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逆に10Hzの低域しか出さないクジラも

第19回「音の匠」は、超高域150kHzの世界で生きるイルカ研究の森阪匡通氏

2014/12/05 ファイル・ウェブ編集部
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(社)日本オーディオ協会は、トーマス・エジソンがフォノグラフを発明した12月6日を「音の日」と定め、音を通じて文化や生活に貢献した人々を「音の匠」として顕彰する活動を行っている。本日、都内で行われた「音の日」行事において、第19回「音の匠」顕彰式が開催された。

顕彰式の冒頭では日本オーディオ協会 会長の校條亮治氏が挨拶を述べ、「オーディオ協会では、オーディオの世界の新しい幕開けに向かって“ハイレゾ”をテーマに取り組んできた。そんな思いのもと、今回はハイレゾにあたる高周波数の世界を研究されている森阪匡通氏を“新しい匠”に選出させて頂いた」と、来場者に語りかけた。

校條亮治氏

本年度の音の匠に選ばれたのは、「イルカの鳴き音によるコミュニケーション方法」について研究している東海大学 創造科学技術研究機構・特任講師である理学博士・森阪匡通(もりさかただみち)氏。

森阪匡通氏

顕彰式の様子

森阪氏は、これまでに「イルカの生息域に依存する鳴き音の違い」など数々の発見や、「イルカの鳴き音によるコミュニケーション方法の研究」など多くの論文を発表してきた「音とイルカの研究」の第一人者。今回は、同氏による「音の世界に生きているイルカ。彼らは何をかたりあっているか」というタイトルの講演が行われた。

イルカについて

そもそもイルカ・クジラとは何か?から解説された

一般的にもある程度知られていることだが、海の中でイルカは体内から発する音波によって様々なことを知覚している。森阪氏によれば、イルカの発する音波には、仲間同士でコミュニケーションを取るための「ホイッスル」と、発した音波の跳ね返りによって周囲にある物体の大きさや、その物体までの距離を認知するための「エコーロケーション」がある。

イルカの発する音波には、「ホイッスル」と「エコーロケーション」の2つがある

エコーロケーションは、発した音波の跳ね返り方で、周囲のある物体の大きさやそこまでの距離を知覚するもの

イルカは、オーディオの世界でいう“ハイレゾ”の音域に入る150kHz周辺の音域まで知覚し、発することができるという。なお、中には100kHz以上の超高域しか発しない種類も存在するそうで、森阪氏は「イルカを捕食するシャチは100kHz以下の音域しか聴き取れないので、捕食者のシャチに聴こえない帯域の音で仲間同士コミュニケーションを取っていると思われる」と語った。

イルカは150kHz周辺の音域まで知覚し、発することができるという

100kHzを超える音しか出さない種類のイルカもいる

イルカは体の大きさが4m以上になるとクジラと分類されるようになるが、森阪氏が研究を行っているヒゲクジラという種類のクジラの場合、高域の音は知覚しないが、反対に10Hz周辺の低域の音波を知覚し、発することができるという。森阪氏は「低域は遠距離まで伸びるので、恐らく遠方にいる仲間とコミュニケーションを取るためと思われる」と、その理由を解説した。

そのほかにも今回の講演では、実際に森阪氏が海の中に入って泳ぎながら撮影したイルカの動画が上映され、会場に設置されたスピーカーでイルカそれぞれの鳴き音の違いを聴き比べるといったことも実施された。

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