プロジェクターの3D映像が新たな飛躍を遂げた − エプソン「EH-TW8000W」の画質に山之内正が迫る

元来信頼性の高い“ドリーミオ”の「2D画質」も飛躍を遂げた

TW8000Wは2D画像においても入念なブラッシュアップが行われており、特に細部のコントラストの向上をはっきりと読み取ることができる。『ダークナイト』は特にコントラスト感が際立つ映像を見せ、人物だけでなく、建築や家具など、様々な被写体がいずれも質感と立体感を伴って映し出され、力強い実在感を見せつけた。

明るさのエネルギーに余裕があり、ハイライトのピーク感が際立つのだが、その一方で黒の締まりも従来機とは一線を画す。夜のシーンでは黒のなかにいっそうの深みがあり、豊かなグラデーションを再現している。

輸入盤『ウィンターズ・ボーン（Winter's Bone）』は自然光のなかでの豊かな質感描写に目を奪われる。シネマモードの初期設定は色調と階調の追い込みが秀逸だが、ディテールの設定を1、2ステップ抑えることで遠近感がいっそう自然になり、肌のなめらかなタッチや衣服のテクスチャーの豊かさをさらに引き出すことができた。

この作品でも黒から白に至るレンジは非常に広いのだが、『ダークナイト』のような際立ったコントラスト感とは異なり、現実世界のなかでの光の美しさを素直に描写する能力の高さを読み取ることができる。同じシネマモードで見ているにも関わらず、それだけ緻密な描き分けができるということだ。

以前は映画だけで複数のモードを用意していたが、コントラストなど基本性能が向上したことで、単独のシネマモードでも従来以上に多様な映像表現ができるようになっている。

TW8000Wのエネルギー感あふれる映像を見ていると、「3D映像は暗い」という通念を覆す新世代のプロジェクターが誕生したことを実感することができる。しかも、ただ明るいだけではなく、クロストークの低減とコントラスト感を高い次元で両立させている点に注目する必要がある。2D映像も含めた本機の表現力の懐の深さは、高速駆動という高いハードルを越えることによって初めて可能になったのである。

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エプソンはエントリー機からハイエンドシアターまで、広範囲なホームシアター環境を提供する数少ないメーカーの一つである。明るさやコントラストなど基本性能に加え、設置性の高さでも従来機を大きく上回り、性能と使い勝手を同時に向上させることに成功したEH-TW8000Wには、幅広いレンジの製品を手がけるエプソンならではの完成度の高さが感じられる。ホームプロジェクターの進化をさらにワン・ステージ上に上げる重要な製品が誕生した。


【EH-TW8000W/SPEC】
●液晶パネル：0.74型ワイドポリシリコンTFT液晶パネル ●画素数：1,920×1,080画素 ●投写レンズ：2.1倍マニュアルズームフォーカスレンズ、f=22.5-47.2mm、F2.0-3.17 ●光源：230W(E-TORL) UHEランプ ●明るさ：2400lm（最大） ●コントラスト比：200,000対1 ●騒音レベル：22dB（最小） ●接続端子：HDMI×2、コンポジット×1、コンポーネント×1、PC×1、RS-232C×1、トリガーアウト×1、外付け3Dエミッター×1 ●消費電力：364W/0.27W ●外形寸法：466W×140H×395Dmm ●質量：約8.5kg

【EH-TW8000/SPEC】
●液晶パネル：0.74型ワイドポリシリコンTFT液晶パネル ●画素数：1,920×1,080画素 ●投写レンズ：2.1倍マニュアルズームフォーカスレンズ、f=22.5-47.2mm、F2.0-3.17 ●光源：230W(E-TORL) UHEランプ ●明るさ：2400lm（最大） ●コントラスト比：200,000対1 ●騒音レベル：22dB（最小） ●接続端子：HDMI×2、コンポジット×1、コンポーネント×1、PC×1、RS-232C×1、トリガーアウト×1、外付け3Dエミッター×1 ●消費電力：364W/0.27W ●外形寸法：466W×140H×395Dmm ●質量：約8.3kg


山之内正　プロフィール
出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。