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ゼンハイザーでしか味わえないサウンドがある

いま改めて知るゼンハイザー“3つの名機”の実力 ー 「HD 650/HD 800/IE 8」集中レポート

公開日 2011/12/15 11:25 レポート/高橋 敦
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試聴インプレッション − ゼンハイザー“3つの名機”のサウンドに迫る

それでは、「HD 650」「HD 800」「IE 8」のサウンドを順番に確認していこう。今回、筆者が試聴用のリファレンスに使った音源は、ジャズのピアノ・トリオから「Helge Lien Trio/Hello Troll」と、ポップスからは、「やくしまるえつこ/ノルニル」。試聴環境については、各モデルの真価をよりいっそう引き出すべく、十分な駆動力と音質を持ったラックスマンのヘッドホンアンプ「DA-200」を組み合わせた。

各製品の試聴はラックスマンのヘッドホンアンプ「D-200」を組み合わせて行った


HD 650:これぞオープン型と言える澄み切った音色

「HD 650」の音場は、まさにオープン型ヘッドホンの魅力を全て備えたものであると感じた。閉塞感がなく、すっと広がる音場がヘッドホンで楽しめる。


「HD 650」を試聴
中低音の柔軟な肉厚さも特徴的である。ジャズのウッドベースはアタックのゴリッとした感じを保ちながら、立ち上がりの瞬発力も備えており、音を詰め込んだフレーズの粒立ちも良い。ドラムスもやはり豊かな太さを見せるが、パシッとキレが鋭い。ベースは音程を下げていく場面でも、その最低音まで音色を薄れさせることなく、低音側の伸びが実感できる。シンバルの音色の解像感、チャイム系の音色の輝きとヌケなど、高域側の伸びも見事だ。高域の表現力が高いことによって、豊かな空間性も生み出されている。

ポップスのエレクトリックベースもやはり柔らかだが、芯が太くしっかりとしていて、スタッカートもナチュラルに決まる。やくしまるえつこのボーカルはそのささくれた手触りを十分に表現しつつ、しかも柔らかさも備えていることから、ザラついた印象は皆無。実に心地よく声の質感を楽しませてくれる。


HD 800:音楽のあるべきかたちを自然に再現する

「HD 800」は空間の広さと見通しの良さが、さらに一段と優れている。音と音の間の“余白”の残し方と、静音部分の澄み切った美しさは、他のヘッドホンでは到達できないレベルにある。

「HD 800」を試聴

帯域のバランスは見事にフラット。ジャズのウッドベースは余計な重量感を出さず、素直な音色を軽やかな厚みを持たせつつ描き出す。量感を強調し過ぎずに、しかも強い存在感を備えながら、音楽としてあるべき場所にすっと収まってくれる。

スネアドラムのスナッピー(共鳴弦)のディテール感、シンバルのキレなど、高域が自然な解像感を備えていることも魅力的だ。ピアノの音色の角を、絶妙に落とした滑らかさも好ましい。

ポップスのエレクトリックベースの音色には、むやみに派手な迫力とは異なった、内包する力強さが込められている。低音の立ち上がり・立ち下がりは、本機でもやはり素晴らしく、スタッカートは「HD 650」よりもさらにスパッと爽快に決まる印象だ。ボーカルは「HD 650」に比べるとシャープだが、それは全く気に障らない類のシャープさであり、とことんまでに心地よい。



IE 8:十分な量感と濃厚さを備えた充実の低音再生

「IE 8」で聴くジャズのウッドベースも手応え十分だ。低音調整ダイヤルを「最小」にしても、十分な量感と濃さが味わえる。音色の弾性、フレーズの躍動感も見事だ。バスドラムやタムの低音も“バスン”という空気感を引き出し、充実している。特にバスドラムの重い沈み込みは、音楽全体のリズムを力強く引き締めてくれる。

「IE 8」を試聴。“ループ掛け”のスタイルでも非常に心地良い装着感が得られる

低音調整ダイヤルの効き具合も絶妙だ。前述のように「最小」でも不足はなく、反対に「最大」にしてみても低音過多にはならない。音楽を崩すことのない範囲に絞り込まれており、日常のリスニングで常用できる魅力的な機能だと実感した。

ドラムスのシンバルなど金物楽器や、ピアノの右手の輝きも見事で、静かな場面では弱音の響きの消え際まで、繊細に描き込まれている。ポップスのエレクトリックベースは柔軟な再現性。ボーカルも柔らかな感触を持つ。この“柔軟さ”という特長は「HD 650」と共通する魅力だと思う。


◇ ◇ ◇


今回改めて、ゼンハイザーの主力モデルである「HD 650」「HD 800」「IE 8」、各機の実力を確認してみたが、やはりどのモデルともに、他の製品にはない独自の魅力を備えており、サウンドはまさに究極のハイエンド・クオリティと呼べるものだ。多くのファンから、いわゆる“名機”、あるいは“定番モデル”として評価される製品には、当然のことながら相応の実力がある。今回テストしたゼンハイザーの3つのモデルには、“名機”として多くの音楽ファンが納得するだけの実力があることを改めて実感させられた。

各製品のスペック

HD 650/¥78,750(税込)●型式:ダイナミック・オープン型 ●周波数特性:10〜39,500Hz ●インピーダンス:300Ω ●音圧レベル:103dB ●質量:約260g ●接続ケーブル:ケーブル長3.0m(両だし)、6.3mmステレオ標準プラグ
>>ゼンハイザー「HD 650」の製品情報

HD 800/¥OPEN
●型式:ダイナミック・オープン型 ●周波数特性:6〜51,000Hz(-10dB)、14〜44,100Hz(-3dB) ●インピーダンス:300Ω ●音圧レベル:102dB ●質量:約370g ●接続ケーブル:ケーブル長3.0m(両だし)、6.3mmステレオ標準プラグ
>>ゼンハイザー「HD 800」の製品情報

IE 8/¥OPEN
●型式:ダイナミック・カナル型 ●周波数特性:10Hz〜20,000Hz ●インピーダンス:16Ω ●感度:125dB ●質量:約16g
>>ゼンハイザー「IE 8」の製品情報



高橋 敦 プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。

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