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<IFA>山之内 正が見たIFA2013 ー 盛り上がりを見せたオーディオ展示/ソニーの強い存在感

公開日 2013/09/18 10:46 山之内 正
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IFAの展示分野拡大と反比例して高級オーディオ機器の展示スペースは以前に比べて少なくなってしまったが、逆にポータブルオーディオやホームオーディオの展示はむしろ増える傾向にあり、若い来場者を集める原動力の一つになっている。ポータブルオーディオ、ヘッドホン、PCオーディオへの関心はドイツでも日本と同程度またはそれ以上に強く、オーディオ関連の展示は広大な会場のなかでも毎年ひときわ人気の高いスペースになっている。

この分野では日本メーカーの存在感が強いことも大きな特徴だ。今年の出展メーカーに限ってもヤマハ、パイオニア、ティアック、オンキョー、ソニーなど多くのブランドが欧州で根強い人気を持っている。ディーラーだけでなく、音楽好きなユーザーに製品の魅力を直接伝えられることもあって、メーカーの展示にも当然ながら力が入っている。たとえばヤマハは本格的なセパレートタイプのAVアンプからサウンドバーまで、幅広い分野に強力な新製品を多数投入する。

ヤマハは久々にセパレート型のAVアンプCX-A5000とMX-A5000を導入。CX-A5000はDLNA再生機能を内蔵し、MX-A5000は内蔵する11chアンプのチャンネル構成を自由に割り当てられることが特徴。


ヤマハが公開したネットワークプレーヤー内蔵レシーバー「R-N500」。FM/AMチューナーを内蔵し、出力はチャンネルあたり80Wを実現。ストリーミングサービスの受信にも対応する。

海外メーカーは欧州をはじめ各地域から様々なブランドが参加し、フィリップスやレーヴェなど大手メーカーもオーディオ機器にはかなり力をれている。また、日本の音楽ファンにとっては、ドイツの有力ブランドが勢揃いしたヘッドホン関連の展示はけっして見逃すことはできないだろう。さらに、カントンやクアドラルなどドイツのスピーカーメーカーも豊富なラインナップを展開しており、会場ではその全貌に接することができる。

展示分野は他のイベントと同様、サーバー一体型プレーヤーなどネットワークオーディオの新製品が相変わらず盛況で、日本には導入されていないブランドもいくつか見つけることができた。オーディオ好きならたっぷり一日かけて楽しめるはずなので、もしも9月初旬にベルリンに出かける予定があるなら、一度は訪ねてみることをお薦めしたい。筆者は5月のHighEnd(ミュンヘン)と9月のIFA両方の取材を続けているが、それぞれテーマや展示ブランドに個性があり、どちらも見応えがある。

オーディオ分野でもひときわ強い存在感を打ち出したソニー
“ソニーらしさ”に溢れた製品が多数登場


速報でもお伝えした通り、今年はオーディオ分野でもソニーがひときわ強い存在感を示した。「ハイレゾオーディオ」をテーマに掲げ、ウォークマンからハイクラスの単品コンポーネントまで、複数のカテゴリーに提案性の高い製品を発表したのだ。

コンポーネント以外にも「MDR-10R」をはじめとする多数のヘッドホン、ポータブルヘッドホンアンプ「PHA-2」、音楽収録に照準を合わせた小型ムービー「HDR-MV1」など、ソニーらしさを感じさせる製品群が公開され、思わず手にとって試したくなるモデルが勢揃い。一度にこんなに発表して、その後は果たして大丈夫かと余計な心配をしたくなるほどの勢いが伝わってきた。

ソニーのUDA-1はUSB-DACを内蔵するコンパクトなプリメインアンプ。DSD信号のデコードにも対応する。

ソニーはXperia Z1を大量に並べて「ワンタッチリスニング」の手軽さをアピール。同コーナーは操作感と音を確認する来場者でいつも混雑していた。


楽器演奏の高画質・高音質収録を狙ったHDR-MV1。NFCとWi-Fiに対応し、X-Y配置の高性能マイクを内蔵。レンズはツァイスのテッサーを奢る。
2台のHDDプレーヤーを中心とするハイレゾ対応製品群(関連ニュース1関連ニュース2)の重要なポイントは、それらの製品がたんにハイレゾ音源の再生に対応したということだけではない。現在の一般的な音楽再生環境を十分に研究・分析したうえで、パソコンの活用方法と、ハイレゾ音源のポテンシャルを引き出す方法を具体的に提案したことに深い意味があるのだ。

HDDオーディオプレーヤー上位モデルのHAP-Z1ES。ディスプレイの背景色はジャケット画像のデザインに応じて自動的に変わる。

なかでもHDDへの音楽データの転送を自動化し、パソコンを立ち上げずにデータ再生を実現するという手法は、DLNA再生、USB再生のどちらとも異なる第三のスタイルとして注目に値する。パソコンを起動せずに楽しめる使い勝手の良さやスマホやタブレットによる快適な操作性はDLNA再生との共通点が多いが、DLNA再生の場合、環境によってはデータの転送が不安定になるケースがないわけではない。

下位モデルのHAP-S1はプリメインアンプを内蔵するオール・イン・ワンタイプ。もちろん本機もDSD信号のネイティブ再生に対応する。

内蔵HDDから読み取ることでそのリスクを回避するという手法をソニーが選んだ背景には、幅広い音楽ファンにネットオーディオのメリットを伝えたいという期待があるのだろう。安心して楽しめるという点で、たしかにこの方法には長所があると思う。

音質面で注目すべきポイントはハイレゾ音源を含め、すべての音源をいったんDSD信号に変換することの意味である。その変換プロセスを経ることで音質が向上するのであれば、既存のネットワークプレーヤーにはない大きなアドバンテージを獲得することになるわけで、特にハイエンドクラスのネットワークプレーヤーを使っている音楽ファンは、トップモデル「HAP-Z1ES」のパフォーマンスが気になるはずだ。まだ日本では発表されていない製品なので検証にはもう少し時間がかかりそうだが、私自身とても興味がある。


ソニーがハイレゾオーディオに本腰を入れて取り組むことは大歓迎だ。速報でも触れた通り、他のメーカーや音楽業界の動向にも大きな影響を与えるだろう。そして、再生機器でここまでやるのなら、次はやはりハイレゾ音源の配信にも積極的に取り組んで欲しい。世界有数のコンテンツホルダーがハイレゾ音源の導入を加速させれば、音楽配信市場全体に大きな影響を及ぼすことは間違いない。

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