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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第71回】'13年登場の「Lightningでミニマムなヘッドホンアンプ」2大機種を徹底比較!

公開日 2013/12/27 11:58 高橋敦
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■新しいデザイン&サイズ感!Astell&Kern AK10のスペック

Astell&Kern AK10は、何だか見慣れないデザインとサイズ感。

本機のアイコンとも言えるボリュームカーソルはアルミ製でこの季節はひんやりとしていて気持ちよい。

Lightiningケーブル等の接続端子。…これ何型端子? さておき端子周辺の凹みにケーブルの端子が埋め込まれてがっちりと固定されるのはナイス

デザイン面ではやはり中央の大きな円が目立つ。後述するがこれはボリュームコントローラーだ。DDA-L10RCBKが完全リモコン型で極度に小型なので比べると大きいが、しかしポタアン一般の中では十分すぎるほどに小型。

上記の接続端子だが、ここに付属のLightningケーブルやUSBケーブルを接続し、本機とiOS機器やPCとの接続を行う。ちなみに充電もこの端子経由でのUSB充電だ。また別売でAndroidスマートフォン等との接続用にUSB microBケーブルも用意されている。しかしこの端子形状、何という規格なのか謎。一般的に用いられているUSBのmicroBやminiBではないので、付属の専用ケーブルが必須だ。

Lightning接続用のショートケーブル。端子の先端が本体の凹みに埋め込まれる。他、USB接続用のロングケーブルも付属

操作性の面ではやはりボリュームコントローラーが特長。ボリューム表示の見かけとしては、iOS機器本体ボリュームボタンのように段階的にしか動いてくれない。しかし聴くと実際にはより細かなボリューム調整を行える。これは嬉しい。

その他の基本ボタン(再生/停止、曲送り、曲戻し)は側面に用意されている。小さめだがカチッとしたクリック感で押し心地はよい

上面にはイヤホン端子(3.5mm)と電源/ロックスイッチ。ボリュームの誤動作が心配な場合はロック!

スペック的なところも確認しておこう。

前述のようにLightining接続時、そしてもちろんPCと接続してのUSB-DACとしての利用時にも、DACとして最大96kHz/24bitに対応する。DACチップは高い評価を得ている同社のポータブルハイレゾプレイヤーAK100/AK100MKII/AK120と同じく、ウォルフソン社製「WM8740」だ。その後のアナログ回路にもAKシリーズのノウハウを投入。バッテリーは前述のようにUSB充電式。44.1kHz/16bitの再生時での駆動時間は11時間。

■Astell&Kern AK10の音質をチェック!

では音質チェック。CDフォーマットの音源を、iOS標準の「ミュージック」アプリで再生した。

まずは印象の概要をまとめておこう。iPhone 5直挿しと比べて全面的に印象が良いのはもう当然だ。DDA-L10RCBKが音を硬めに出してハードタッチ傾向であるのと比べると、少し和らいだ音調。同じDACチップの同社のハイレゾプレイヤーAK100MKIIと比べても少しソフトに感じる。しかしもちろん、それは不明瞭にぼやけた柔らかさではない。明瞭度や解像感といった要素も高めつつの柔らかさだ。大人の落ち着きや物腰を感じさせる上質な音調と感じる。

上原ひろみさんの「MOVE」では、ベースのゴリゴリとした感じはあまり出さなくなり、ニュアンスとしてはブリブリという方が近い。ドラムスもやはりガツンとした硬さではなくなるので、全体のドライブ感としてもしなやかになる。ロック的なドライブ感よりジャズ・フュージョン的なグルーブ感の印象が強まるとも言えるが偏りすぎるわけではなく、ロックのフィーリングも十分に表現。この演奏に対する表現のバランスとしては実に適当だ。

シンバルで刻まれる細かなリズムの描き込みは実に繊細。こちらの高音もしなやかな音色で、しかし芯はピシッと通っている。そのため音色の美しさとリズムの明確さが両立されており、ベースと太鼓と合わせてのこの曲の多層的なリズムを十分に楽しめる。

Perfume「Enter the Sphere」では、この曲の特徴的なほどに盛大なバスドラムの表現がよい。ややソフトタッチのボリューム感をまさに盛大に出しながらも、低音が緩く甘く広がるような音像にはしていない。そのおかげでこのバスドラムは、音場の土台を作り空気感を支配しながらも、しかしその上に配置される様々な音を邪魔しない。このサイズ感のポタアンとしては十分な制動力だ。ハードタッチに攻めるDDA-L10RCBKとは別の方向性で、アンプとしての駆動力を発揮している。

シンセのエッジ感の過激さは少し控えられる。荒さを直線的に強めに出すDDA-L10RCBKの方がこの曲の「らしさ」は引き出すかもしれない。しかし倍音がぶわっと豊かに放たれるような芳醇さについてはこちらが優位がある。こちらを好む方もいるだろう。ボーカルはただ単純に良い声だなと感じる。もちろん極端に加工されている声なのだが、それにしてもそう思わせる感触だ。

そこで坂本真綾さん「30minutes night flight」を聴くと、やはり声の感触はとてもよい。子音等を強く出して言葉を刺さらせる歌い方のそのシャープな成分。それを十分に出しながらも、それを耳障りな鋭さにはしない。その部分は試聴イヤホンDM008の特質であり美点でもあるが、それを存分に生かせている。イヤホンやヘッドホンの特長を引き出すというのはヘッドホンアンプのまさに本質的な役割のひとつだ。DM008に対してのAK10はそこを見事に見せてくれる。

次ページAK10のハイレゾ再生もチェック!

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