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【特別企画】野村ケンジが組み合わせテスト

人気のハイレゾ対応ポタアン5機種、ゼンハイザーのヘッドホンでマッチング検証

公開日 2014/03/11 13:37 野村ケンジ
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「IE800」 − ハイエンド機では異例なほどの万能選手

数多あるゼンハイザー製イヤホンのなかでもフラグシップに位置する「IE800」は、スマートフォンでも十全なバランスのサウンドが楽しめつつ、アンプ側の実力が向上すればするほど本来のクオリティを発揮してくれるようになる。

ゼンハイザーのカナル型イヤホン最上位機「IE 800」

要するに、敷居は低いものの奥行きがとてつもなく深い、ハイエンド製品としては異例と言いたくなるほどの万能選手。そのため「AK10」や「AT-HA30USB」と組み合わせても、内蔵ヘッドホン出力から確実にグレードアップしたサウンドが楽しめるが、本領を発揮し始めるのは「nano iDSD」あたりから。「IE800」ならではの、トランジェントに秀でた、尋常でないほどキレとフォーカス感に秀でたサウンドが聴こえてくるようになるうえ、低域の量感もジャストなバランスとなるため、グループ感がとてつもなく向上。ノリの良いサウンドが楽しめる。PCとの接続をメインにするのであれば、「nano iDSD」も悪くない選択肢だ。

だが「PHA-2」に交換すると、もしかして「IE800」を試聴機のひとつとして仕上げたのでは、と思えるくらいピッタリの相性を示してくれた。低域はやや厚みが強まる傾向があるが、S/N感、フォーカス感ともに秀でたサウンドになり、同時に中高域の解像感がさらにアップ。迫力満点でありながら、音色的なリアルさ充分の臨場感溢れるサウンドを堪能させてくれるようになった。

「IE80」 − ポタアンでさらに活き活きとした音に

基本的に、内蔵ヘッドホン出力での利用は重視していないのかもしれない。「IE80」は低域ボリュームを調整できるため、こちらである程度はフォローすることもできるが、ポタアンを活用すると、さらに活き活きとしたサウンドに変化。ダイナミックな表現の、力強い演奏を聴かせてくれるようになった。もともと解像度が高いためか、そういった性格の製品と相性が良かった。「AK10」や「AT-HA30USB」も音に勢いやキレがあって悪くなかったものの、「nano iDSD」と組み合わせたとたん、明瞭度が高く、かつ情報量の豊富なサウンドとなった。特に弦楽器が、響きの良さと情報量の多さが絶妙なバランスとなってくれた。

「IE 80」。低音の鳴り方をコントロールすることが可能だ

一番相性が良いと思ったのは「PHA-2」。音の厚み、勢いの良さなどは他の製品に対して一歩抜きんでており、それでいて解像度感の高さも保たれたままだ。ハードロックのライブ演奏などとは抜群の相性だった。この鳴りっぷりの良さであれば、ダイヤルで調整できる低域のボリュームも最小で十分だ。

「IE60」 − キレの良いサウンドを披露する

「IE60」は、「IE80」に比べると内蔵ヘッドホン出力でもそこそこ鳴ってくれる汎用性を持ち合わせているが、それだと音質面ではやや心許ない印象がある。もっともこれは、さらに良い音で鳴ってくれることを知っている筆者ならではの感想かもしれないのだが。

「IE60」

ヘッドホンアンプを活用すると、さらに活き活きとしたサウンドになる。特に相性が良かったのが「AK10」と「AT-HA30USB」の2台。どちらもフォーカス感のしっかりした、キレの良いサウンドを披露してくれた。中域の厚み、実体感が内蔵ヘッドホン出力とはケタ違いなので、音が横に逃げず、こちらにまっすぐ突き刺さってくれるのがいい。これぞ「IE60」ならではの魅力、といったところだ。

