AKG「Q701」レビュー − AKG銘機の正統継承者でもあるクインシー・ジョーンズとのコラボモデル

岩井 喬
2014年05月23日
近年のAKGヘッドホンの中でも飛び抜けた人気を誇ったモデルが、オープン型ハイエンド機として長らく最上位に君臨した「K701」であろう。白を基調としたボディのカラーリングとヘッドバンドのブラウン、イヤーパッドのグレーという絶妙な色彩の取り合わせが高級感をさらに高めてくれていた。洗練された上品なデザイン性の高さも相まって、新世代のハイエンドヘッドホンのあるべき姿をいち早く我々に提示してくれた傑作モデルでもある。

Q701

そして現在までに、この「K701」を祖にするいくつかのラインナップが誕生した。まず、プロ用モニターモデル伝統のミニXLRプラグによるケーブル着脱機構を取り入れ、落ち着いたタッチのダークネイビーカラーを採用した「K702」が登場。その後2013年には、AKG創立65周年を記念した「K702 Anniversary Edition」が限定生産され、現行の「K712 PRO」に至るプロフェッショナルラインが築かれた。

一方、「K701」の正統な継承者といえるコンシューマーラインの最上位機が、この「Q701」なのだ。頭文字の“Q”が指し示すのは、アメリカの名プロデューサーであるクインシー・ジョーンズとのコラボレーションの証しである。マイルス・デイビィスやフランク・シナトラ、さらにマイケル・ジャクソン『スリラー』『BAD』といったモンスターアルバムに加え、AKGのヘッドホンを着けた姿でレコーディング風景が収められている「ウィー・アー・ザ・ワールド」のプロデューサーとしても知られる。

カラーバリエーションは3タイプ。どれも鮮やかな蛍光グリーンを取り入れているのが特徴だ

録音現場で長年AKGのモニターヘッドホンを用いてきたというクインシー・ジョーンズとのパートナーシップを記念し企画されたシグネチャー・ラインは、鮮やかな蛍光グリーンをポイントカラーとした独創的な配色を採用。随所に彼のロゴマークが施される。この「Q701」に関してはホワイトとブラック、そしてグリーンのカラーバリエーションが用意されており、ヘッドバンドは本革仕様で「K702」と同じ着脱式ケーブルが採用された。さらに装着性についても改善されており、セルフアジャスト機構の伸長範囲が拡大したため「K701」や「K702」で問題となることが多かった頭頂部へのストレスが緩和されている。

ハウジングにはクインシー・ジョーンズとのコラボを示す「Q」の文字が。

ヘッドバンド部にも「Quincy Jones」の文字が。機構も改善し装着感が向上した


ロングセラーモデルらしい安定したサウンド
ウェットな質感表現の魅力は今なお衰えない


サウンド面でもK701/K702から一層練り込まれたバランスとなっており、落ち着いた低域の厚みやしなやかな質感描写により磨きがかかった。iBasso Audio「HDP-R10」と接続して試聴を行ったが、レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』〜「木星」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)では管弦楽器はきめ細やかでハーモニーは緻密に展開。ティンパニの皮のハリも良く、ボディの響きも適度にダンピングが効いている。低域は程よく膨らみ、バランス良く融合。余韻の階調も細やかで奥行き感もナチュラルだ。

ジャズのオスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)のピアノはクリアでアタックの階調細かくボトムの厚みもしっかりと表現。定位感も克明で、ハーモニクスの響きも深い。トライアングルはクリアで澄んだタッチ。ウッドベースの弦のたわみもリアルで胴鳴りも弾力良くコントロール。そしてドラムの密度感、スネアブラシの浮き立ちは粒細かく立体的だ。解像感、S/Nも見事で、ほんのりむっちりとしたローエンドが耳当たり良い味わいとなる。

デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜「メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)におけるエレキのザクザク感はキレ良くミュートも引き締まる。リヴァーブ感も見やすく、ディストーションの質感も丁寧だ。キックやベースの密度高いアタックは膨らみ良く、スネアやシンバルのタッチも余韻の階調細かく素直に浮かぶ。ボーカルはボトムをナチュラルに表現し口元はハリ良くクールに際立つ。AOR的な穏やかさも感じられた。

ハイレゾ音源として『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜「届かない恋」「夢であるように」(192kHz/24bit・WAV)も聴いてみたが、カウントから臨場感があふれ、ホーンやシンバルはクリアでディティール細やかに描かれる。厚みや定位感もリアルで、ウッドベースやキックドラムは引き締まり良く、輪郭もくっきり。ピアノの存在もリアルでキレ良く余韻はクリア。アンビエントは自然な浮き上がりで響き良く拡散してゆく。ギターのクリーントーンもふくよかに響き、爪弾きのエッジもくっきりとしている。一方ボーカルは鮮度良く浮き立ち、ボトムも肉付きナチュラルで瑞々しくしなやかなタッチでまとめられている。リヴァーブの有機的な響きも見事で空間性を緻密に表現してくれる。

イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:四季』〜「春」(HQM:192kHz/24bit・WAV)の弦は爽やかに浮き立ち、抑揚良く広帯域に渡って制動良くコントロール。チェンバロのきめ細やかなタッチもクリアで瑞々しく浮かぶ。ローエンドもすっきりとまとめ、広く広大な音場が展開。煌びやかな弦の倍音も程よいバランスで、輪郭のクリアなヌケ感が良い。

飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(e-onkyo:96kHz/24bit・WAV)においては、アタックがキレ良く決まり、管弦楽器の旋律はハリ良く鮮やかに浮かぶ。繊細できめ細やかなタッチは流麗だ。ローエンドは引き締まり、ホールトーンは自然で弾力に満ちる。音場は広がり良く奥行き感も深い。スムーズで開放的な空間表現で、抑揚良くS/N高い音場が展開する。

シカゴ『17』〜「ワンス・イン・ア・ライフタイム」(e-onkyo:192kHz/24bit・FLAC)ではベースは引き締まり、ホーンやクリーンギター、シンセが前後感良く浮かぶ。定位も明確でボーカルはすっきりと付帯感ないハリ艶良い口元が浮かんでくる。音離れ良く、音像もすっきり。シンセやリヴァーブの澄んだ瑞々しいタッチも美しい。

発売から時間が経つロングセラー機らしい、安定度の高いサウンド傾向であり、そのウェットな質感表現の魅力は今なお衰えていない。

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