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様々な入力系統や機能をテスト

ティアック「NT-503」レビュー。“Reference”に加わったネットオーディオ対応の多機能機

公開日 2015/10/27 10:19 土方 久明
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ヘッドホンの音質を試す

次に、ヘッドホンアンプ部について確認したい。今回は編集部が用意してくれたゼンハイザー「HD 650」(オープンエア型・インピーダンス300Ω)に加え、私物のSONY「MDR-Z1000」(密閉型・インピーダンス24Ω)、V-MODA「M100」(密閉型・インピーダンス32Ω)、GRADO「RS1i」(オープン型・インピーダンス32Ω)などいろいろなキャラクターのヘッドホンを使用し、NT-503のヘッドホン駆動力、音色傾向を確認してみた。

ゼンハイザー「HD 650」などを使ってヘッドホンアンプの実力も確かめた

ソースはJ-POP、ジャズ、クラシック。それをPCからのUSB接続とフロント部に接続したUSBメモリから再生したのだが、インピーダンス300ΩのHD 650でも十分な駆動力を発揮した。音については、どのヘッドホンでも、すべての帯域で音に密度と、適度に力感のある音色傾向だ。ボーカルの定位やオーケストラの音場の広がりもバランスが良い。この力感は、とってつけたような装飾的な音ではなく、しっかりとしたアンプ部によってしか表現できない類のものだ。

NT-503のヘッドホンアンプ部は、ネットワーク再生機能を実装するために簡略化したとアナウンスされていたので、少々不安だった。しかし実際には、バランス駆動型ヘッドホンには対応しないとはいえ、UD-503と同様の500mW+500mW(32Ω負荷時)の駆動力を持つヘッドホンアンプをパラレルで駆動し、600Ωのハイインピーダンスヘッドホンにも対応させるなど、強力なドライブ力を備えていた。

ヘッドホン出力は、バランスには対応してないが強力な駆動力を備えていた

プリアンプ部の機能と音質

USB-DACにボリューム調整や入力切り替えなど、プリアンプの機能を持たせることは、最近のトレンドになっている。本機はD/A変換後のアナログ信号をボリュームアンプ部に至るまで全段バランス処理する「TEAC-QVCS(Quad Volume Control System)」を搭載するなど、プリアンプ部の性能に力を入れていることも特長だ。

アンプ内蔵のパワードスピーカーを組み合わせれば、それだけでシステムが完成するし、セパレートアンプやパワーアンプ直結機能を持つプリメインアンプを所有されている方であれば、ダイレクト化による音質向上を狙うことも可能だ。

本機とパワーアンプとを直接接続し、その音を確認してみたのだが、一聴して情報量が増すことが実感できる。プリアンプを通した時の音楽性が豊かな音も良いと思ったが、高解像度志向の音が好きな方はぜひ試して頂きたい。ただし、実際に試すときは本機のボリューム設定を必ず可変(Variable)にすることを忘れないように。今回の視聴でも、まずはプリアンプに接続した状態で音量の変化を確認してから直接接続を行った。

まとめ

NT-503の音調は、高解像度、ワイドレンジを軸としながら、適度な温度感をもたせた、オーディオ的に完成された音であった。同社のReferenceシリーズのセールスは好調と聞いていたが、今回レビューを行ってその理由も理解できた。

一言で言ってしまうと、今回レビューを行ったNT-503を始めとして、このシリーズは製品コンセプトがしっかりとしているのだ。

また、数々の機能は、単に装飾的なものではなく、実際に有用なものが多かった。CDドライブの呪縛から解放されたデジタルプレーヤーは、世界的にも小型化がトレンドとなっているが、同社のリファレンスシリーズはその中で最も成功しているグループと言っても良い。

このような魅力溢れる製品を老舗の国産メーカーであるTEACが出してくる事は、個人的にとても嬉しく感じている。

(土方 久明)

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