[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第162回】「ポタ研2016夏」で高橋敦が気になったものベスト5を大発表!

高橋 敦

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2016年08月05日

【第1位】電圧とは、正義。サブミニ管ポタアンOLD TIME

小型高性能真空管「サブミニチュア管」を名の由来とする主に自作系な共同ブースが「Subminits」。その中でも今回特に存在感を発揮していたのがこちら、プロコムパーツドットコムのお弁当箱ポタアン「OLD TIME」だ。

ポタアンにしては大柄なこともあり、遠目にも明らかに目立つ

電源はギターエフェクターなどで一般的な9V角形(006P)と世間で一般的な1.5V単三を各1個

まずは「なぜ電池ふたつ?」が気になるかと思うが、単三電池の方はサブミニチュア管のヒーター電源専用とのこと。真空管を動作させるにはヒーターという箇所にも電源が必要なのだが、この部分は電圧は低くてよいのだが電力消費は大きい。そこでその部分だけ電池を独立させることで、他の部分と電源の負荷を分散しつつ駆動時間を伸ばしたというのだ。

なおアンプの構成、経路としては、まずサブミニチュア管で真空管の旨味を生かし、その後はソリッドステート。FETを使った回路でインピーダンスを下げ、そしてオペアンプで最終的な増幅を行っているとのことだ。

さてアンプ回路を駆動する9V電池からの電力は、サブミニチュア管に入れる前に昇圧回路で30Vまで引き上げてあるという。

こちらが主役のサブミニチュア管。この写真ではキット製品に標準付属するひとつ「JAN5678」管を搭載しているが、ここは差し替え可能となっている

でかい銀色の方が1980年製オイルペーパーコンデンサー、小さな緑色の方もビンテージなフィルムコンデンサであるERO「1813」

とりあえず真空管を動かすだけならもっと低い電圧でも動くには動くし音は出る。しかしそれでは真空管ならでは、そして真空管本来の特性は発揮されない。十分に高い電圧をぶち込んで少し無理をさせるくらいでこそ持ち味が発揮され、よい音が生まれる。真空管の寿命は短くなるが…

…というのが設計者の弁だ。こういった考えは例えばエレクトリックギター周りでは一般的だが、ポータブルオーディオとなると製品寿命とバッテリー駆動時間、どちらの観点からも実践はしにくいところだろう。だがそれをやる!

で、次に目立つのはこのあたり。

僕は回路には疎いのでどの部分にというのはわからないが、おそらく音質への影響が大きいであろう箇所には、ビンテージ品のコンデンサを採用している。特にオイルペーパーコンデンサーは経年での容量抜けも起きやすく、回路に必要な実際の容量を保った個体の発掘や選別にも苦労があるだろう。一応キット製品として販売されるものではあるが、大量生産を前提としない製品だからこそ採用できるパーツと言える。

実際、他の多くの要素を度外視しているだけあって音はガツンとよい。ワイドレンジだとかクリアだとかそういう軸ではなく、生々しさだとか押しの強さが凄まじく、強烈な存在感に圧倒される。演奏や録音だけではなく、アンプの作り手の意思もまとめて受け止めるような聴き方を求められる。そんな強烈さだ。

筐体が簡素であるからか外来ノイズっぽいものも明らかに聞き取れたりはするのだが、作り手が様々なことを度外視しているのだから聞き手の方でもそれくらいは度外視すればよいだろう。

「細く長くではなく太く短くよい音を楽しむため真空管には高電圧をぶち込む」
「大量確保は無理なビンテージコンデンサーでも音がよければそれを使う」

こういった選択は生産性や数量を考慮しなくてはならないメーカーには無理な話で、いやそもそもサブミニチュア管という時点でそうなのだが、とにかく趣味性が高い。「ポタ研」という場へのふさわしい似つかわしさという観点から、こちらを第一位とさせていただくことにした。

■終わり

ということで今回も見応え聞き応えのあるポタ研だった。「ポタフェス」翌々週という過密日程だったが結果的には、こちらポタ研ではポタ研のポタ研らしさ、手作り感がより際立ったようにも感じられ、それも嬉しいポイントだったかもしれない。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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