスター」が使われる。『ダークナイト・ライジング』や『ダンケルク』等の作品に代表される、天地方向にワイドに映し出されたアスペクト比1.43:1のIMAX映像を、家庭でフル画角で楽しめることに加え、IMAX独自の処理によって明るさとノイズの少なさを両立させることが可能になっているという。

音声は、基本はDTS:Xがベースとなっており、IMAX劇場の5.0ch/7.0ch/12.0chの音環境に近づける処理が行われている。また、低域にフォーカスして劇場の臨場感を再現するサウンドが特徴とのこと。

VSX-LX304のファームウェア・アップデートは8月1日から開始されているが、今回使用したテスト用ファームウェアでは、アップデートが完了すると、IMAX Enhanced収録ディスクを再生した際、ディスプレイに「IMAX DTS:X」と表示された。

IMAX Enhanced再生時には「IMAX DTS:X」 と本体に表示される

この日最初に視聴したのが、IMAX EnhancedのサンプラーUHD BDだ。『オンリー・ザ・ブレイヴ』や『ヴェノム』、『スパイダーマン ホームカミング』といった作品ハイライトシーンが収録されている。あえてド派手なアクションシーンばかりが選ばれているのだが、全チャプターで一貫して、量感主体の野太く逞しいサウンドだ。

視聴に用いたIMAX EnhancedのサンプラーUHD BD

LFEのレベルが高いのでなく、特に中低域を考慮しつつ全体の周波数特性をイコライジングしているのだ。これにより、大型劇場の強固な躯体の中、プレミアムシートに着座してIMAX上映の真っ只中にいるような臨場感が味わえる。

次ページアンプとしての基本設計と音楽力が、アカデミー音響効果賞受賞作の核心を浮かび上がらせる

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