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アニソンオーディオ:第7回

ハイレゾ発売目前に「東亰ザナドゥ」をハイレゾで聴いてみた

公開日 2015/10/27 10:30 橋爪 徹
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●ハイレゾで聴く『東亰ザナドゥ』

東亰ザナドゥは96kHz/24bitで制作されたハイレゾマスターが配信される。サントラのリリースに先駆けて、ハイレゾ音源の一部を聴くことが出来た。以下の2つのポイントを交えつつ、いくつかの楽曲を紹介したい。

『東亰ザナドゥ オリジナルサウンドトラック』(CD版:\2,980/税別、DL・ハイレゾ版:\2,700/税込)

ポイント1 紹介するに当たって過去の作品と比較をしてみた。ファルコムのハイレゾ作品のなかで48kHz/24bitで制作されていた『英雄伝説 閃の軌跡』シリーズ、その初代『閃の軌跡』と『閃の軌跡II』から、レビュー曲に傾向の近い楽曲を選んでいる。近作の『英雄伝説 空の軌跡 FC Evolution』ではなく、より初期の作品と比較することで進化を確認したい。

ポイント2 BGMだけに“ながら聴き”の例も合わせて添えてみた。これはメロディーが親しみやすく、テーマや情景、心情がはっきりと表れているファルコム音楽だからこそオススメしたい楽しみ方だ。私自身、よくBGMとして流しているが、日常の家事が違った楽しみに変わったり、見慣れた景色が新しい刺激を与えてくれたりする。



●「Believe It!!

ファルコムといえば、やはりバトル曲だろう。とてつもなくカッコいい。思わず身体を揺らさずにはいられない。スカッとしたいときに聴くといい。音量を上げて聴くともう自室はライブ会場だ。とても人には見せられないが、ヘッドバンキングで盛り上がると小汗とともに何か不思議な開放感がある。お手軽な心身解放と言いたい。

音質面は、まず低域の重心の低さに驚く。音が太く厚い。単なる音量勝負ではこうはいかない。分離感、奥行きの深さ、左右の広がり感は、閃の軌跡のバトル曲「Exceed!」でも十分に良かったが、まだまだできるとばかりに一層の進化を魅せてくれた。また、音場が広々と開放的になっている。エレキギターの音は純度が高く緻密だ。




●「X.R.C

こちらはイベントや日常のシーンで流れる楽曲。屋外で散歩しながら聴くのがよさそうだ。X.R.C(XANADU Research Club)は不思議探求を目的とする部活の略称なので、現実世界でも思わず注意深く見慣れた街を観察してしまいそう。疲れているとつい下ばかり向いて歩いてしまいがちだが、適度に辺りを見回しながら歩くというゲーム内では当たり前の行為が新たな発見をくれるかもしれない。

閃の軌跡の「放課後の時間」と比較すると、本楽曲は音場空間の拡大によって全体にゆとりが生まれたのを感じる。各楽器がクッキリと描写され、パーカッションも明瞭だ。96kHzの大きな器でミックスされたことによって、打ち込み楽曲も聴き心地良く進化したといえる。





「Wish☆Wing」も収録される3曲入りミニアルバム『Seize the day/SPiKA』 (CD版:\1,000/税別、DL版:\750/税込、ハイレゾ版:\1,000/税込)
●「Wish☆Wing

無性に感傷に浸りたいとき、ファルコム作品のバラード曲は最適だ。自分も傷心のとき『空の軌跡 SC』のED曲「I swear...」にずいぶん救われたものだ。

「Wish☆Wing」は、仲間と困難を乗り越えついに実現したとあるイベントで流れる挿入歌として、心に染み入るバラードに仕上がっている。ハイレゾとしてのフォーマットこそ閃の軌跡IIの「I'll remember you」と同じだが、解像度や空気感がアップしている。音数が多いときも前後の奥行きを生かすことでゴミゴミとした印象を抱かせない。劇中アイドル「SPiKA」が歌う曲だけに現代的な音作りを感じるが、生音の質感やダイナミクスはオーディオで聴く価値が十分にある。ボーカルのきめ細かさ、生々しさは特筆したい。



これだけこだわって制作された楽曲は、実際にゲーム中で流れたときも明らかに従来のファルコム作品より高音質であった。

ここで先ほどの疑問に答えたい。ゲームで流れるBGMはデジタル音源が多く、しかもマスターデータからは圧縮されている。情報が間引かれていれば、せっかくの高音質も無駄かと思えるがそうではなかった。“面影が残る”というとオカルトチックだが、大元が良質なら最終結果も変わるのだと私は声を大にして言いたい。それは特に空間表現で顕著である。仮想世界への没入感が違うのだ。

高音質化は、決して無駄ではない。それはゲームプレイにおいては演出効果を確実に高めているし、サウンドトラックを聴けば音楽単独でも十二分に楽しめる、まさに一石二鳥と言えるわけだ。

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