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透明度の高い高域再現

【製品批評】TAD「TAD-ME1」 ー サイズを超えた低域、空間再現性が魅力の小型スピーカー

公開日 2017/06/23 16:06 角田郁雄
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製品批評


スピーカーシステム
TAD
TAD-ME1
¥500,000/1台(税抜)
※専用スタンド TAD-ST3-K 160,000円(ペア・税抜)



日本が誇るTADより、待望の小型ブックシェルフスピーカー「TAD-ME1」(Micro Evolution One、関連ニュース)が登場した。

本機はEvolutionシリーズの理念を継承し、新開発の16cmウーファーと9cmCST同軸ドライバーを搭載することで優れた空間表現能力とシャープな音像を実現。さらに独自のBi-Directional ADSポートの採用で、サイズを超えた豊かな低音域再生も獲得している。この高い品位が早々に認められ、オーディオ銘機賞2017「銀賞」を見事に受賞した。

ピアノフィニッシュ仕上げで格別に強固なキャビネットは、空間再現性に貢献し、S/Nも下げ、静けさを引き出すサイレント・エンクロージャーだ。コーナーは丸く、音像を不明瞭にする回折効果も排除。側面には、ウーファーの背圧を排出するポートがあり、その上にスチール製のカバーが固定され、わずか3mmの隙間から背圧が前後に放射される仕組みだ。一般的なバスレフのような低域強調感がなく、密閉型のように低音はリニアに伸び、自然に減衰する。もやけた低音は出さず、透明度が高い。

側面には、ウーファーの背圧を排出するポート「Bi-Directional ADSポート」を配置。その上にスチール製のカバーが固定され、わずか3mmの隙間から背圧が前後に放射される

CST同軸ドライバーは、中心に鍛造のベリリウムトゥイーターを配置し、その周囲に9cmマグネシウム・ミッドレンジを配置する。ミッドレンジ自体がトゥイーターのウェイブ・ガイドとなり、指向特性を揃えることができるから、高域と中域ユニットの相互干渉を発生させず、音像定位に優れている。

ウーファーの表面には軽量で非常に硬度の高いアラミドの織布を、裏面には異素材の不織布をラミネートしている。また、微細信号も正確に再現する高いリニアリティを実現するために、磁気ギャップの均一性とギャップ近傍の磁気密度の対称性を高めるLDMC磁気回路を搭載。磁気ギャップ外の磁気分布までも対称にするため、鉄製ブロックから最適なポールピースまでも新規に製作し搭載した。

ボイスコイルボビンもチタン製で放熱効果が高い。W字のように織り込んだギャザードエッジは瞬時の大音圧でも開放的な低音に貢献し、弱音信号も逃さない。

静かな曲を再生すると、いつもより微細な動きや物音がクローズアップされ、奏者や歌い手に生々しいリアリティを感じるだろう。しかも空間が広く、奥行きも深いことも体験できるはずだ。

壮大なオーケストラや躍動感に溢れたジャズやロックを再生してみれば、このサイズとは思えない量感たっぷりの低音がリニアに迫ってくるだろう。しかも不快な歪み感は皆無。TAD-ME1は卓越した空間性と高解像度特性を備えた、ダイナミックレンジが広いスピーカーだ。

(角田郁雄)

Specifications
●型式:3ウェイバスレフ・ブックシェルフ型 ●ユニット:16cmコーン型ウーファー、同軸9cmコーン型/2.5cmドーム型ミッドレンジ/トゥイーター ●再生周波数帯域:36Hz ー 60kHz ●クロスオーバー周波数:420Hz、2.5kHz● 出力音圧レベル:85dB(2.83V・1m)●最大入力:150W ●公称インピーダンス:4Ω●ユニット極性:低域(+)、中域(+)、高域(+)●サイズ:251W×411H×402Dmm ●質量:20kg



※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」163号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから

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