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なぜaptXはSBCよりも高音質なのか?

CSR、高音質Bluetoothコーデック「aptX」やマルチルームオーディオ技術「VibeHub」などデモ

公開日 2014/12/02 15:42 ファイル・ウェブ編集部
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シーエスアール(株)は、同社が展開するBluetooth通信用の高品質オーディオコーデック「aptX」の最新状況や、マルチルーム配信を可能とする高品位なホームネットワークオーディオシステム「VibeHub」の開発について紹介するメディア向け説明会を開催した。

会場では、aptXを適用したBluetooth再生デモも行われた

CSR plcは創立15年を迎えるイギリスのファブレス半導体設計・開発企業。昨今はBluetoothのワイヤレス技術を基点として、「ボイス&ミュージック」「Bluetooth SMART」「GPS」「オートモーティブ」「デジタルイメージング」の5つの開発エリアに注力している。

現在のCSRは5つの開発エリアに注力している

■aptXの音質優位性とは? AACとの比較も

説明会ではまず、英CSR社のaptXセールス&マーケティングディレクター ジョニー・マクリントック氏が登場し、「CSRのオーディオ関連テクノロジーの概要とaptXについて」と題したプレゼンテーションを行った。

ジョニー・マクリントック氏

aptXは、ADPCMの学術研究をベースとした広帯域ステレオ・低遅延コーデックアルゴリズムとして、1990年に英国ベルファースのクイーンズ大学で誕生した。元々は放送業界やプロオーディオ機器で採用されており、1993年に登場したDTS社の5.1ch技術にも採用されている。

DTSの5.1ch技術にも採用されている

その後、独ゼンハイザー社製品を皮切りに、コンシューマーオーディオのBluetooth市場へ展開を開始したのが2009年。プロオーディオ機器におけるaptXの成功を基に、SBCコーデックで感じられていた音質の低さを改善することを狙って発表された。以降、様々な製品へ採用が進んでおり、現在のところ全世界でコンシューマー向けオーディオやスマートフォンなどを含む約10億台のデバイスがaptXを採用しているという。なお、マクリントック氏によれば「これからオートモーティブ市場を特に重要視している」とのことで、現時点で実際にクラリオンやJVCの車載用ヘッドユニットへの搭載も進んでいる。

コンシューマーオーディオ市場へ展開

aptXの最近のハイライト

ここでマクリントック氏は、aptXの優位性とされる“音質の良さ”について説明を行った。「SBCの場合、Bit Pool値に32〜52と幅のある製品が多数存在している状況のため、音質・性能にバラツキが生まれます。Bit Pool値32の低い製品も市場に多数あり、これによって、リスナーが高域音声のこもりやS/N比の低さ、THD+Nの低さといった音質的劣化を感じる要因となっているのです」。

aptXの周波数応答特性

SBCの周波数応等特性


aptXのノイズ

SBCのノイズ

サルフォード大学の調査結果によれば、スピーカー再生によるaptXとSBCの比較試聴で、aptXはSBCの最高実装となるBit Pool 58の2.5倍優れていることが示されたという。

サルフォード大学の調査結果でも、aptXがより優れていることが示されたとのこと

同氏によれば、AACと比較した場合でもやはりaptXの優位性は変わらないとのことだ。「AACは聴覚心理をベースにしたエンコードメカニズムであり、人間の聴覚が知覚しないとされる成分を切り捨てるなどの処理が行われています。このAACファイルをBluetooth転送する場合、AACでエンコードされた音声をさらにAACでエンコードしてBluetooth通信するという、劣化の原因となるエンコードを複数回行うことになります。しかし、aptXは聴覚心理を採用しないシステムのため、Bluetooth通信時でも元々のAACファイルの音質を保つことができます」という。

■40ms以下の低遅延を実現した最新バージョン「aptX Low Latency」

aptXの最近のハイライトとしては、低遅延で送信を可能とするaptXの最新バージョン「aptX Low Latency」が開発され、対応機器が徐々に登場してきている状況だ。

