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21社が参画

次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)設立 − 8K/4K実用化へ“オールジャパン”体制

公開日 2013/06/17 19:11 ファイル・ウェブ編集部
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放送・家電・通信サービスなどに関連する21社が参加する一般社団法人 次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)の設立記者会見が17日に都内で開催された。


次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)のロゴ
総務省は今年の2月末に開催した「放送サービスの高度化に関する検討会」の会合にて、4K・8K放送、並びにインターネットとの連携を活かしたスマートテレビ関連サービスの実用化についてロードマップを示すとともに、官民が協力しながらオールジャパン体制で推進していくことを提言した(関連ニュース)。

今回設立された次世代放送推進フォーラム(以下:NexTV-F)は、8K/4K放送、スマートテレビのサービスを早期に実現するため、放送の送受信に関する規定や仕様の検討・実証、試行的な放送を実施し、さらに参加企業・団体の活動を組織的に運営していくことを目的に設立された。

フォーラム設立の記者会見を実施

フォーラム参加の21社

本日開催された記者会見にはフォーラムを代表する幹部が出席し、それぞれに今後の活動に向けた抱負を語った。

はじめにフォーラムの理事長を務める、東京大学の須藤修氏が登壇した。


理事長の須藤修氏
須藤氏は、8K/4K放送の具体的なロードマップを改めて紹介。2013年内に8K/4K放送の実用化に向けた試験環境を構築・検証。そして2014年のブラジル・ワールドカップに合わせ、可能な限り早期に4Kの試験放送を開始し、さらに2016年には8Kの試験放送を開始。また2020年には、8K/4K放送の本格放送を行うことが目標として示されている。

この目標に対して、国内の放送、家電、通信など関連事業者が“オールジャパン”体制で取り組む必要性が再三指摘されているが、これについて須藤氏は「日本が誇る最先端のインターネット通信網、家電機器のノウハウを活かし、世界で最も先端を行く放送文化を打ち立てていきたい」とした。須藤氏はまた、次世代放送を推し進めていくことによって、豊かな国民生活と産業の発展が期待できるとし、その効果が公共サービスの利便性向上や、新しいクリエイティブ産業の確立につながる、と期待を寄せる。

須藤氏は「日本が確立してきたフルHD放送のノウハウは、いまや世界の標準になった。次の放送事業も日本から発信していくことが大事であり、ひいては日本の国際貢献にもつながると確信している。行政、関係各機関の協力や支援をいただきながら、大きな目標に向かって動き出したい」とフォーラムの船出を宣言した。


総務副大臣の柴山昌彦氏
総務省からは来賓として副大臣の柴山昌彦氏が出席し、祝辞を述べた。柴山氏は「今回提示された8K/4K放送、およびスマートテレビサービスのロードマップは、国家のIT戦略にも明記されたもの。これを成功させることは、放送分野で世界をリードできるだけでなく、高精細な画像サービスを基軸に医療や設計、防犯など幅広い分野に展開できる。大きな波及効果を期待したい」と述べ、フォーラムの活動を全力でサポートしていく考えを示した。


副理事長 松本正之氏
続いてフォーラムの副理事長を務める4名が登壇した。日本放送協会の松本正之氏は8Kのスーパーハイビジョン放送について、「現在のフルHD放送の16倍にも及ぶ精細感を表現できる技術であり、人間の目が認識できる限界にほぼ匹敵するきめ細かさだ。8Kは“究極のテレビ”技術と呼べる」とした。松本氏は、NHKが2012年に実施したロンドン五輪の映像を使った8Kパブリックビューイングが多くの視聴者から好評を得たと説明。16年にブラジルのリオデジャネイロで開催されるオリンピックまでに8Kの実用化試験放送を開始できるよう、準備を加速させていきたいとした。


副理事長 井上弘氏
日本民間放送連盟の井上弘氏は「テレビ放送の開始から60年、業界はモノクロからカラー、ハイビジョン、デジタル化への進化を推し進めてきた。今回の8K/4K放送への取り組みは、国内・国際経済の発展にとって大変重要」と述べた。一方、プラットフォームの整備とともに、8K/4Kに相応なコンテンツを揃えていくことも放送事業者として大事な責務であるとし、井上氏は「放送業者として、より充実した番組づくりにも努力、邁進していく」と考えを述べた。


