AKG倶楽部 レビュー

AKG「K495NC」レビュー − 音質を犠牲にしないノイズキャンセルヘッドホン

岩井 喬
2014年08月08日
折り畳みも可能なコンパクト・オンイヤー型ノイズキャンセルモデルの上位機が「K495NC」だ。ドライバーユニットの内側に騒音検知マイクを備えたフィードバック方式を採用しており、耳に近い位置でのノイズ成分をキャンセルできる。要所に金属製パーツを仕込むことで品位と耐久性の両面を追求。レザー調の仕上げを施したハウジングデザインも大人びた印象を与えてくれる。

AKG「K495NC」¥28,380(税抜)

ノイズキャンセルのON/OFFスイッチは左側ハウジングに設けられ、ハウジングの円周に沿ってスライドさせる機構を採用。ONのときは緑LEDが点灯する。内蔵リチウムイオン充電池はPCやACアダプターからチャージすることが可能であり、着脱式のケーブルも使用環境に合わせてチョイスできる2種類の長さ(1.2m、2m)を持つ布ジャケット採用ケーブルが同梱される。なおノイズキャンセルを入れていないときでも音は出力されるので、パッシブのヘッドホンとしても使うことが可能だ。

ハウジングのサイドのスイッチを回すことでノイズキャンセル機能のON/OFFを行う

K495NCのハウジング部はシボがあり質感が高い

ノイズキャンセル効果としては、中低域にかけて緩やかに効く印象である。バスや地下鉄、エアコン、街の雑踏などの騒音を抑える効果があるが、人の声にはキャンセルがかからないので、車内アナウンスなどは比較的明瞭に聴き取れるだろう。

ヘッドバンドやイヤーパッドはソフトレザー調合成皮革製で肌触りも良く、クッションもソフトな感触を持つ。取り回しで気をつけるポイントとしてはサウンド放射部の面積が小さいことだ。装着時には左右音量バランス、中央定位が揃うよう、最適な耳の位置に調整する必要があるだろう。

試聴にはAK120IIを用いたが、パッシブ時は中低域の密度を高めにまとめ、アタック感をややマイルドに表現。高域は無理なく穏やかに伸びる耳当たり良いサウンドだ。ボーカルはボトムの厚みもほんのりと乗せ、口元を滑らかにトレース。倍音のハリもわずかに効かせ、すっきりとした輪郭描写だ。ピアノやシンバルなどの高域は澄んだタッチでドラムセットにおけるスネアやキックの胴鳴りも適度な厚みを持たせている。

ノイズキャンセルを有効にすると中低域の厚みが増し、アタック感を抑えた落ち着きのあるサウンドとなる。クラシックのレヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』〜木星(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)では、管弦楽器の旋律が厚みを帯び、ややくぐもったように感じられるが、ハーモニーは豊かで音場はゆったりとした響きに満ちる。高域にかけ倍音の際立ちも僅かに感じられ、明瞭度は十分だ。ローエンドの響きも深くティンパニの皮のハリも細やかに浮き上がらせてくれる。刺激的な音を発しない聴きやすいオーケストラだ。

オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)においてはウォームでぬくもりあるハーモニクスを聴かせるピアノと朗々と豊かに響くウッドベースの胴鳴り感が心地よい。ドラムの低域はむっちりとした弾力を持ち、スネアブラシは奥まった場所から浮き立つような距離のある響きとなる。落ち着きのある密度の濃い音像だ。

デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)ではキックは弾力良く引き締まり、スネアのアタックもやや硬めに浮き上がる。ベースの帯域がリッチで押し出し感や量感を厚み良く表現。ボーカルやコーラスもボトムの厚みをしっかりと持たせ存在感良く描く。口元は滑らかできつさはない。ディストーションギターもザクザクと厚み良いリフを聴かせ、リードギターも中高域の倍音のエッジ感を丸み良くまとめるため、耳当たり良いサウンドとなる。シンバルの爽やかな浮き上がりも粒立ち良い。

続いてハイレゾ音源も確認してみよう。まずはイ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:四季』〜春(HQM:192kHz/24bit)のストリングスは流麗で倍音の際立ちが滑らかだ。チェンバロのタッチも粒が揃い優しげな響きを聴かせる。キメの細やかさとリッチなハーモニーを同時に味わえた。そして飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(e-onkyo:96kHz/24bit)では暖色系のハーモニーが全体を支配するが、管弦楽器の粒立ち良い旋律は細やかに浮き上がり、解像感の向上も感じられる。ローエンドの密度も高く、豊かなホールトーンに包み込まれるような音場の広がりも得られた。

女性ボーカルとしてカーペンターズ『シングルス1969-1981』〜トップ・オブ・ザ・ワールド(HD Tracks:96kHz/24bit)も聴いてみた。ストリングスやコーラス、スライドギターとの分離も良く、ボーカルは肉付き良い安定した描写となる。口元の艶は控えめで密度感の高さが際立つ。

ノイズキャンセル機能を有効にしたときとパッシブ動作のときとであまり音質の傾向に違いが出ないことが「K495NC」の特徴でもある。遮音性やノイズキャンセル効果が特に強力というわけではないものの、サウンド品位を大事にしたいというリスナーにとっては選択の価値があるモデルといえるだろう。