【特別企画】“部屋をつくる"オーディオルーム・プロジェクト

リフォームで造る「すべてを満たした極上のオーディオルーム」。鈴木 裕が訪問レポート!

鈴木 裕
2017年03月08日
音響設計のプロフェッショナル集団、アコースティックラボが手掛けるオーディオルームを訪ねる本企画。「あくまでもベーシックな下地を作るだけ」というポリシーのもと、同社が設計したリスニングルーム。そのオーナーはどのようにして出会い、活用し、音楽を楽しんでいらっしゃるのか? オーディオ評論家の鈴木 裕氏が実際に訪ね、“部屋"の重要性を伝えながら、オーディオの本当の楽しさをお届けしていく注目連載。第2回目は神奈川県に在住の小久保弘さん宅を訪ねてみた。

アコースティックラボが手掛けた小久保さんのオーディオ&シアタールーム。家自体は2015年の5月に積水ハウスで建てる。建設と同時にアコースティックラボにオーディオルームの内装を依頼。工事をしながら設計して、小久保さんの要望を聞きながら作業を進め、こちらは同じ年の8月に完成

2階部分にリフォームで造る
すべてを満たした極上の空間


■オーディオ、音楽、映画の3つの愉悦にひたれる部屋

神奈川県にお住まいの小久保弘さん。お仕事については伺わなかったが、帰宅できるのは21時過ぎのことが多いという。そして22時くらいから映画や音楽を楽しんでいる。

もちろん翌日の仕事のためにあまり夜更かしをするわけにはいかないが、その3時間程は密度濃く、オーディオ、音楽、映画の、3つの愉悦にひたる時間だ。ある意味、その3者を取り持つのがオーディオルームと言っていいかもしれない。

2016年の夏にこの場所に家を建てる前はマンションで暮らしてきたという。お母さまとお姉さまとの同居である。20歳代の頃からオーディオが好きで、徐々にエスカレート。マンション時代からB&Wの「800D」を使って来た。このスピーカーに対する思い入れはとても強く、ステレオ再生用に1セット。サラウンドマルチのセンタースピーカーとしてもう1セットを購入。1本売りをしていないため1本は余ってしまうが、使わずに置いてあるほどだ。

■フォーラムで衝撃を受け専用ルームの建設を決意

しかしそこまで強い思いを持って使っているのに、専用の部屋がないために小さめの音量でしか鳴らせず、しかも音自体にも満足できていなかったという。これは大問題である。

家族や周囲の人たちに気づかって大きな音を出せないストレスもあったが、同時に音自体にも問題があり、それはコンポーネントの質ではなく部屋の問題だと感じていた。

今回新築した家は積水ハウスで、当初はシアタールームを得意とする業者などと相談した段階もあったが、小久保さんが納得することは出来なかった。そのタイミングでアコースティックラボの主宰するAAF(アコースティック・オーディオ・フォーラム)の存在を知り、参加したのだった。九段にあるショールームで行われたイベントだ。

その一室では、小久保さんの所有する800Dよりも小型の、同じくB&W「805D」が豊かな低音を響かせて、朗々と歌っていた。これに衝撃を受け、800Dがきちんと鳴る部屋を造ってもらおうと決意したのだった。

■すでに設計が終わった段階の限られた条件でも対応できる

建物の基本設計をする段階から相談できれば、たとえば一階にAVルームを設定し、床を1段下げることによって天井の高さを確保でき、音響的にクセの少ない寸法比率に整えることができる。しかし今回、基本設計の段階は終わっており、AVルームは2階に設置することが決まっていた。

しかも天井にはX状に太い鋼鉄のワイヤーが入っており、天井の高さや形状にも制約が。そんな中での設計だ。逆に考えると、いま住んでいる家を改装してAVルームを作りたいと考えている方にとっては参考になる話だ。

天井にはX状に太い鋼鉄のワイヤーが入っており、高さや形状にも制約があった。アコースティックラボはこのX状のワイヤーを避けて、視覚的に天井が高く見えるようなデザインを採用。天井はいちばん高いところで2.3m。前の方は少し低くなっている

この部屋を担当したアコースティックラボの音響デザイン室プランナーの野氏は語る。

「今回のような住宅の2階で、しかもリフォームであっても十分な防音性能が得られるため、オーディオもホームシアターも気兼ねなく楽しむことができます。また、リフォーム工事の場合、天井高をはじめとして、様々な制約があることが多いですが、そうした条件下でも音響的に優れた部屋の設計は可能です」

