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海上忍のラズパイ・オーディオ通信(55)

オーディオ伝送の最新トレンド、Audio over IP。 ラズパイで「RAWストリーミング」を試す

公開日 2019/02/23 07:00 海上 忍
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「Audio over IP」というトレンド

「ストリーミング」がオーディオ機器のみならず音楽再生系全体における重要課題であることは、疑う余地がないだろう。iTunes Storeのオープンにより到来したデジタル音楽配信時代は、Spotifyなど定額/サブスクリプション型サービス興隆期へと移行し、ますますその勢いを強めている。とかくハードウェア/DIY的な側面ばかり注目されがちなラズパイ・オーディオも、ストリーミングへの対応強化は焦眉の急だ。

ここで、SpotifyやDeezerといった対応サービスを増やすのかと早合点しないでいただきたい。確かに、そういった商業サービスの数を増やす取り組みも重要だが、シングルボード・コンピュータという“尖った”デバイスには、Linuxというオープンソースソフトウェアの果実を生かせる先進的な取り組みを期待されているはずだ。

それにストリーミングといっても色々ある。TCP/IPやUDPといったOSI参照モデルにおけるデータリンク層/ネットワーク層に近い技術もあれば、クラウド上の楽曲を再生するアプリケーションもあり、そもそも「ストリーミング」という1つの言葉で括られること自体に無理がある。

前者のネットワーク層に分類される技術トレンドのひとつが「Audio over IP(AoIP)」だ。文字どおりIPネットワーク経由でオーディオデータを伝送するというものだが、これにしても方式は様々ある。

メガテックエレクトロニクス社が開発した「Diretta」はその1つで、SFORZATOのネットワークプレーヤーでサポートされ「LAN DAC」を実現する。資料を眺めたかぎりでは、再生機器側からLANケーブルで送られたUDPのパケットをホスト(Diretta Sink)が受け、バッファした後に(I2Sなどの信号として)DACへ送信する仕組みらしい。

SFORZATO DSP-Dorado

スタジオモニターで知られるGenelecも、Power over Ethernet(PoE)を利用しアクティブスピーカーへ音声にくわえ電源も供給する独自のAoIP規格を発表した(https://www.phileweb.com/news/audio/201901/29/20578.html)。基本的には音響設備の現場などプロユースだが、AoIPのひとつの形であることは間違いない。

GENELECも独自のAoIP規格を発表した

明確な定義が存在しないためか、より上位のプロトコルもAoIPに括られることがある。たとえば、RTP(Real-time Transport Protocol、リアルタイム性/低レイテンシを重視したプロトコル)は広義のAoIPといえるし、音楽制作のプロ用機材に採用されている「AES67」(異なるAoIP規格の相互運用性実現のために設けられたオーディオトランスポート規格)にもベースのプロトコルとして採用されている。そういえば、AirPlayの前身である「AirTunes」も、スマートフォンやAVアンプに採用されている「Miracast」も、RTPをベースにした技術だ。

この広義のAoIPであれば、我らがラズパイにも数多くの解法がある。毎度のように(?)壮大な前置きとなってしまったが、今回はRaspberry Piとパソコン(Mac)の間でユニークなストリーミングを試してみよう。

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