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現代的な高い解像感も兼備

ブランドの歴史を彩り豊かに体現する、FOCAL40周年記念スピーカー「SPECTRAL 40th」レビュー

公開日 2019/08/09 09:53 岩井喬
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ソファなどでくつろいでいるリスニング姿勢での耳の高さとトゥイーター位置を揃えているようであり、このトゥイーターの上側にミッドレンジ、下側にダブルウーファーを置くユニット配列になっている。また、Powerflowベントシステムと呼ばれるバスレフポートは、ハイスピードでキレのあるアタック感を担うフロントポートと、ゆったりした量感豊かな低域を生むリアポートによるツインポート構成を用いている。

くつろいだ姿勢での耳の位置を想定してトゥイーターを配置している


全帯域に渡ってスムーズで滑らかな表現を聴かせてくれる

試聴にはSPECTRAL 40thの価格帯を考慮し、実際の組み合わせに最適なプリメインアンプとしてラックスマン「L-509X」、USB-DACに同「DA-06」を用意。オーディオ用NAS、fidata「HFAS1-S10」のUSB-DACプレーヤー機能を用いて再生を行った。

プリメインアンプ、USB-DACにはラックスマンの製品を組み合わせて試聴した

長年に渡って採用してきたアラミド繊維による振動板素材を全てのユニットで用いたことで、音の繋がりが良く、巧みな使いこなしの妙を感じられる。全帯域に渡ってスムーズで滑らかな表現が特徴であり、密度良く低重心な音像描写によって落ち着きのあるサウンドを聴かせてくれた。

クラシックを聴くと、オーケストラのハーモニーも伸び良く、管弦楽器の立ち上がりも鮮やかで、ハリ感を抑揚良く表現する。余韻の響きもしっとりとしており、低域方向の制動の良さも相まって見通しの深いナチュラルな音場を味わうことができる。ホールトーンの質感も丁寧に引き出し、はつらつとした臨場感ある旋律の浮き立ちの良さと好対照だ。

ジャズ音源では、密度の高いピアノのアタックや、ホーンセクションのハキハキとした浮き立ち感を華やかに描き出す。シンバルの響きはきめが細かく、余韻の階調性も高い。ウッドベースやキックドラムのアタックは力強く存在感がある。胴鳴りの響きは弾力よく跳ねる様までしっかりと描き切り、リズムの芯を躍動的に表現する。

ステレオワンポイント収録のDSD音源では、弦楽器の艶感を滑らかにまとめ、音像の定位感も立体的だ。弦のピッキングも立ち上がり良く、ボーカルの口元もスムーズに描く。音像の僅かに揺れるさまもリアルに捉え、そこに演者がいるとい佇まいを生々しく感じ取ることができた。

背面部には40周年のロゴが施される

続いて5.6MHz音源を再生。ボーカルの自然かつ潤いある描写は、凛とした輪郭表現へと繋がりフォーカス良く浮き立つ。リヴァーブの爽やかな余韻も緻密だ。ブライトな艶感による声の音離れの良さも手伝い、非常にリアル。重心が低く品のある質感だ。

ピアノは落ち着きあるハーモニクスを聴かせ、上品な倍音の伸びと、素直に響く低域方向の豊かさを味わえる。アコギの弦はカリッとしたアタックの煌びやかさと、胴鳴りの伸びやかさをバランス良く両立させ、クリアに定位。流麗で耳馴染み良い音色だ。

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