■しっかりした低音を目指し床・壁・天井を高剛性化

その仕様を短くまとめると、壁、天井などは面としての密度を高めることによって反射音の歪みを低下。床には堅い木材であるカリン材を使用し、スピーカー側と聴き手側の床を分けることによって振動を遮断している。

カリン材の硬い床はスピーカー側と聴き手側を分けることによって振動を遮断

床、壁、天井を高剛性にすることにより、部屋の“太鼓現象"による低域吸収を低下。しっかりとした低音を目指している。

ケーブル類は床下を通して接続することも可能になっている。電源コンセントも床下に埋め込まれている

また「内装に自然素材を全面的に採用しました。レンガ、漆喰、そしてカリンなどです。ピュアオーディオ派と伺いましたが、本格的なシアターシステムも導入、メインスピーカー以外はビルトインしています。デザイン的には天井が低めですので、リスニングポイントに座った状態で見える風景として、スピーカー背後の壁は重心が低く見えるように工夫しています」と野氏。

音を出さなくても、入っただけで居心地のいい部屋で、デザインも素晴らしい。

木製柱の中には壁に埋め込まれたマルチチャンネルスピーカー(LINN製)を設置。この木柱には吸音パネルもはめ込まれている

■最適な響きと細かい描写力。音色感もたっぷり引き出す

それにしても贅を尽くしたコンポーネントたちである。プレーヤー系はエソテリックでまとめられ、基本的にはグランディオーソシリーズを選択。SACDマルチ用のデジタルプレーヤーとして「X-01D2」も使っている。そのため、マスタークロックも「Grandioso G1」ではなく、「G-01」を選んでいる。

アンプ系はアキュフェーズで、「C-3850」に「A-200」をなんと6台使用している。800Dをバイアンプ駆動するために、6チャンネル分をまかなっているのだ。他にマルチ用としてリンのアンプも見えない部分にセッティングしている。

スクリーンを下ろした状態の部屋。アキュフェーズのプリアンプ「C-3850」やエソテリックの最高峰GrandiosoシリーズのSACDトランスポートとDAC、クロックジェネレーターG-01等々豪華なシステムが揃っている。パワーアンプはアキュフェーズA-200を6台使用し、3台のB&W800Dをバイアンプ駆動

聴かせてもらったが、声の描写など、テクスチャーのキメの細かさをよく再現。ストリングスの瑞々しさなどさすがの音色感だ。響きの量は適切で、スペクタクルな映画の派手な音作りにも整ったレゾナンスを感じさせた。

SACDマルチとしてユリア・フィッシャーがソロを弾いているペンタトーンのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を聴かせてもらったが、自然に包まれた感じで、響きの広がり方がきれい。小久保さんの「女性ヴォーカルのなんとも色っぽい感じが好きなんですよ」というコメントも納得できる。

「こういう部屋を作っていただいて、毎日、映画、音楽を楽しんでいます。時には家族と映画を見るんですよ。おかげさまでさらにいいコンポーネントが欲しくなってしまうんです。今、スピーカーを800D3にしようか迷っています。また2セット買って、1本を余らせておくのはどうなんだろうと、ね」と小久保さん。しかし、その表情はうれしそうだった。

部屋のデザイン、居心地の良さ、音に対する配慮。総じて言えば、こうしたものが合わさってオーナーを幸せにしているAVルームである。



<オーナーさんから一言>
このリスニング&シアタールームはすでに家の設計が終わった段階からお願いしたため、職人さんには大変ご面倒をかけてしまいました。本当にお世話になりました。

また、アコ-スティックラボの野さんや草階さんにも工期や条件(床材や天井高等)の問題や快適空間実現に向けてのアドバイスをいただき、本当に感謝しています。


<アコースティックラボ 今後のイベントスケジュール>
今回の記事で紹介した小久保さんも参加したアコースティックラボの試聴会「アコースティック・オーディオ・フォーラム」。その最新回が3月25日(土)に開催される。また、その前週3月18日(土)には番外編イベント「オーディオライブin蔵前Village」も開催。

会場はどちらも蔵前の同社新ショールーム。開催スケジュールは下記の通り。その他詳細は公式サイトから確認できる。

・3月18日(土)「オーディオライブin蔵前Village
 1部:13時〜15時
 2部:16時〜18時
 テーマ:オーディオにおける電源の重要さとは?(オヤイデ電気コラボイベント)

・3月25日(土)「アコースティック・オーディオ・フォーラム
 1部:13時〜15時
 2部:16時〜18時
 テーマ:防音工事をすると音がよくなる!? 音が良くなるように設計すると、防音性能が良くなる



【問い合わせ先】
(株)アコースティックラボ
TEL/03-3239-2021

(※本記事はオーディオアクセサリー164号からの転載記事です)