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Eシリーズで最も手頃な価格を実現

中学生にも買える「良い音」を。あのfinalが作った2,480円のイヤホン「E1000」レビュー

公開日 2018/12/24 07:00 高橋敦
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エントリーユーザーにこそ『良い音』を届ける

実際のこのイヤホンが届けてくれる音のポイントをまず簡潔にお伝えするならば、「エントリーユーザー受けを狙った派手な音作りではなく、エントリーユーザーにこそ『良い音』を届ける音作りをしてある」「ハイエンド的な表現までは欲張らず、エントリークラスならではの明快な『良い音』を打ち出している」の二点だ。

ぱっと聴いただけではわかりにくい通好みな良い音ではなく、ぱっと聴いただけで「これが良い音というものか!」とわかりやすいサウンド。しかし余計な装飾はない。「良い音って何だろう?」というエントリーユーザーの方も、このイヤホンからスタートしてこのイヤホンを基準にしておけば先々まで間違いはない。そんな基準になるサウンドだ。

イヤーピースは左右で色が異なる。また音導管部分のシリコンには溝加工が施されている

例えば相対性理論「ウルトラソーダ」。リズムのキレとギターやシンセの空間表現、そして特徴的な声質と繊細な表現の女性ボーカルが印象的なバンドサウンドのこちらは、ポップスのバンドサウンド全般のサンプルとして適当だ。

まずリズム面では、このイヤホンはまさにそのキレの再現性に優れている。ドラムスの打面にスティックがヒットした瞬間から音が立ち上がり切るまでのスピード感だけでなく、その音がボワァンと膨らまずにすっと素直に綺麗に消えていく収まり感も良い。ベースも同じくだ。するとそのおかげで、ドラマーやベーシストが演奏し録音エンジニアが整えたリズムニュアンスが、その意図の通りにバシッと届いてくる。いわゆる「グルーヴ」というものが正しく、そして豊かに伝わってくるのだ。

ただし、バスドラムが空気を揺らす響きやベースの図太さは、十分ではあるが特別に豊かというほどではない。だがそこが、このイヤホンの音作りの巧みさだ。というのも、ハイエンドモデルなら例えば頑強な金属筐体を使ったりすることで、響きや太さを豊かに出しつつも、余計な共振は抑え込んでリズムのキレと両立することができる。しかしエントリークラスではその両立は難しい。そこでこのモデルはキレの良い正確なリズムの方に重きを置いた印象だ。「良い音の基本」を伝えるためには適当な音作りと思う。

断線を防ぐ為に、柔軟で太めのケーブルが採用。またケーブルの長さは1.2m。プラグは3.5mmとなっている

また空間表現の面では、左右の広がりの素晴らしさとそれぞれの音同士の自然なセパレーションが印象的。左から聴こえるべきサウンドははっきりと左から、右から聴こえるべき音もはっきりと右から再生され、その広さがあるからこそ、左右の中間にある音の微妙な配置も明確になっている。ギターやシンセにはエコーやコーラスといった音を重ねるエフェクトが多用されているが、そのエフェクト感も不自然ではなく、しかし実に効果的に再現される。空間表現の面では、奥行きの立体感は必要十分程度。これもハイエンド領域の要素であり、エントリークラスで欲張って踏み込み過ぎれば他の要素を犠牲にしかねない。ここも賢明な判断だ。

そしてボーカルの表現も同じく、肉声的な厚みやしっとりとした湿度感といったところは意識しすぎず、明快な発声とさっぱりとした感触で歌の機微をしっかりと届ける!ということに注力してある印象となっている。というわけで繰り返しにもなるが、「エントリークラスならではの、エントリーユーザーに向けた、明快な良い音」を見事に具現化し、良い音の基本となる要素をしっかりと固めたサウンド。それがE1000の音だ。



このイヤホンによってリスナーの耳はすくすく育ち、するといずれ、このイヤホンに物足りなさを感じてハイエンドを求めるユーザーも出てくるはず。

音楽ファンが良い音で聴く喜びを知り、もっと良い音を求めるようになったなら、それこそ、このイヤホンが本懐を遂げた瞬間である。finalのその願いを、あなたのその耳で受け取ってほしい。

(高橋敦)

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