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DSDやBluetoothにも対応の一体型モデル

人気モデルがさらに進化し “完成形” に? マランツのネットワークコンポ「M-CR611」レビュー

公開日 2015/08/03 12:01 山之内 正
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バイアンプ駆動で実感した明確なアドバンテージ

手持ちのスピーカーがバイワイヤリング接続に対応しているなら、本機の4チャンネルパワーアンプをバイアンプとして活用し、低音と高音を独立して駆動することができる。今回組み合わせたCM1 S2にも独立した端子が付いているので、バイアンプ駆動に切り替えて聴いてみた。

CM1 S2とバイアンプ接続をしてM-CR611を試聴した

メニューの「スピーカー設定」でバイアンプ機能をオンにし、もう1組のスピーカーケーブルを空いている端子につなぐだけなので作業は難しくないが、スピーカー側のショートピンを外すことも忘れないようにしたい。

注目の音質だが、今回の再生環境ではアコースティック録音の音源で明確なアドバンテージを実感することができた。特に、『ジャズ・アット・ポーンショップ』のサックスやドラムのリアリティ、ピアノ協奏曲の弦楽器の弓の勢いなど、音の動的な要素がより生々しく伝わり、その結果として演奏の躍動感が増したように感じる。

4chアンプを使って、2系統のスピーカーをドライブすることも可能だ

バイアンプ駆動はハイクラスのシステムでも同様な効果を発揮することがあるが、M-CR611とCM1 S2のようなコンパクトなシステムでも効果を聴き取れるのは予想外のことだった。なお、2系統のスピーカー端子はバイアンプ駆動だけでなく、2組のスピーカーを鳴らす用途にも利用できる。リビングと寝室など、違う部屋で鳴らし分けたり、メインとデスクトップなど同じ部屋で2組のスピーカーを使い分けるスタイルもお薦めだ。

■正攻法でサウンドを磨き上げた一体型コンポーネント

M-CR611はネットワーク音源に加えてCDやUSBメモリーの再生にも対応している。後者はネットワーク再生と大きく音調が変わらないので、ここではCDの音について簡単に触れておこう。ネットワーク再生でも聴いたムジカ・ヌーダのヴォーカルは、CDで聴いても音離れが良く、ウッドベースのピチカートにスピードが乗っている。声の輪郭はCD再生の方が若干克明に感じるが、ベースはややイメージが大きくなる。そうはいっても、どちらも極端な差ではなく、ディスクとネットワーク再生の差はかなり小さい。

最後にスピーカーをフロア型のエラック「FS247 BE」に入れ替えて、もう一度ネットワーク再生で同じ音源を聴く。フロア型ならではのスケール感をどこまで引き出せるか、アンプの駆動力を確認することがここでのポイントだ。結論を先に紹介すると、少なくとも10畳程度の部屋で聴く限り、音圧と量感に不満を感じることはなさそうだ。バイアンプで駆動したこともあるのか、オーケストラは低音楽器の人数が増えたような厚みがあるし、ジャズはピアノの重量感やバスドラムのインパクトの強さが一気に向上。やや大きめのスピーカーを持っている人にも安心して薦められそうだ。

ELACのフロアスタンドスピーカーも十分に鳴らす

マランツは、製品カテゴリーにとらわれず正攻法で音を追い込むことにこだわるブランドだ。コストや物理的な限界はあるにせよ、そのなかで最善を尽くし、余計な演出や小細工をしない。

M-CR611もその例外ではない。実際に音を聴けば、時間をかけて音を追い込んだ製品であることはすぐわかる。一体型コンポだからといって手を抜かないのは、まさにマランツの流儀なのだ。

(山之内 正)

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