「MOMENTUM On-Ear」 − どのアンプとも相性が良い万能タイプ

比較的鳴りやすい「MOMENTUM On-Ear」だが、ヘッドホンアンプを組み合わせると、とたんにダイナミックレンジの幅広い、抑揚に富んだサウンドとなった。ユニークだったのが、どのヘッドホンアンプを使っても良い音を聴かせてくれるものの、それぞれ少しずつ個性が感じられる点。「AK10」ではシャープでキレの良い、「HERUS」では繊細な表現を得意とする、表情豊かなサウンドを楽しませてくれた。

「MOMENTUM On-Ear」は豊富なカラバリを揃えていることも魅力だ

なかでも相性が良かったのは「AT-HA30USB」。解像感の高さや表現力の繊細さは他のポタアンに劣るものの、ダイレクト感の高いダイナミックな抑揚表現を持つ、活き活きとしたサウンドを聴かせてくれたのだ。今回テストした中でも1、2を争うマッチングの良さだった。室内では据え置き型、屋外では(多少クオリティを犠牲にしつつも)「AT-HA30USB」でヌケの良い清々しいサウンドを楽しむ、というのが良さそうだ。

「HD650」 − しっかり鳴らし切るためにアンプを活用したい

音質最優先、音楽情報のすべてを正確に描こうとする「HD650」をしっかり鳴らそうとする場合、並々ならぬ努力が必要だ。決して“鳴りにくい”ヘッドホンではないのだが、実力が高いだけに、まだまだ行けるだろうと、もっといい音になるだろうと、さらに上を目指したくなってしまうからだ。つまり、正面からしっかりつきあいたい製品なのだ。

言わずと知れた名機、「HD 650」

今回のヘッドホンアンプも、それぞれ「HD650」の特徴を活かしていたため、どれも捨てがたかったが、逆にいえば、完璧にハマルというイメージまでには至らなかった。開放型ハウジングというキャラクターもあってか、やはり据え置き型のヘッドホンとの相性が良いようだ。

平たくいえば、「HD650」に相性ピッタリ、その実力を最大限に発揮してくれるヘッドホンアンプといえば、やはり据え置き型、そのなかでもゼンハイザー純正「HDVA 600」(もちろんUSB DAC内蔵の「HDVD 800」でもOK)が筆頭に挙げられるだろう。バランス駆動も含めて、「HD650」の実力を存分に発揮させるためには、こちらがベストといえる。

とはいえ、魅力的な組み合わせに感じた製品もあった。「AT-HA30USB」は、持ち前のダイナミックさ、駆動力の高さで、グルーブ感の高いサウンドを聴かせてくれたし、いっぽう「nano iDSD」は、多彩かつ細やかな表現の、上質なサウンドを楽しませてくれた。どちらもポータブルとしては出色のクオリティといえるし、屋外でもこのサウンドが楽しめるのは幸せだ。サウンドキャラクターが全く異なるため、あとは好みの問題だが、この2つあたりが「HD650」には向いていそうだ。



今回、ゼンハイザーのヘッドホン/イヤホンと、最新ハイレゾ対応ポタアンを様々な組み合わせで試してみたが、総じて感心したのがゼンハイザーのヘッドホンとイヤホンの音質的な実力の高さだ。内蔵ヘッドホン出力では、どことなく曇りのあるサウンドだったのにもかかわらず、ポタアンひとつで勢いのある、鳴りっぷりの良いサウンドにグレードアップされたのだ。

これは、ポタアンが高い実力を持っているというだけでなく、ゼンハイザー製ヘッドホンならではの懐の深さがうかがえる部分だ。音質最優先、または音質重視で製品を作り上げつつも、実際の環境にもしっかり配慮し、ちょっとしたひと工夫で魅力的なサウンドを奏でるようになるのだ。組み合わせるポタアンによって、音のキレが良くなったり、解像度が高まったり、ニュアンス表現が細やかになったりと、それぞれ持ち味の異なる良質さが味わえるのも嬉しい。

これは、その気になればいずれも、“完璧”な理想的サウンドを追求することも可能ということだ。それだけ高い実力をゼンハイザー製品、特に今回試聴した中〜上級モデルは持ち合わせているのだ。

(野村ケンジ)

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