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【短期集中連載】コレが我が社の4K/8K技術(4)NHK「スーパーハイビジョン」

2013/04/23 インタビュアー / 折原一也
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放送技術分野を専門とする国内唯一の研究機関・NHK放送技術研究所。アナログハイビジョン、衛星放送、プラズマディスプレイ、デジタル放送などの基礎技術は、全てこの研究機関から誕生している。現在彼らが次世代放送として開発を進めているのが「スーパーハイビジョン」である。スーパーハイビジョン放送の前倒しが検討されている現在(関連ニュース)、スーパーハイビジョンはどこまで進んでいるのか?

■研究開始から約20年に及ぶスーパーハイビジョン技術


日本放送協会 放送技術研究所 テレビ方式研究部 研究主幹 菅原正幸氏 1983年NHK入局。神戸放送局を経て、1987年から放送技術研究所において固体撮像素子、ハイビジョンカメラ、スーパーハイビジョン映像システムの研究に従事。現在、同所テレビ方式研究部研究主幹。博士(工学)。
折原 総務省において4K/8K放送の検討が本格的にスタートしました。NHKでは長年に渡って、8K解像度の「スーパーハイビジョン(以下SHV)」を研究・開発していますね。

菅原 SHVの研究開始は、BSデジタル放送がスタートする前の1995年にまで遡ります。次世代のテレビとしてハイビジョンを超えるさらなる高精細が求められると考えたわけです。2000年には走査線4000本と三次元音響システムという1つの指標が定まり、2002年のNHK放送技術研究所・新棟落成記念式典で一般の方々に向けて初めて披露しました。非常に大きな反響があったことを今でも鮮明に覚えています。

折原 SHVと命名されたのは2004年ですね。

菅原 走査線4000本級超高精細システムと22.2マルチチャンネル音響システムでは、伝わりにくいこともあり、SHVという名称に統一しました。以来、2005年の愛知万博や毎年開催されているNHK技研公開の他、NABやIBCといった国際放送機器展へ出展するなど、SHVの魅力を国内外にアピールしています。

折原 昨年はロンドンオリンピックのパブリックビューイングも大きな話題になりました。

菅原 競技会場のあるロンドンなどイギリス国内4ヶ所、米国ワシントン、渋谷・秋葉原・福島などを結び、約22万人を超える方々にSHV映像によるロンドンオリンピックを体感して頂きました。昨年8月には、ITU-RにおいてSHVがテレビの国際規格として勧告化されました。国際規格として正式に標準化されたことで、今後様々な分野でSHV放送への取り組みが加速していくのではないでしょうか。SHVにとって、2012年はエポックメイキングな年でした。

■SHVの走査線4000本は臨場感と実物感で定められた

折原 SHVの規格には走査線2000本の4Kも含まれますか?

菅原 定義としては、8KがSHVです。研究を始めるにあたって、被験者に映像を見せてどのような反応をするかという心理実験を行い、その結果、映像を見る時の視角(観視者からディスプレイのスクリーンの両端を見込む水平角度)が上昇するにつれ、臨場感が高まり、約100度で飽和するということが分かりました。合わせて、角解像度(単位角度あたりの画素数)を増やしていく実験で、実物と映像との見分けがつかなくなるという実物感の評価を行い、これら2つの臨場感と実物感の点で走査線数を4000本と定めました。我々はSHVテレビが2次元テレビの最終形と考え、技研では、その後に来るテレビとして空間に像を再生できる空間像再生型の立体テレビの研究開発も進めています。SHVに至るステップ・通過点として4Kも必要だと思います。

折原 SHVの国際標準化にあたり、解像度などの仕様面で、さまざまな議論があったのではないでしょうか?

菅原 我々は総務省やARIB、メーカーなどと連携し、オールジャパン体勢で国際標準化に取り組んできました。HDTV(ハイビジョン)を超えるフォーマットは、ITU-Rにおいて、既に超高解像度映像(EHRI)として規格化されていて、そこでもハイビジョン解像度の整数倍が好ましいとされていました。この点、解像度による合意は得られやすかったところがありますが、色表現の範囲に関する部分では韓国などと熱い議論を重ねました。


本記事は月刊「AVレビュー」2013年5月号(4月17日発売)の特集「4Kのすべて」からの抄録です。誌面では、この記事の倍のインタビュー全文がお読み頂けます。「続きが読みたい!」「特集をすべて読みたい!」という方、「AVレビュー」のご購入はこちらからどうぞ。

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