副理事長 平井一夫氏
ソニー(株)の平井一夫氏は「高精細・大画面は視聴者に圧倒的な感動と臨場感を提供するもの。銀座のソニービルで4Kによる歌舞伎の舞台映像を使ったパブリックビューイングを実施した際には、ご年配の方も多く訪れ、感動したという声をたくさんいただいた。このような感動を、より多くの方々に、ご家庭で楽しんでいただける環境を実現させたい」とした。ソニーでは昨年11月から4Kテレビを商品化し、世界各国で販売を開始した。6月には国内で65/55型モデルも販売を開始しており、「幸先の良いスタートを切れた」という。平井氏は「来年には4Kの試験放送も始まるが、ソニーとしては受像器であるテレビだけでなく、カメラや放送機器など幅広いカテゴリーの4K製品を開発しており、4Kワールドの様々な側面で貢献できると考えている。フォーラムの活動を通じて、一日も早く次世代サービスを立ち上げられるよう努力したい」と意気込みを示した。


副理事長 片山泰祥氏
日本電信電話(株)からは片山泰祥氏が出席。片山氏は「オールジャパンによる8K/4K放送と、スマートテレビのサービスを普及させていくためには、衛星や光ネットワークなど様々な伝送路を活用していくことが有効と考えている。多くの場所で、多くの方々が先端のサービスを享受できる環境づくりに貢献していきたい」と述べた。また次世代のエンコーダーLSIの開発については、「NTTは映像符号化技術において、20年近いキャリアを持ち、放送用LSIも開発してきた。次世代LSIの開発についても、弊社が中心となりながらオールジャパン体制で取り組み、グローバルNo.1クオリティの製品をつくりあげ、世界に先駆けて放送をスタートさせたい」と抱負を語った。


名誉会長 渡辺捷明氏
続いてフォーラムの名誉会長を勤める渡辺捷明氏が登壇した。渡辺氏はフォーラムが取り組むべき事業の両輪を「一つは4K/8Kとよばれる高精細映像サービスの提供、二つめがスマートテレビと言われる放送通信の連携による高度サービスの提供」とし、次世代サービスを世界に先駆けて実現することが、国内産業の活性化と国際競争力の向上につながると説明した。一方で「グローバルの状況を見ると、今回示されているロードマップに即した目標を実現することは容易ではない。4K/8K、スマートテレビともに世界のトップメーカーが競争に参入していることから、今後も日本は厳しい国際競争の中で先頭に立って闘う覚悟を持たなければならない」とし、続けて「産学官の関係者が一致協力して目標の実現に取り組むべき時がきた。そのエンジンとなるのがNexTV-Fであり、フォーラムを中心に関係者の力を合わせて、放送開始に向けて全力を尽くしたい」と宣言した。

顧問の東北大学 鈴木陽一氏(左)と東京理科大学 伊藤晋氏(右)も出席

幹部の挨拶に引き続き、NexTV-Fの事業概要について、理事長の須藤修氏と、理事・運営委員会委員長の久保田啓一氏による説明が行われた。


理事・運営委員会委員長 久保田啓一氏
NexTV-Fの設立については、本年5月2日に設立社総会が開催され、7日に法人として登記。次世代放送サービスに関する技術仕様の検討や検証、評価と実用化に向けた実証・試行的な放送、サービスの開発、および普及・利用促進・周知広報などが事業内容に含まれる。

組織構成は年1回の定例会と、必要時に臨時実施される社員総会を最高の意志決定機関として設置。理事会にて事業計画、事業実施の決定を行い、これを運営委員会の場で事業計画として立案し、事業全般の管理・統括を遂行する。現在は実質的な作業を行う3つの委員会の設立準備が進められている。「技術委員会」は技術検証や実証計画の策定と実施、およびシステム設計、標準化対応などを担当。「コンテンツ委員会」は番組の編成やコンテンツ制作、番組調達や設備の貸し出しなどがテリトリーになる。「周知広報委員会」についてはPR活動や報道発表などを受け持つ。いずれの委員会も6月下旬の設立を目処に準備が進められている。

久保田氏は、8K/4K次世代放送サービスの実用化に向けたテストベッド(試験用プラットフォーム)構築の事業概要についても説明を行った。

事業では8K/4Kに対応した制作・放送システムのテストベッドを構築し、運用規定の策定に向けた検証を推し進めていく。高精細映像コンテンツの放送・配信・伝送などのサービス向けに期待される次世代ビデオコーデック「HEVC(High Efficiency Video Coding)」については、これを採用したリアルタイムエンコーダーに係わる仕様などを検討していく。また関連企業・団体や国内標準化機関との連携により、運営規定の策定など、8K/4K関連技術の普及展開も同時に行っていく。

本日の記者会見会場には8K/4K放送に関連する技術展示や、家電メーカー各社が販売を開始した最新の4Kテレビ商品が紹介された。


NHKとシャープの共同開発による145インチSHVディスプレイ
8Kのスーパーハイビジョン関連では、先頃開催されたNHK技研公開にも出展された145インチSHVディスプレイを披露(関連ニュース)。ベゼルの周囲には22.2chマルチチャンネルの音場を再現するバーチャルサラウンドシステムが搭載されている。ほかにもNHKとアストロデザインが共同開発したキューブ型スーパーハイビジョンカメラ(関連ニュース)なども展示されていた。

