【特別企画】NC効果や装着性も◎
NCヘッドホン、実はデノンが本命かも? 「AH-GC30」を海外出張で使い、その音に驚いた
装着感もよい。長時間装着することが多いノイキャンヘッドホンにとって、装着した際の快適性はものすごく重要な要素だ。いくらノイズ抑制効果が高くても、いくら音がよくても、ヘッドホンを着けたときの感覚が不快だったらほとんど意味はない。
その点AH-GC30はたいへん優秀で、今回のフライト4時間のあいだずっと装着し続けても、ノーストレス、ノーダメージ。まだまだ着けていられそうな感覚があった。10時間を超えるロングフライトでも問題なく使えるだろう。イヤーパッドの大きさ、柔らかさ、皮膚に当たった際の感触も絶妙な仕上がり。私は頭が大きめなので、他社のノイキャンヘッドホンだと耳の周りが痛くなることがあるが、そういうトラブルは一切無かった。
■すっきりとクリアなサウンド。このジャンルではダントツの音楽性を備える
ここからは、肝心の音質について触れていく。
一言で言い表すと、ノイキャンヘッドホンとは思えないほど、すっきりとクリアな音だ。
まずはiPhone Xと接続して試聴。つまりAACを聴いていることになる。クイーン「ボヘミアン・ラプソディ」では、フレディ・マーキュリーのシャウトが、天をつんざくように伸び切る。そして濁りのないピアノや、ブライアン・メイのギターが、それを鮮やかに引き立たせる。オペラ調の間奏の複雑なコーラスワークまで見事に描き分ける能力には思わず舌を巻いた。フラットバランスを基本にしつつ、やや聴き飽きた感のある曲さえ楽しく聴ける見事な音楽性が光る。
あいみょん「マリーゴールド」では、ボーカルに被せられたフィルターの質感まで、丁寧に浮き彫りにする。解像感が高く、細かなサウンドワークもしっかり表現する基本性能の高さを実感した。
女性ボーカルはもう一曲、少し懐かしい楽曲、柴田淳「青春の影」でもチェック。あいみょんとは違ってエフェクトは最小限で、生っぽいボーカルが特徴的な楽曲だが、上唇と下唇が触れあう擦過音までが、耳の奥、そして脳までダイレクトに届いてくる。
続いてaptX HD接続も試した。DSD音源のマイケル・ジャクソン「Billie Jean」を聴くと、リズムを刻むシンバルの音がクリア。中盤以降、多数の楽器が複雑に絡み合うパートも、一音一音を明瞭に描き出す。この解像感は特筆すべきレベルだ。
あまりにすっきりと透明感のあるサウンドなので、つい水に例えたくなった。やや硬質なミネラルウォーターを想起してもらえたら、私が聞いた音の印象に近いかもしれない。といって、当たりがキツいわけではなく、耳に優しい中高域の丸みも両立している。低域はしっかり出ているが、無理に深くまで沈ませるわけではなく、あくまで音楽全体のバランスを重視したサウンドだ。
次ページ率直に言って、売れ筋モデルを含め、しっかりとした音楽性を備えたノイキャンヘッドホンはほとんどない。