40ms以下の低遅延を実現した「aptX Low Latency」

aptX Low Latencyは、レイテンシーを40ms以下に抑えた最新コーデック。その他Bluetoothコーデックのレイテンシーが、通常のaptXで70ms(±10ms)、AAC(128mbps)で120ms(±30ms)、SBCで220ms(±50ms)であることと比較すると、特に低い遅延を実現していることがわかる。

マクリントック氏は「音声はパケット化されてBluetooth送信されます。SBCやAACはいわゆるフレームベースのコーデックであるためパケットを有効利用できません。aptXは細かくチャンクが構成されたサンプルベースを採用していることでパケットを有効利用することが可能で、遅延を大きく抑えられるメリットがあります」と説明した。

フレームベースのコーデックであるためパケットを有効利用できていない



aptXは細かくチャンクが構成されたサンプルベースを採用していることでパケットを有効利用することが可能
主に、映像と音を高品位に同期するニーズがあるゲーム分野などに対応できる技術として開発されたものだ。なお、ゲームコンソールのほかにも、スマホ/タブレットからの動画視聴やゲーム、テレビとサウンドバーの接続などをターゲットアプリケーションとして想定している。

ゲームコンソールなどをターゲットプラットフォームとして想定

直近では、インテル社がaptX Low Latencyを搭載したCentrinoを発表し、サムスンのATIV Ultrabookがこれを採用した。オーディオ製品でも、先日デノンからBluetoothスピーカー“Envaya Mini”「DSB-100」が発表されたばかりだ(関連ニュース)。

デノン“Envaya Mini”「DSB-100」

■マルチルーム・ホームネットワークオーディオを実現する「VibeHub」

続いては、同社 オーディオサービス ディレクター ベン・テレル氏が登場し、「マルチルーム・ホームネットワークオーディオを実現するVibeHub」について説明を行った。冒頭でテレル氏は、VibeHubについて、「ストリーミング音楽サービスの場合、Bluetoothにだけ対応する機器では聴取時の課題も多く、ユーザーが快適に楽しめない」と、最近盛り上がりを見せる音楽配信サービスを念頭において開発した技術であることを語った。

ベン・テレル氏

右がVibeHubモジュール。会場では複数の部屋に設置したVibeHub対応システムでデモを行った

VibeHubは、ネットワークオーディオ向けのプラットフォームソリューション。簡単にいうと、ネットワーク上にあるストレージやBluetoothスマートフォン、タブレットなど複数の機器からVibeHub機器へコンテンツを取り込み、ホームネットワーク内にセットされた最大4台までのネットワーク対応スピーカーへワイヤレスでマルチゾーン配信できるというもの。現時点では最大48kHz/24bitソースまでの配信に対応する。

VibeHubの特徴

なお、別々の部屋に設置した各スピーカーへの音源配信内容は、専用アプリからコントロールすることができるようにしている。テレル氏によれば「アプリをインストールした複数のデバイスからコントロールが行えます。また、スマートフォンなどのデバイスがWLAN圏外に出た場合でも、自動でストリーミングを受信して作動できることがメリット」とのことだ。

VibeHubのシステムイメージ

「グルーピング」機能を搭載していることも特徴で、ネットワーク内にある複数スピーカーをアプリ上でグループ化することで同一音源を同時に配信したり、逆にグループ化を解除して各スピーカーへの異なる音源配信を同時に操作することもできる。さらにCSR独自の「SyncLock」同期技術により、マルチゾーン配信中に部屋間を移動しても音の遅延が気にならないことも大きなメリットだという。

同社がメーカー向けに提供するVibeHubモジュールは、多彩な音声入力形式に対応できるようにしており、テレル氏は「BluetoothやWi-Fi、イーサネット、アナログ入力など様々な市場要求に答えられます」とアピールする。LAN経由でのUPnPおよびDLNAソース、Bluetooth再生時にaptXによる高音質再生をサポートしていることも特徴で、テレル氏は「今後AirPlayにも対応予定」と語った。

VibeHubモジュールのイメージ

VibeHubの現行ver1.1のスペック。2015年1Qにver2.0が登場予定とのこと


VibeHubの開発ボード

VibeHubのモジュール
なお具体的な製品としては、現在のところ米BRAVENが展開するワイヤレスオーディオシステムに採用されている。

BRAVENのスピーカー

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