HOME > レビュー > 【第65回】ソニーのハイブリッドイヤホン「XBA-Hシリーズ」3機種を徹底聴き比べ

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第65回】ソニーのハイブリッドイヤホン「XBA-Hシリーズ」3機種を徹底聴き比べ

公開日 2013/11/05 12:41 高橋敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

・XBA-H3

Bombastic Meatbatsの「Need Strange」の迫力は圧倒的だ。ドラムスのアタックやキレが素晴らしい。例えばバスドラムの瞬間的なダブルストローク超高速連打での、その一打ごとの粒立ちの良さには特に感心させられた。このあたりは液晶ポリマーフィルム振動板やビートレスポンスコントロールといった、低音の反応を良くする技術の効果だろう。ドラムスもベースもだが低音の抜けも素晴らしいので、低音が音場に停滞するというか溜まってしまうような感じがなく、音場全体のクリアさも十分に確保されている。

シンバルはHDスーパートゥイーターのおかげなのか、荒っぽさはあまり出さずに(しかし特にソフトというわけではない)、綺麗な鈴鳴り感のある音色。こちらも素直に抜ける音色で、大迫力の中低域に埋もれることなく、細かなグルーブを届けてきてくれる。

Daft Punk「Give Life Back to Music」で聴ける音場の自然な厚みは、大口径ダイナミック型ならではのものだ。低音を稼ぐには他に例えば「BA型ドライバーを低音用に複数基搭載する」「空気室の容量や個数などアコースティックな調整を施す」といったものもある。もちろんそれらもそれぞれに効果的なのだが、大口径ドライバーの搭載は最も単純で根本的、それ故に素直な効果を得られる手法と言える。例えばベースに注目するとこのイヤホンは、どの曲のどの音域のフレーズでも音の厚みや膨らみが安定している。低音の再現性の自然な充実のおかげだ。

このイヤホンには合いそうだということで、Perfume「Spring of Life (Album-mix)」も聴いてみた。ここでもやはりキレがよく安定感もある低音が活躍してくれて、シンセベースが実に心地よくドライブ。この曲だと低音を中心に音場に微かな飽和があってブオンと唸る感じもあるのだが、それは音源の側がそのように作り込まれているからで、このイヤホンはそれを忠実に再現できている。散りばめられているシンセの様々な音色も、中高域のクリアさによって、それぞれが印象的に伝わってくる。シンセサイザー独特の艶やかさの表現も軽くこなしている。

宇多田ヒカル「Flavor Of Life -Ballad Version-」の声のほぐれ方は、それぞれが優秀な3モデルの中でもこれがトップだ。HDスーパートゥイーターの威力なのだろうが、声の倍音成分が実に柔らかく表現されている。高域の解像度を高めると音源のシャープさではなくソフトさが際立つ場合があるという、ひとつの例だ。また声の厚みも当然ながらこのモデルが最も秀でている。

装着感は、うまく装着できれば問題ない。ただ本体がかなり大柄であることと、一般的なカナル型イヤホンとは装着の角度が異なることから、装着には慣れが必要とは感じる。


というわけでSony XBA-H1/H2/H3を一挙に紹介させていただいた。個人的にはXBA-H1の価格まで含めたバランスの良さ、XBA-H3の圧倒的な迫力とそれに埋もれない細やかな表現力に強い印象を受けた。

ハイブリッド型は発想としては単純だが、それを実際に高い完成度に作り込むことは容易ではない。しかしXBA-Hシリーズはいきなり高い完成度で登場。最近なんか急にオーディオにかなり本腰で実際によい製品を連発しているソニーの、これもまた秀作だ。


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域 バックナンバーはこちら

前へ 1 2 3 4 5 6

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE