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携行したくなる“旅仕様”ビデオカメラ

人気モデル後継機の実力は? − ソニー“ハンディカム”「HDR-TG5V」を会田肇がレビュー

公開日 2009/04/30 11:59 会田肇
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■一新された操作系は慣れると非常に便利

本機で特筆すべきは、操作系で思い切った変更を施したことだろう。背面には親指が自然にタッチできる凹みのある円形ボタンを搭載し、その左下には静止画撮影用ボタンが配置されている。さらに円形ボタンの周囲にはズームキーが用意され、これを左右に動かすことで可変ズーム操作が行えるようになっている。

新たな操作方法を採用。動画と静止画の各ボタンを半押しするだけでモード切り替えが実行される

なかでも魅力に感じたのが、動画と静止画の各ボタンを半押しするだけでモード切り替えが実行されることだ。たとえば、円形ボタンを半押しすると動画撮影モードになり、その左下のボタンを半押しすれば静止画モードに切り替わるといった具合。つまり、モード切り替えはその時に使用するボタンを半押しするだけと、操作のわかりやすさを重視したインターフェースとなっている。

使ってみると最初は戸惑うものの、慣れてくるとその便利さがわかってくる。誤操作を防止するために静止画ボタンはやや硬めに設定されているようで、押すときにカメラを揺らしてしまいがちになるのが惜しいと思うほどだ。さらに本機には電源ボタンが用意されていない。モニターを開けば自動的に電源がONとなり、閉じればOFF。わずらわしいボタンは極力減らし、撮影に対応するというスタンスで開発されたTG5Vだけに、このあたりには徹底して配慮を加えたというわけだ。

その液晶モニターは、タッチパネル機能付き2.7型(21.1万画素)を採用。TG5Vではモニターのフラット化が進められ、画面の隅に表示されるアイコンへの操作もしやすく配慮されている。ただ、輝度は少々低めで、日中の屋外では映像の確認がしやすいとは言えない。タッチパネルの反応も今ひとつだったのが気になった。また、本機には充電可能なクレードル「ハンディカムステーション」が付属しており、TVとのHDMI端子接続やPCとのUSB接続はこのクレードルを利用して行う形となる。

本体の手前カバーを開いたところ。メモリースティックDuoのスロットと、その下にはGPS機能のスイッチがある。バッテリーはNP-FH50のみ使用可能

付属のクレードルに用意された端子。HDMIはミニではなくフルサイズ規格で対応。左端はAV出力で一般TVに接続する際に使用する。右端はUSB端子

■顔認識能力や補正能力も大きく向上した

顔認識の「顔キメビデオ」に加えて、笑顔で静止画シャッターを切る「スマイルシャッター」機能を追加したことも大きなトピックだ。認識能力も高められているようで、撮影時に逆光を自動判断して人物や風景を最適な状態に補正する。とくに優れていると感じたのは、背景の黒つぶれや白トビを自然に補正しながらバランス良く人物の表情を映し出せるようになっていたことだ。本機には逆光補正機能などは用意されていないが、こうした対応力の高さが自信となって、この仕様を選択したのだろう。また、この機能は再生時にも活かされ、人物の顔が写っている部分を優先して選んで要点を上手に再生する「ハイライト再生」を可能にしている。

■コンパクト機だからGPS機能が活きてくる

それと本機の型番を改めて見直すと最後に「V」が付いていることがわかる。じつはこの記号は、HDR-XR520V/XR500Vにも採用されていたGPS機能を備えたことを示すもの。GPSユニットはTG5Vの天面に内蔵され、撮影をスタートした時点の緯度経度情報が記録される仕組みとなっている。メモリー内には日本以外に北米/欧州/オセアニアの地図データを収録しており、これによってナビ機能にまでは対応しないものの、モニターに地図を映し出し、現在地を表示させることもできる。

GPSレシーバーが備えられたのは撮影時に自然と受信できる位置となる本体の天部。移動した直後の測位には結構時間を要することもあった

地図データは日本国内は住宅地の細街路までカバーしているが、それ以外の3地域は幹線道路レベルまでの対応。それ以外のアジアやアフリカなどでも河川や湖を含んだ輪郭程度までは表示できる。ただ、撮影したデータを付属ソフト『Picture Motion Browser(以下:PMB)』を使えば、マップビュー機能を使うことでGoogleMapでの表示が全世界で可能となる。これは使ってみると、撮影した場所が地図上でたどることができてなかなか面白い。

GPS機能を使うことでメモリ内に収録した地図上に現在地を表示することが可能。ただし、カーナビのように連続して測位し続けることはできない

撮影したポイントを地図上に表示することができる。左の映像をスクロールさせれば、そのポイントが自動的に移動する仕掛け。これはTVにも映し出せる

また、この機能のいいところは、時差のある地域に移動したときは、取得したGPS情報と地図情報をリンクさせることで自動的に時刻を時差補正して表示できるということ。いちいち現地時間に修正しなくても正しい現地時刻で撮影が行えるわけで、あとで映像を時系列で整理したときでも不自然な時刻にならずに済む。まさに、TG5Vらしい使い方が発揮できるというわけだ。

撮影時の画角は従来と同じ。しかし、本機には新たに別売のワイドコンバージョンレンズ「VCL-HGE07TB(1万2600円)]を同時発売している。倍率は0.7倍で、広角の43mmが30mmに変化。取り付けたときのバランスも良好で、違和感なく装着できるのがイイ。ただ、このレンズは上からスライドしながら装着するタイプとなっており、撮影時に指が触れてずれてしまいがちとなる。一応、脱落防止用のストラップが付属するけれど、基本は「使用時に外れない」ことをもっと優先すべきではなかったか。使用時はこのあたりを十分注意して使いたい。

別売のワイドコンバージョンレンズ・VCL-HGE07TBを装着したところ。取り付けた状態でも違和感がないのがとてもいい。倍率は0.7倍と手頃

■旅に連れて行きたくなる「思い切りの良い」カメラ

本機の魅力は何と言っても抜群の携帯性だ。それを実現するために、手ブレ補正電子式としていたり、高級機に比べるとスペックが若干物足りない部分も見受けられる。しかし、旅に出掛けたときに必要と思われるものはほぼ全て搭載している。その思い切りが随所に感じられるカメラに仕上がっているのだ。これから出掛けることが増えるシーズン。土日祝日の高層道路料金はどおまで走っても1,000円で行けるし、海外旅行の飛行機利用で課せられていた燃油サーチャージも今夏は「ゼロ」となる模様。そんな状況を見越したかのように登場した本機は、ビデオカメラ市場で間違いなく大きな存在感を持つことになるだろう。

(会田肇)

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