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DIGAに対応。専用アプリならではの使い勝手を実現

【レビュー】デジタル放送視聴アプリの真打ち登場? iOS版「DiXiM Digital TV」を試す

公開日 2013/04/26 11:33 海上 忍
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■レコーダーのトランスコード機能を活用

DiXiM Digital TVの再生テストは、iPhone 5とiPad miniを利用し、パナソニックの「DMR-BZT830」とSCEの「nasne」を対象に行った。どちらも動作確認リストに掲載されている製品で、「録画済み番組の再生」と「ライブチューナー」の両方に対応している。nasneはTwonky Beamにもサポートされているため、純粋にアプリ側の性能・機能比較が可能ということもある。

再生品質だが、レコーダーに搭載のチップが変換処理を担うこともあり、破たんのないクリアな映像を楽しめる。iOSデバイスのデコードチップはMPEG-2に対応せず、解像度がフルHDではソフトウェア的にデコード処理すると負荷が高いため、軽快な再生を得るにはトランスコード処理(コーデックをH.264に統一し解像度も下げる)が必要となるが、そのような舞台裏をユーザーにあまり感じさせない。

「あまり」としたのは、再生開始から映像を受信し始めるまで、十数秒程度のタイムラグを必要とするためだ。どの録画モードで録画しても、番組持ち出し設定をしないまま録画しても再生できるが、nasne以外の場合、録画番組の再生時には映像のトランスコードを伴う。前述したiOSデバイスの事情があるためやむを得ないが、この点が我慢できなければ、MPEG-2ハードウェアデコードに対応したAndroid端末を買い求めるしかない。

トランスコードによる画質劣化を心配していたが、理論的に放送波そのままのDRモードはもちろん、長時間録画モードでもそれほど気にならなかった。nasneはDRモードと3倍モード(ただし本編データとは別に480pの持ち出し用データを同時録画している)、DMR-BZT830はDRモードと3/5/15倍モードで録画した地上波放送で試したが、iPhone 5で視聴するかぎり、DRモードと3倍モードの差はほとんどなく、ビットレート約1.6Mbpsの15倍モードですら画質差はごくわずかという印象を受けた。ただし、iPad miniで15倍モードをフルスクリーン再生すると、服地が平坦な印象となりモスキートノイズも目立つようになるなど、再生端末側の画面サイズに起因した差はある。

DiXiM Digital TVはiPhoneとiPadに両対応するユニバーサルアプリということもあり、基本機能に差はないが、iPadで利用するときにはWebブラウザを画面下に表示した"ながら見"が可能となっている。情報番組をWebで確認しながら見るという視聴スタイルは、ありそうでなかったものだ。

iPadにかぎり、画面下半分にWebブラウザを表示することもできる

iPadの場合、番組リストやテレビ局のリストを確認しながら番組を視聴できる

Twonky Beamとの比較だが、再生指示から映像の配信が開始されるまでのタイムラグは、ほとんど変わりがなかった。これは、レコーダ側にトランスコードを指示する仕組み上、納得できるところ。画質・音質についても同様で、アプリによる差は認められなかった。特にnasneの場合、持ち出し用データが存在しないライブチューナはトランスコード処理を伴うものの、録画時は本編データとあわせ480pの持ち出し用データを作成するため(リストには非表示)、再生アプリの違いにより画質が変わる要素は見当たらない。

■まとめ

現在薄型テレビは、4K対応機などハイエンド/プレミアム指向のモデルと、価格が重要視されるモデルとの二極化傾向にある。そして国内メーカーは、画質に差をつけにくく製造コスト的にも不利な32インチ以下のモデルを絞り込む傾向にあり、意欲的な新製品は姿を消しつつある。

そのレンジを埋めるデバイスとして急速に存在感を高めているのが、スマートフォンやタブレットだ。DTCP-IPの運用方針転換は、その傾向に拍車をかけるもので、高いシェアを持つiPhone/iPadでデジタル放送を視聴できることのインパクトは大きい。

とはいえ、「iPhone/iPadでテレビ番組を楽しめるようになった」ことの認知度は低い。登場から日が浅いうえ、自社でスマートフォン/タブレットを展開するメーカーが他社製品の利用を積極的に告知しにくい事情もあるはずで、その意味ではやむをえない部分もある。

DiXiM Digital TVは後発ではあるが、ビデオレコーダー市場で一大シェアのDIGAシリーズをサポートする、という大きなアドバンテージがある。Android版でこれまで培われたノウハウも考慮すれば、安心して選べるアプリといえる。一方ソニー製レコーダーの場合、管理用アプリ「RECOPLA」と連携して動作するのはTwonky Beamのみという事情があるため、総合判断では微妙なところだ。

録画済番組の持ち出し機能(DTCP-IPムーブ)が未実装なことは惜しまれるが、デジオンは今後のアップデートで対応する計画だ。さらに宅外からの視聴を可能にする「DTCP+」のサポートについても計画しているというから、購入時の安心材料といえるだろう。

(海上忍)

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