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【特別企画】重低音イヤホンシリーズの新モデル

SOLID BASSの新たな最高峰、オーディオテクニカ「ATH-CKS1100X」は “思い切った進化”を果たした

公開日 2018/05/17 08:00 高橋 敦
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そのほか、筐体を頑強な切削無垢アルミニウムエンクロージャーとして不要共振を低減。左右の伝送を独立させたスターカッド撚り線ケーブルで左右の電気信号の干渉を低減。オーディオ専用設計の独自リケーブル端子A2DCでノイズ耐性とメンテナンス性を確保。このあたりはATH-CKS1100と同様だ。

独自リケーブル端子A2DCを採用。ノイズ耐性とメンテナンス性を確保

こうした施策はいずれも正攻法的なアプローチだが、それにも関わらず、これまでのモデルと遜色ないSOLID BASSシリーズらしい、しかもハイエンドモデルに値するサウンドクオリティが引き出されているのである。ベーシックな技術や手法を高度に駆使して再構築されたこのモデルのすごさはそこにある。

高域の伸びとSOLID BASSらしい低域再現を高度に両立

今回、生産完了となった従来モデル「ATH-CKS1100」も用意して、比較して聴きながらATH-CKS1100Xの音質をチェックした。

まず一聴して感じるのは、従来のATH-CKS1100と比べて高域は綺麗に伸ばしていること。低域に対して高域が不自然に鋭く目立つようなことがなく、すっと整った印象だ。低域は沈みの深さだけをとればATH-CKS1100だが、ATH-CKS1100Xは中域寄りの音の太さまで再現。女性ボーカルのしなやかさやロックやポップスの音域でのベースの迫力ならATH-CKS1100X、クラブ系のディープなベースのまとめ方ではATH-CKS1000に優位を感じる。

どちらもSOLID BASSサウンドであり、どちらもハイエンドクオリティ。それを共通の基盤とした上で、それぞれ異なる個性も備えていると理解してほしい。

ATH-CKS1100Xは、高域の伸びとSOLID BASSらしい低域再現を高度に両立する

位置付けとしてもATH-CKS1100Xは、ATH-CKS1000のアップデートというよりも、新フォーマットによる新世代SOLID BASSのファーストモデルと考えた方がしっくりくるのではないだろうか。

相対性理論「夏至」は女性ボーカルのポップスバンド。空間系エフェクトを活用したギタープレイも印象的だ。主役のボーカルは音量バランスとしてはやや小さめなのだが、しかし声の質感は好印象で立ち姿の見え方もクリアだ。ATH-CKS1100ではそのシャープさが悪目立ちする瞬間もあったサ行の子音の成分も、目立ちすぎないように整えられている。

この曲の“ぶっといベース”を本当にぶっとく鳴らしてくれるのにも関わらず、ボーカルを邪魔する太さではないというのもポイント。「ポップスやロックの主役はやっぱりボーカルでしょ!…でもベースの迫力もほしい」という要望に応えてくれる低音の出し方だ。

イヤホン本体のサイズ比較。ATH-CKS1100X(左)とATH-CKS1100(右)

Robert Glasper Experimentの「Human」くらいにディープなクラブ系のベースサウンドでは、むしろATH-CKS1100Xでは縦には沈み切らず横への膨らみが大きくなりすぎる場合もある。その点でATH-CKS1100はこうした種類の低音をカバーでき、こちらのほうのサウンドが好みという方もいるだろう。

ATH-CKS1100Xはコンパクトさも重視した中で、SOLID BASSらしい音作りを突き詰めている。また、どちらかというとJ-POPやJ-ROCKを想定した音作りとしても納得できる。ボーカルから低域まで、従来機と比べてより多くの方になじみやすいサウンドに仕上がっているのではないだろうか。

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