キューブ型スーパーハイビジョンカメラの展示

NTTグループは、NEC、富士通、三菱電機との共同開発による次世代放送向けHEVCエンコーダー装置の試作FPGAボードを展示した。本機は4K放送への対応を想定して開発されたもので、4Kのソース信号を、約1/400のデータ量にまで圧縮し、リアルタイムに放送・通信システムへ送り出すことができるという。フォーラムのロードマップで示されている、2014年の4K試験放送開始の目標スケジュールに合わせて本機の開発が進められている。2014年末には試作ボードの機能をシングルチップに統合した、HEVC高画質LSI「HEVC-Jチップ(仮称)」のエンジニアリングサンプルを開発する計画で、2016年頃までの量産化を目指す。


NTT/NEC/富士通/三菱電機の共同開発による4K対応のHEVCエンコーダーユニットの試作機
さらに4Kテレビの実機として、東芝“REGZA”「Z8Xシリーズ」や、ソニー“BRAVIA”「X9200Aシリーズ」、シャープ“AQUOS”「UD1シリーズ」が並んだ。それぞれ今夏のシリーズ最上位機種としてラインナップに加わるモデルとして注目を集めている。

東芝の84型4K REGZA「84Z8X」。イタリアのシチリア島で撮影したばかりという最新の4Kソースを使ったデモを行っていた

東芝“REGZA”の商品戦略・マーケティング戦略を担当する本村裕史氏。発表後注目を集めてきた4K対応の「Z8X」シリーズは、いよいよ84/65/58型各モデルともに出荷がスタートしたという


ソニー“BRAVIA”の4Kテレビ「X9200Aシリーズ」

シャープからは“AQUOS”「UD1シリーズ」の2機種が登場


以下、質疑応答の内容を紹介する。なお、回答は基本的に理事長の須藤修氏と、理事・運営委員会委員長の久保田啓一氏が行った。

Q:フォーラムには21社がメンバーとして加わったが、今後どれほどの規模に広げていきたいとイメージしているか。
A:今後もできるだけ多くの関係団体、研究者、有識者に参加してもらいたいと考えている。4K/8Kの放送とIPTV連携は、オープンに実施していくことが報告として出ている。関係分野を含め、できるだけ多くの参加を促していきたい。(須藤氏)

Q:次世代の高画質放送については、スーパーハイビジョンや4K/8K、UltraHDなど色々な呼び方があるが、それぞれを整理して欲しい。
A:スーパーハイビジョンという言葉は、NHKが当初から開発している8Kシステムの愛称として出てきたものだ。今回のフォーラム検討会では4K/8Kを幅広く指したものとして、スーパーハイビジョンという言葉がもう少し広義なものとして利用されるケースがあった。現時点でどれが正しい、正しくないとは申し上げづらいが、私は運営委員会の委員長として、いずれの言葉についても共通の目標をもったものであり、一緒に取り組むべきテーマとして捉えている。(久保田氏)

Q:「コンテンツ委員会」が行う“設備の貸し出し”とはどんなサービスなのか。
A:4Kの製作・送出システムの機材をこちらで用意して、参加企業へ貸し出すイメージだ。フォーラムのメンバーにコンテンツをつくってもらうためのもので、手続き方法など詳細はこれから詰めていく。(久保田氏)

Q:エンコーダーLSIのチップ開発がカギということだが、現状の課題と解決の見通しについて教えて欲しい。
A:HEVCの件については、チップ開発はまだ符号化の規格がが出来上がったばかりなので、そこで設計を進めているのが現状の技術課題。LSIは投資規模が大きいことが開発の大きな課題となっている。今回は総務省、フォーラムのバックアップを受けて進めることができている。参加各社がそれぞれに強みとする技術を持ち寄って、最強のチップをつくることが目標だ。(NTTスタッフ)

Q:来年の4K試験放送開始に向けた、もう少し具体的なロードマップを公開する準備はできていないのか。
A:目標まであまり時間がない中で進めていくので、まだ何月に始められるかというところまで詰め切れていない。(久保田氏)

Q:4Kと8Kの棲み分けについてはどうするか。互いに共存し得るサービスなのか。
A:コンシューマーに買い換えを無理強いしないようにしていくことが大事。4Kのテレビを使っている方でも、8Kの放送をダウンコンして見られる機能などをつくっていくことで、無理な買い換えを強いることのないように進めていきたい。(久保田氏)

8Kについてはテレビ放送の大規模展開の前に、遠隔医療や光ケーブルを使った高度なサービス展開など様々な用途の普及が考えられる。並んで技術開発を高度化させるとともに、16年には試験放送、その後一般化できるよう持って行きたい。(須藤氏)

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